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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第24回 飯田線・各駅停車の旅(1)

JR飯田線は、東海道本線豊橋駅と中央本線辰野駅を結ぶ195.7kmのローカル線です。94もの駅があり、平均駅間距離は約2.1km。全線を乗り通すと約6時間かかります。飯田線は、全国の鉄道ファンが一度は乗ってみたいと憧れる「聖地」でもあります。
そんな飯田線に、セカセカした旅は似合いません。ひと駅ひと駅止まりながら、各駅停車でのんびり旅してみましょう。

豊橋で発車を待つ飯田線の電車

豊橋を出ると、しばらくの間は田園風景の中をのんびりと走っていきます。豊川稲荷の最寄り駅である豊川を出ると、線路は単線となり、にわかにローカルムードが漂うようになってきます。三河東郷あたりは、長篠の戦いの舞台となったところ。復元された馬防柵や戦人塚などの戦跡をめぐると、当時の兵たちの息遣いまで聞こえてきそうです。
本長篠あたりから、いよいよ列車は山峡へと分け入っていきます。東三河の奥座敷ともいわれる湯谷温泉は、ちょうど豊橋から1時間ほど。そろそろ途中下車してみるのもいいですね。駅前が温泉街で、立ち寄り温泉施設「ゆーゆーありいな」があるほか、各旅館でも日帰り入浴が可能です。温泉街にありがちな賑やかさとは無縁の落ち着いた雰囲気で、身も心もリフレッシュされそうです。

湯谷温泉で途中下車して温泉を堪能

気分転換を終え、再び列車に乗って北上します。右窓には豊川の支流、宇連川の渓谷が見えてきます。川底が板を敷いたように見えることから板敷渓谷とも呼ばれます。そして列車はトンネルを3つ立て続けにくぐります。飯田線はトンネルが多いことも大きな特徴で、この先、実に137ものトンネルが待ち受けます。地形環境の厳しいところを通り抜けていくのです。
奥三河に古くから伝わる「花祭り」の鬼の面を模した駅舎がユニークな東栄を出ると、飯田線は静岡県に入ります。旧佐久間町でしたが、合併後は浜松市。こんな山奥が浜松!と思ってしまいそうな、山里の風景が広がります。
左窓に天竜川の本流が見えてくると、中部天竜に到着です。長らく、飯田線の輸送拠点であったこの中部天竜。世紀の大事業といわれた佐久間ダム建設のときには、資材運搬の基地ともなりました。中部天竜駅構内には、この地方で活躍してきた鉄道車両が展示されている「佐久間レールパーク」が設けられています。当駅を通過する乗車券があれば入場無料というのも嬉しい限り(乗車券を持っていない場合は入場券140円が必要)。

中部天竜駅構内の佐久間レールパーク

中部天竜からはさらに山が深くなります。長いトンネルで水窪川の谷沿いに抜けると、秋葉街道沿いの小さな集落をつないで走っていきます。そして、狭い谷あいに家々がひしめく水窪の町を出ると、飯田線でいちばん長い大原トンネルに突入します。
大原トンネルの出口が大嵐(おおぞれ)。駅舎は東京駅の赤レンガ駅舎を模したつくりで非常に立派なものですが、駅前には民家が1軒しかありません。この駅の正体はいったい?!

大嵐駅の立派な駅舎

(次回につづく)

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