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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第39回 午後の汽車旅(2)

今回も、前回に引き続き、午後からでも楽しめる汽車旅をご紹介します。

(2)都会の中のローカル線 ~東海交通事業城北線~

 「名古屋市内に走っている鉄道をすべて挙げよ」という問題に正解できる人はどれほどいるでしょうか。JR・名鉄・近鉄・地下鉄・・・とこのあたりまでは正解できそうですが、後はどうでしょう。おそらく、多くの人が挙げられなさそうな鉄道に、ご案内しましょう。「東海交通事業・城北線」です。
 JR名古屋駅から東海道線下りの普通列車に乗ってひと駅、枇杷島で下車します。すると、東海道線のホームの隣に、ひときわ短いホームが並んでいます。これが城北線ののりばです。
城北線は、この枇杷島から中央線の勝川までを結ぶ11.2kmの路線です。行政区域でいうと、清須市・名古屋市西区・名古屋市北区・春日井市を横断する形になります。運転は1時間に1往復程度の運行で、日中はたった1両の気動車が枇杷島と勝川の間を行ったり来たりしているだけ。名古屋市内に電化されてない鉄道路線があるというのも驚きです。
 枇杷島を出た1両の列車――1両で列車というのも妙ではありますが――は、高架に上がり大きく右に曲がります。キリンビールの名古屋工場を右に見ると、尾張星の宮に着きます。キリンビール工場見学に訪れてみるのも楽しいですね。車で出かけて試飲できずに悔しい思いをするぐらいなら、最初から城北線で出かけたほうが賢いですね。工場に付設されたレストランでも、工場直送のビールが飲めます。
 尾張星の宮を出ると、名古屋高速をくぐり、国道22号を越えます。このあたりから、左手遠くには名古屋都心の街並みが展望されるようになります。城北線は、現在、名古屋都市圏の鉄道網としての重要度はお世辞にも高いとはいえませんが、街並みの展望だけに関して言えば高評価といえ、夜景を見ながらのデートというのもオツなものです。

城北線の車両


 右に庄内緑地の森を望み、マンションが増えてくると小田井である。地下鉄鶴舞線・名鉄犬山線が接続する上小田井駅まで徒歩10分ほどの位置ですが、相互の連絡はあまり考慮されていません。ここは全線でもっとも高い位置にある駅で、ホームからの眺望は素晴らしいものがあります。
小田井からは左窓を東名阪自動車道が遮るので、進行方向右側がおすすめです。比良を過ぎ、ランプウェイが空中に弧を描く楠ジャンクションの真っ只中を突き刺すように通過すると、名古屋の街並みが右後ろに去り、春日井市に入ります。味美も同名の駅が名鉄小牧線にありますが、両駅は離れています。城北線はあくまでも城北線の道を往くしかない、と腹が据わってきたころ、もう終点の勝川に到着します。中央線の勝川駅までは一旦、一般道路に下りて徒歩5分ほど。この不便さが城北線のローカルさを醸成しているのかもしれませんが、旅なんて本来不便なもの。この非日常性こそが、新鮮なのです。

(3)これが「鉄道」?! ~名古屋ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」~

 最後は、風変わりな鉄道の旅をご紹介しましょう。
 JR中央線・地下鉄名城線・名鉄瀬戸線が集まる交通の要衝、大曽根。ここから、日本唯一の「鉄道」が発車しているのをご存知ですか。「名古屋ガイドウェイバス」がそれです。「バス」がどうして「鉄道」なのか、とお思いかもしれません。まあ、まずはホームに上がってみましょう。
 一見、鉄道の駅のような外見ですが、線路の代わりにあるのはバス専用の走路です。そこにやってきたのは、どこからどう見ても普通のバス。しかし、よく見ると、補助輪がついています。この補助輪が、走路の両側にある「ガイドウェイ」をなぞりながら走るのです。そのため、運転士は通常のバスと異なり、ハンドル操作をする必要がなく、足元のアクセルとブレーキのみを操作します。バスを運転しているのに、ハンドルから手を離しているのは異様な光景ですが、安全上はまったく問題ありません。法規上は「案内軌条式鉄道」に分類され、運転士は大型自動車免許と鉄道車両の運転免許を両方取得しています。

ガイドウェイバスの走行風景
この補助輪でガイドウェイをなぞる

 大曽根を出ると高架の「線路」を快走します。右手に中日ドラゴンズの本拠地、ナゴヤドームを望み、砂田橋で北へ進路を変えると、矢田川を渡り、守山区内の駅にいくつか停まったのち、小幡緑地へ。この駅を出ると、坂を下り、ゲートをくぐります。ここでガイドウェイ区間は終わりです。補助輪が収納され、正真正銘、通常のバスに変身するのです。運転士もここからはしっかりとハンドルを握って、一般道路に出て行きます。バスは中志段味・高蔵寺方面へと運転されています。

小幡緑地駅にあるモードインターチェンジ ここから一般道路へ

遠くに行くだけが旅ではありません。
午後からでも、列車に乗って、気軽にお出かけしてみましょう。

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