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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

名鉄電車の旅を楽しむ(1)

愛知・岐阜県下に網の目のように路線を持つ名鉄(名古屋鉄道)。豊橋〜名鉄名古屋〜名鉄岐阜間99.8kmを結ぶ名古屋本線を中心に、20もの路線を持つ全国有数の大手私鉄です。名鉄というと、中部国際空港行きの快速特急「ミュースカイ」や、名古屋本線などを走る特急「パノラマSuper」のイメージが強いですが、ローカル線もいくつかあります。その名鉄電車に乗って、鉄道の旅を楽しんでみましょう。

1.犬山線

通勤路線としての印象が強い犬山線ですが、沿線をじっくり見てみると、意外と見どころが多いのに気付きます。まず、起点である枇杷島分岐点は、駅でない地点が路線の起点になっている、全国的にも珍しいところです。名古屋本線と犬山線の電車が行き交う様子は、鉄道ファンならずとも注目の的。私も子どものころはよくここまで自転車でやってきて、時間を忘れて電車を眺めたものです。名古屋本線の西枇杷島駅か東枇杷島駅から徒歩8分ほどでたどりつきます。

名古屋本線と分岐する枇杷島分岐点

犬山線に入って2つめの中小田井。駅の東側に、旧岩倉街道の古い町並みを残している一角があります。ここは名古屋市内で、しかも名古屋駅からは普通電車でもわずか10分。大都会の片隅に、歴史を感じさせる素敵な町並みが残っているというのはうれしいですね。

風情のある中小田井の町並み

上小田井で地下鉄鶴舞線からの乗り換え客を迎えた電車は、田園風景の中へと飛び出していきます。西春、岩倉と過ぎ、布袋のあたりでは左の窓から大きな大仏さんが見えます。篤志家が夢のお告げに従って建立したものだそうで、奈良の大仏より2mも高いのだとか。温かみのあるお顔で、名鉄電車が往来するのを毎日見守っています(布袋駅から徒歩15分ほど)。

電車を見守るように鎮座する布袋の大仏

遠くに見えた山並みが徐々に近づいてくると犬山の市街地へと入っていきます。犬山城の城下町として栄え、今でも町のあちこちに往時のたたずまいを残しています。旧家を改造したフレンチのレストランや、趣のある喫茶店もあり、ゆっくり散策しながら立ち寄ってみたいところです。そして、旅の終わりは犬山城でしょうか。国宝に指定されている天守閣は、白帝城とも別称される美しさで、上まで登ると眼下に木曽川や濃尾平野を一望することができます。その絶景に、旅の疲れもさらっと吹き飛んでしまうことでしょう。

国宝犬山城

2.築港線

イタリア村や水族館、ポートメッセなごやなど、名古屋港に行ったことがある、という方は多いことでしょう。しかし、「東名古屋港」という駅を知っている方は、少ないのではないでしょうか。

常滑線の大江から1駅だけ分岐しているのが築港線。その終点が東名古屋港です。この築港線、名鉄電車のなかでも極めて異色な路線で、電車が走るのは朝と夕のみ、日中は電車がやって来ない、不思議な路線なのです。いったい何のために走っているのか、と思ってしまいますが、この線のお得意さんは、東名古屋港駅周辺にある工場の従業員の人々です。つまり、朝は東名古屋港行きの電車がごった返し、大江に戻る電車はガラガラ。夕方はその逆になるということなのです。

常滑線の電車を大江で降りると、築港線専用の改札口があります。ここできっぷは回収され、築港線の電車に乗り込むと、電車はそう速くないスピードで工場の敷地を横目に走っていきます。途中、名古屋臨海鉄道(貨物専用線)の線路と十字に平面交差する珍しい地点を「ガタガタ、ガタガタ」と音を立てて通過すると、あっという間に東名古屋港に到着。朝ならたくさんの乗客を吐き出し、また夕方なら帰宅客が待ち受けます。東名古屋港とはいっても駅から海が見えるわけではありませんが、名鉄電車の異空間へ、ちょっとしたミニトリップも楽しいのではないでしょうか。

名鉄築港線と名古屋臨海鉄道の平面交差
東名古屋港駅
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