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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

乗って楽しい「おもしろ列車」の旅(2)

●快速「きらきらうえつ」
前回に引き続き、東北の日本海沿いに走るおもしろ列車をご紹介します。白新線・羽越本線の新潟~酒田間を運転されている臨時快速「きらきらうえつ」がそれです。旅を楽しむさまざまな設備をそなえた専用車両で運転され、乗る前から楽しみが湧いてきます。

快速「きらきらうえつ」

「きらきらうえつ」の名の通り、車窓にはキラキラと輝く日本海が眺められます。季節や天候、そして時間帯によって素顔を変える日本海は、どれだけ眺めていても飽きることがないほど、奥深い眺望です。とりわけ、村上から鶴岡にかけての区間は、景勝地「笹川流れ」(桑川付近)をはじめとして、日本海の風景が変化に富む楽しい区間です。A席・B席が海側の座席になります。

「きらきらうえつ」は「乗って楽しい、降りて楽しい」がテーマです。車内には、簡易展望スペース(1号車・4号車の運転席後部)があり、大きな窓から沿線の風景を眺められるほか、座席そのものも間隔が若干広めになっており、快速でありながら特急の普通車よりも快適な空間になっています。また、2号車はラウンジ車両となっていて、ミニビュッフェと和風ラウンジスペースが設置されています。地酒をショット売りしているので、駅弁やおつまみを肴に、絶景を眺めながらほろ酔い気分に浸ることも可能です。
車内アナウンスの始まりと終わりには「キラキラ星」のメロディーが流れ、車掌さんのアナウンスも観光案内を交えた丁寧なものであるなど、ソフト・ハード両面で充実している列車であるといえます。

車内の和風ラウンジスペース
ラウンジで地酒を飲みながら流れる車窓を眺める

「降りて楽しい」のもこの列車の特徴です。各停車駅ごとに体験メニューや観光が用意されており、希望者は自由に参加することができます。例えば、勝木(がつぎ)では、勝木ゆり花温泉交流の館「八幡」での絵馬づくりや石絵体験、入浴が、あつみ温泉では、3軒の旅館で立ち寄り入浴ができる「湯村めぐり」、府屋では、「さんぽく生業の里」で山の生業体験・・・などと、地元の人々とふれあいながら、地域の文化に触れることができます。予約が必要なものもありますが、ほとんどは車内で申し出れば予約できるため、列車に乗ってからどこで降りようかと考えることもできます。2号車のラウンジ車両には、沿線市町村の観光情報コーナーもあるので便利です。

上りの「きらきらうえつ」に乗ると、季節によっては日本海を真っ赤に染める夕陽を眺めることができます。冬の日本海では晴れることも少ないですが、運良く晴れれば感動の瞬間が待っています。沈む夕陽を眺めながら地酒で一献・・・。旅情はクライマックスです。私も昨年の冬に乗車しましたが、雲の間から一瞬だけ姿を現してくれたときには、思わずぐっときてしまいました。

きらきらうえつの車内から眺めた夕陽
羽越本線は、途中の余目で陸羽西線と接続しています。最上川に沿って走る風光明媚な路線で、最上川の舟下りも楽しめるところですし、終着の酒田から北へと乗り継げば、芭蕉ゆかりの象潟、さらに秋田方面へと、さらに旅の舞台が広がります。新潟というと、愛知県からは行きにくいところのひとつですが、夜遅くの米原行き最終列車で米原へ、さらに夜行急行「きたぐに」に乗り換えれば、眠っている間に新潟へ運んでくれ、1時間あまりの接続で「きらきらうえつ」が発車します。東北方面への旅にアクセントがつく「きらきらうえつ」を、次の旅の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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