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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

途中下車の楽しみ

気ままな「途中下車」。鉄道の旅の大きな魅力です。単に目的地をめざして急ぐ旅ではなく、沿線の町の素顔や美しい風景に一旦足を止める、そんなスローな旅は、やはり途中下車してこそのものではないでしょうか。
「ここで降りたい!」と直感的に思った駅で、サッと腰を上げてホームに降り、町を歩いたり、地元の人と触れ合ったり、という体験は、単に観光地をめぐるだけの旅とは違って、新鮮であるし、意外と心に残るものになるのではないかと思います。

JRでは、営業キロが101km以上の普通乗車券であれば、有効期間内は戻らない限り何度でも途中下車が可能です(途中下車というのは、一度改札を出たのち、再び改札を入って乗車を続けるということをいいます)。

JRでは101km以上の乗車券なら途中下車ができる
途中下車した駅では「途中下車印」が押される

例えば、「東京都区内→名古屋市内」の乗車券を持っている人は、横浜や熱海、静岡、豊橋、岡崎など、その区間内の各駅で途中下車ができます。「東京都区内→名古屋市内」の場合、有効期間は3日間。ですから、東京から名古屋に向かう途中、熱海で途中下車し、温泉旅館で一泊。翌日、焼津で途中下車して海の幸を満喫した後、静岡で一泊。3日目、静岡から名古屋に向かう、という旅も、「東京都区内→名古屋市内」という1枚のきっぷで実現できるわけです。極端な例を示せば、東京~名古屋間の全駅に順番に降りていくことだって、3日以内であれば可能だということです。下世話な話ですが、東京から名古屋に向かう途中で静岡に立ち寄る場合、「東京山手線内→静岡」「静岡→名古屋」と2枚の乗車券に分けて買うと合計6,520円ですが、「東京都区内→名古屋市内」の乗車券を通しで買うと6,090円で済み、430円も安くなります。
ただし、例外もありますので、注意が必要です。
(1) 前述したように、途中下車が可能なのは営業キロ101km以上の乗車券に限られます。100km以下の"近距離きっぷ"では、一度途中下車するとその先は無効となり、乗車券は回収されます。また、「東京都区内」「名古屋市内」「札幌市内」など、券面の発駅・着駅の表示が「○○市内」などとなっている場合、そのエリア内での途中下車はできません。例えば、「東京都区内→名古屋市内」の乗車券を持っていて上野から乗車し、品川で途中下車する、ということはできません。また、最終的には大曽根まで乗車するつもりで、金山で一度途中下車をし、その後また乗るということはできません(金山で下車した時点で乗車券は回収)。
(2) 名古屋近郊ではあまり関係のないことですが、東京・大阪・福岡の「近郊区間」では、たとえ101km以上の乗車券であっても、途中下車はできません。
(3) 回数券や格安のきっぷなど、普通乗車券以外のきっぷでは途中下車ができないことがほとんどです。

このほか、乗り降り自由のフリーきっぷがJRや各私鉄でいろいろ発売されていますので、きっぷを有効活用して、気ままに途中下車の旅を楽しみたいものです。

さて、途中下車して町を歩くとき、何の情報もなしにやみくもに歩き回るのも、それはそれで楽しいですが、アタリを付けて歩きたいという場合、駅構内や駅前でまず情報を手に入れることから始めたいものです。中規模以上の駅なら、たいてい駅前には案内図がありますし、観光案内所が開いていることもあります。駅員さんがいるのであれば、駅員さんに見どころをアドバイスしてもらうのもいいでしょう。予算の余裕があるなら、駅前で客待ちしているタクシーに、およその時間と予算を言えば、主なみどころを回ってくれるでしょうし、世話好き、話好きの運転手さんに当たれば、思わぬ穴場を教えてくれるかもしれません。

小さな無人駅で途中下車
(JR紀勢本線・波田須駅)

何も情報源がなかったり、食指をそそられる見どころがなさそうであったりするなら、駅を出発点にして、少し歩いてみましょう。歩き方にはいろいろあるかと思いますが、私は「時間的余裕の3分の1の時間で歩けるところまで行ってみる」という手を使うことが多いです。次の電車まで1時間ある、というなら、その3分の1、20分で行けるところまで歩いてみる、ということです。そして、残りの40分で、ゆっくり寄り道をしたり、脇道にそれたりして駅へ戻るのです。最初の20分でもし面白そうなところがあれば、後でそこへ立ち寄ろうと決めておくわけです。

旅には偶然のハプニングがつきものです。予定外の寄り道が、もしかしたらその旅の最高の思い出に残るようなひとときになるかもしれません。逆に、せっかく途中下車をしても、あまり面白くなくて「ハズレ」だと思うこともあるかもしれませんが、それも「旅」。何度もそうした体験を繰り返していくうちに、あなただけの「町の歩き方」が生み出されていくのではないでしょうか。

あてもなく訪れた町で新鮮な発見があることも
(富山県福光で棟方志功の旧住居を訪ねた)
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