愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第 31回 阪神なんば線開業で神戸が近くなる

3月20日(金)、阪神電鉄「阪神なんば線」の大阪難波~西九条間が開業し、近鉄奈良線との相互直通運転が開始されました。近鉄奈良~阪神三宮間を快速急行が直通することになり、奈良と神戸が、また大阪ミナミと神戸がダイレクトに結ばれました。
 実はこの阪神なんば線の開業、私たち愛知県民にとっても朗報といえます。

名古屋から神戸へ向かうとき、最も速いのはもちろん新幹線です。「のぞみ」なら新神戸まで約1時間10分程度。ところが、新幹線ですから、割高になるのは致し方ないところ。名古屋~新神戸間の運賃・特急料金の合計(通常期「のぞみ」普通車指定席利用)は、7,950円です。金券ショップ等で販売している回数券のバラ売りを利用しても7,000円強あたりが相場でしょう。かといって、在来線で行けば運賃(3,890円)だけで良いとはいえ、所要時間は約3時間、しかも米原で乗り換えが必要となってしまいます(時間帯によっては大垣でも乗り換えが必要)。

ところで、愛知県の方が、関西へ格安に行くときに考える選択肢というと、近鉄特急「アーバンライナー」ではないでしょうか。名古屋から大阪難波まで約2時間で、運賃・特急料金の合計(レギュラーシート利用)は4,150円。これも、金券ショップで回数券のバラ売りをよく見かけます。こちらは3,200円程度が名古屋地区での相場です。
しかし、大阪が目的地ならともかく、神戸へ行こうと思うと、近鉄利用では乗り換えが少し面倒です。近鉄を鶴橋で降り、JR大阪環状線で大阪へ、さらに東海道線(JR神戸線)で三ノ宮・神戸方面へ、というのが最もスムーズな行き方ですが、乗り換えが最低2回は必要でした。
そんな状況で開業したのが「阪神なんば線」です。近鉄特急を難波で下車し、降りたホームでそのまま阪神なんば線の電車に乗り換えます。快速急行ならそのまま三宮まで直通しますし、普通電車でも尼崎で三宮方面行きの電車に乗り換えればOKです(尼崎で乗り換える場合も階段の上下なし)。

阪神なんば線を介して神戸方面へ行きやすくなった

乗り換えの手間を考えると、従来よりも格段に便利になったといえます。気になる所要時間ですが、大阪難波~阪神三宮間が快速急行で約40分。乗り換えの待ち合わせ時間をあわせて、名古屋から三宮まで約3時間となります。運賃は大阪難波~阪神三宮間が400円ですので、近鉄線内の運賃・特急料金とあわせて4,550円。新幹線の6割ほどの出費となる計算です。JRの在来線利用と時間的にはそう変わらず、JRの運賃よりやや割高ですが、全車指定席という近鉄特急の快適さを考慮すれば、座席の保障がないJRの在来線よりも有利ですね。

実は、新幹線を利用した場合、到着するのは新神戸で、神戸市街の中心地(三宮・元町界隈)とはやや離れていますので、地下鉄に乗り換えるか、新神戸駅前からタクシーやバスを利用することになります。地下鉄なら新神戸から三宮までわずか1駅ですが、地下鉄のホームまで降りていくと、早足でも新幹線のホームから5分はかかります。タクシーやバスでも10分程度かかりますから、これも面倒といえば面倒です。
その点、阪神電車で神戸入りすれば到着するのは三宮。繁華街の真っ只中ですから、そのまま町歩きが楽しめます。

神戸の夜景も身近になった

阪神電車というと、愛知県民の私たちにはあまり馴染みのない鉄道ですが、大阪と神戸を結ぶ生活の足であり、阪神タイガースのお膝元でもあります。阪神ファンの聖地・阪神甲子園球場は甲子園駅(快速急行も停車)で降りた目の前。東海地区の阪神ファンの方々にも朗報ですね。いや、中日ファンも負けていられません。甲子園での中日戦では、圧倒的少数の中日ファンが、阪神ファンの大声援に埋もれそうになりながらも頑張って声を枯らしてレフトスタンドの一画で声援を送っています。近鉄特急と阪神なんば線に乗って甲子園へ中日の応援に行くのも面白いですね。また、阪神なんば線の途中駅、ドーム前で下車すれば、目の前はオリックス・バファローズの本拠地、京セラドーム大阪。野球好きの方なら、昼は京セラでオリックス戦、夜は甲子園で阪神戦とハシゴするのも良いですね。

京セラドーム大阪・甲子園球場をめぐる旅もまたよし

また、阪神なんば線を西九条で降り、JRゆめ咲線(桜島線)に乗り換えれば2駅でユニバーサルシティに着きます。そう、USJの最寄り駅です。USJへ格安に行きたいという皆さんにも利用価値が高そうですね。
そして、隠れた利用術として、神戸を越え、明石・姫路方面へ行ってみたいという方にも阪神電車が便利です。阪神なんば線で尼崎に出て、そのまま「直通特急」に乗り換えると、神戸市内を抜け、山陽電鉄線に乗り入れます。淡路島方面への高速バスに乗り換え可能な舞子公園(明石海峡大橋前)、明石焼を賞味したい山陽明石などを経て、終着は世界遺産姫路城が迎える山陽姫路と、歴史や文化の香りも漂います。

最後に一つ留意しておいていただきたいことがあります。現在のところ、近鉄名古屋駅では、大阪難波から先、阪神なんば線方面への乗車券は発売されていないようです。阪神なんば線をご利用の場合は、大阪難波までの乗車券を買い求めて乗車したうえ、乗務員か着駅の係員に申し出て精算することになりますので、ご注意ください。

知って得する鉄道旅行術
このページの一番上へ