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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

高山本線・スローな旅

去る9月8日、2004年の水害により不通となっていたJR高山本線・角川〜猪谷間がおよそ3年ぶりに復旧し、高山本線は全線がつながりました。鉄橋や路盤が崩壊するなどの壊滅的な被害を受けており、約60億円ともいわれる費用をかけて復旧にこぎつけました。今回の全線開通を機に、高山本線沿線ではイベントやキャンペーンも開催されています。この秋は、再出発の高山本線で旅してみませんか。

1.高山本線のあらまし

高山本線は、岐阜〜富山間225.8キロを結ぶ路線で、中部山岳地帯を縦貫するため地形環境の厳しい区間を通り抜けていきます。名古屋や大阪から直通の特急「ひだ」号が高山・飛騨古川・富山まで運行されているほか、本数はさほど多くないものの普通列車も運転されています。電化されていない路線なので、ディーゼルカーがエンジンを唸らせて走る路線です。

沿線には、日本ライン下り、下呂温泉、高山・古川の町並みといった名高い観光地が並ぶほか、木曽川・飛騨川・宮川・神通川の渓谷美や、沿線に垣間見える人々の素朴な暮らしぶりに心を動かされる、魅力を秘めた路線でもあります。少し足を延ばせば、奥飛騨温泉郷(高山駅からバス)、世界遺産・白川郷(高山駅からバス)にもアクセスすることができます。

山峡を走っていく高山本線

2.下呂で温泉を味わう

沿線随一の温泉が下呂温泉でしょう。有馬・草津とともに日本三名泉ともされる下呂の湯は、美肌効果もあると評判です。温泉街には大小さまざまな宿が建ち並び、賑やかな雰囲気を見せています。列車で到着するお客さんを出迎えようと、午後になると駅頭に各旅館ののぼりを持った宿の人たちが並ぶのも、なんだか楽しいものです。

もちろん、自分好みの宿を見つけて泊まるのもいいですし、ふらっと立ち寄って湯浴みをするのもオツなものです。温泉街の案内所やお土産店、各旅館では、3軒の宿で日帰り入浴ができる「湯めぐり手形」(1,050円、6か月有効)を販売しており、気軽にはしご湯が楽しめます。また、温泉街には温泉銭湯もあり、こちらはよりリーズナブルに、地元の人と"裸のつきあい"が楽しめます。最近では、各旅館でも、ランチと日帰り入浴のプランを積極的に設定していますので、予算と日程に合わせてチョイスしてみましょう。

もっとリーズナブルに、という向きには、温泉街の中央を流れる益田川の河原にある「噴泉池」はいかがでしょうか。周囲には目隠しも脱衣所もまったくない、混浴の無料露天風呂です。圧倒的な開放感を味わうことができます。
ちなみに、下呂駅の2・3番線ホームには、全国的にも珍しい、温泉手洗い場があります。そこに手を浸すだけでも、一応「入浴」にはなる・・・でしょうか。

下呂駅のホームには温泉手洗いも

3.高山を歩く

国際的にも名高い観光都市、高山。ぜひじっくり滞在して、町じゅうを歩き回りたいものです。大きなリゾートホテルから、家族的な民宿まで、旅の目的と予算に合わせてさまざまな宿が散在しています。できたら一泊して、観光客のごった返す昼間とは違った雰囲気の高山を味わいたいものです。

高山一の繁華街が、宮川にほど近い国分寺通り界隈です。居酒屋やスナックなどが軒を並べる一角で、夜な夜な町に繰り出し、飛騨の地酒を堪能しながら素朴なおつまみに舌鼓を打ち、地元のおじさんたちと談笑するのも楽しいところです。もちろんシメは飛騨風の中華そばに限ります。私などは、リーズナブルなビジネスホテルに泊まり、夜は国分寺通りで飲むというパターンが多いように思います。

そして、お店などはもうとっくに閉まっていますが、どっぷり暮れてから、静まり返った上三之町の古い町並みを歩くと、なんだかタイムスリップしたような感覚にもなりそうです。朝は朝で、観光客が押し寄せる前の町中では、地元の人同士が挨拶を交わしたり、朝市の準備をしたりと、飛騨の素朴な風情が感じ取れます。

高山に泊まったらぜひ朝市は訪れてみたい

4.流れ行く車窓にも見どころはいっぱい

高山本線の列車に乗ったら、車中では居眠りするのはもったいないですよ。ぜひ車窓の風景の移り変わりにも注目してみてください。
鵜沼付近では右側に犬山城、その先には右側に日本ライン(木曽川)の急流が見えてきます。美濃太田を出て田園風景がしばらく続いた後、下麻生付近から山峡に入って行き、飛水峡の深い渓谷が右側に見えます。白川口を出ると、飛騨川の渓谷が右に左にと沿うようになり、ところどころではダム湖すれすれのところを走っていきます。

下呂、飛騨萩原、飛騨小坂と過ぎるにつれてさらに標高を上げていき、久々野を出るといよいよ分水嶺の宮峠を越えます。上り勾配からやっと解放された列車は、今度はすぅっと勾配を下り始め、車窓の川の流れも先ほどと逆方向になっているのが分かります。

高山の町を抜け、飛騨古川を出ると、再び深い山峡に入り、今回3年ぶりに復旧した区間では、宮川のつくる深山幽谷の風景(左右両側)に見とれてしまいます。富山県に入った猪谷駅も、深い山に囲まれた雰囲気の良い駅です。神通川の渓谷を右下に見ると、徐々に標高を下げ、富山平野へと下りて行きます。
ここまで特急で3時間20分ほど、普通列車なら6時間ほどかかります。太平洋側から日本海側へ、日本を横断する車窓の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

山に囲まれた猪谷駅

5.お得なきっぷも多数発売されています

高山本線の全線開通にあわせ、JRでは「いい旅 ふた旅ひだ号往復割引きっぷ」「富山フリーきっぷ」が期間限定で発売されています。また、通年発売の「飛騨路フリーきっぷ」や「周遊きっぷ(飛騨・奥飛騨ゾーン)」などもありますので、これらを使うとお得に旅することができます。詳細はJR東海の公式サイト(http://jr-central.co.jp/)をご参照ください。

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