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文化講座

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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

言葉と写真

暑い日が続きますね、毎年記録更新の様子が報道されますが災害と気温上昇の更新は避けてほしいと思う今日この頃です。熱中症には気をつけてお過ごしくださいませ。

先日の教室講座でこんな質問がありました。

『自分が育てたスイカやトマトがカラスに狙われ収穫寸前で食い荒らされました。その悔しい気持ちをカメラで撮影したのですが思うように写っていませんでした。どう表現すればいいでしょうか?』・・・この質問に私は返答に困りました。写真で感情を表現することはよくあります。美しい光に包まれた風景を撮影してその場にいない人たちと共有したい。綺麗に咲く花を見てその感動を自分なりに表現したい。誰もいない夕刻の海岸で何か寂しい気持ちを写したい。など目の前にある光景を借りて自分の気持ちを写し込もうといろいろ考えて撮っています。

人の表情を入れて撮影すれば悔しいという感じを写すことはできるかも知れません。しかしその食い荒らされた現場や物だけでその悔しいという感情を写しとることはとても困難だと思います。ここでカメラはその場の記録は撮影できるが感情表現には難しい素材もあるのだということがわかりました。

綺麗、優しい、悲しいなどの感情表現の手助けを補い担うのが(その場に当たる光の良し悪し)だとも言えるでしょう。

美しい、優しい、可愛い、寂しい、面白いなどの言葉を置き換えて被写体に投影することは可能だと思います。悔しい、痛い、悲しい、楽しい、憎いなど同じ形容詞でも人物の表情表現には向いているけれど無機質のものでそれを表すことはとても困難な言葉であることがわかります。アメリカやヨーロッパの写真表現では言葉によるステートメントが重要視されています。その言葉(文章)の中にその本人の気持ちや生き様のようなスタイルを汲み取り写真を見ていくような感じです。近年日本でもアート思考系の写真ではそのステートメントなしでは作者の表現内容をより深く理解してもらうことが難しいこともあり写真だけではなく完成度の高いステートメントが必要になっています。

最近の写真展会場でも入り口にある作家の説明文だけでなく本人のギャラリートークを行う会場が増えてきています。ただ展示している写真作品を見てもらえれば良いというだけのものから作家と鑑賞者をより深く繋げる意味でも良い傾向だと思います。皆さんも教室などで見てもらう写真プリントに一枚ずつ簡単な言葉(説明)を考えてみるのも良いのではないでしょうか。自分はこう感じて写真を撮ったという再確認の意味も込めて言葉に置き換えてみましょう。

今月の一枚

三重県いなべ市を走る北勢線です。稲穂が膨らみ始める夏の姿です。小さく可愛い車両が鉄道マニアの人たちに人気です。順光の光の状態でPLフィルターの効果が効いてます。


筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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