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デジタル写真の楽しみ方

(社)日本写真家協会(JPS)会員・フォトス ハットリ 代表
服部 辰美

エモい写真

少しずつ暖かさを感じ始め春に向かって季節が動き出しているのが分かる今日この頃です。梅から桜へと写真を撮る楽しみが増してくるのも3月ならではないでしょうか。雪や雨などでカメラを酷使された方はメンテナンスをしっかりと確認したいですね。

人が目の前の光景を見ている範囲をカメラのレンズの画角に置き換えると一般的に28mm~80mmぐらいの焦点距離を使用していると言われています。もちろん視力の良い人はもっと遠くの狭い範囲を200mmぐらいの望遠効果で見ているかもしれませんが。物や目の前の人を観察してどう捉えようと見ている時にカメラマンは同時に構図を意識しています。どう切り取ったら良いのか、レンズは何ミリの焦点距離を使えば良いのかなど無意識に考えています。レンズの画角と自分の考えた切り取り方がピタッとあった時に満足のいく写真になります。ズームレンズはそんな時素早く対応できるレンズと言えるでしょう。
だけど最初の自分の立ち位置からそのままズームを使って構図を作る場合に全ての焦点距離範囲が良いわけではないことはベテランの方にはよくお分かりだと思います。ズームレンズとは別に35mm、50mm、75mmなど単焦点で使うレンズで撮影すると画角(焦点距離)が一つなので自分が前後に動くことで切り取り(構図)を思ったように決めることができます。

ここから一歩進めて考えていきましょう。35mm、50mmは人の視線で一番自然に見える感じで捉えやすい焦点距離と言われています。人によってこの2種類の画角の好みが分かれますがそれがなぜかを考えてみましょう。35mmは50mmよりちょっとだけ広角ですよね。30cmほど前に行けば写る範囲は50mmとほぼ同じになります。
じゃあどちらでも良いような気がします。当たり前ですが35mmの方が少しだけ広角で写ります。主役になる被写体の周りも50mmより広く写ってきます。
35mmの方が万能的だと思われるかもしれません。

(上の2点の写真はレンズの焦点距離が35mmと50mmで同じ立ち位置から撮影したものです。見せたい内容が変わっているのが分かります)

最近若い人たちがこの写真『エモい』などとInstagramのコメント欄に感想を書き込んでいるのをよく見かけます。『エモい』=emotionalの略(感傷的、情緒的) この言葉で表現できる世界観の写真が50mm的と言えるのではないでしょうか。
それに比べて35mmの画角の方は少しだけ背景などの説明的要素が写り込んでくるので日常的な見え方になると思います。言い換えれば日常と物語の見せ方、感じ方の違いがこの2種類の焦点距離の写り方の違いだと思います。

被写体を客観的に見せる35mm、主役を主観的に見せる50mmと使い分ければ何となく分かりますよね。日常を見せたいのか物語を写真で感じて欲しいのかを考えながら焦点距離を選択するのも一つの方法だと思います。単焦点の50mmが今でも若い人たちに人気があり自分の世界観である『エモい』写真を作りやすい理由の一つかなと思っています。

今月の一枚

奈良市月ヶ瀬の梅林です。2月末から3月初旬に見頃を迎え梅の花見客で賑わいます。
気温の変化があるので時には眼下に雲海が発生することもあり早朝から多くのカメラマンが集まります。
 月ヶ瀬尾山・一目八景茶屋の展望台


筆者のブログには、デジ一眼やコンデジで撮影したものを
いろいろ掲載しています。
PHOTO COLOR
http://tatumiiro.exblog.jp/

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