文化講座
Well-being120・・6 Well-being120は「つとめ励む不死の境地」
NHK Eテレの「こころの時代~宗教・人生~」の番組(2019年11月3日)で女優やテレビなどで多様に活躍するサヘル・ローズさんがその養母・フローラ・ジャスミンさんと共に「砂浜に咲く薔薇(ばら)のように」のタイトルで出演していました。
私は2009年に出版されたサヘル著「戦場から女優へ」を大切にしています。
サヘル・ローズさんのサヘルは「砂浜」、ローズは「薔薇」を意味しています。
サヘルさんは4歳の時イラン・イラク戦争で瓦礫の下敷きになっていた時、後に養母となるフローラ(花)・ジャスミンさんが奇跡的に救って死から逃れましたが、孤児として施設に入れられました。
フローラさんは当時大学生のボランティアとしてサヘルさんを助けました。
心理学を学ぶ大学生で、テヘラン大学の教授となるのをめざして勉強していたのです。
彼女はイランの王家につながる名門医師の子供でエリート一族でした。
甘さの中に豊潤さがありサフラン色で美しいライスプディングを作って差し入れをしながらサヘルさんをフォローしていました。
フローラさんは7歳になったサヘルさんに「私のお母さんになって」と言われて養女として引き取ったのです。
しかし、名門の父母はフローラ母子をアパートから追い出して絶縁しました。
フローラさんは結婚していた日本に留学中の男性を頼って日本に来ましたが、サヘルさんと一緒はだめと放り出されて、二人は公園での寝起きとなってもフローラさんはサヘルさんをそれでも離しませんでした。
中学時代のサヘル母子は「死」を覚悟して向き合っていた時に、サヘルさんは「死から生きるを学んだ」と言っています。
相手と目を合わせないように下を向いて歩き、人に合わせようとするサヘルさんに一人の先生が「"がんばる"ことは人に合わせることではない。自分を大切にして自分らしさを求める」ようにと言われて再び「死」から「生」へと母子共々前を向いて進んだのです。
母のフローラ・ジャスミンさんは「砂浜ではあまり薔薇は育たないのですが、戦争でもサへルは亡くならなかったので、強いと思いますよ、私は」と言いながら二人でバラ園を手入れしているシーンがありました。
二人は血縁はない「かけがえのないつながりで生きる」ために前を向いて「つとめ励んでWell-being」に苦難の道を選びました。
「主客合一」の親子は死の病を患う母とWell-beingを生き抜くと信じています。
「つとめ励むのは不死の境地である」とブッダは言っているからです(「ブッダの真理のことば 感興のことば」(中村元訳)。