文化講座
Well-being120(120歳まで幸せに生きる)・・34 自然の生きがい Wellbeing-ism・ウェルビーイングイズム-4
イズミモリ作
ウェルビーイングイズムは万権主義―1
私は金子みすゞの自然や子供の心を綴った素直で日常的な言葉で書かれた童謡作品が大好きです。
日々の生活で垣間見られる自分の心、季節感ある自然や天空・宇宙へそそぐまなこはまさに、ウェルビーイングイズムだと思います。
金子みすゞの作品には「万物との素直で公平な交わりと調和」があり、「自然の理」を童謡詩として謡っています。
まさに、人権主義に対して万権主義です。
詩人の金子みすゞは大正デモクラシー時代に、わずか20~26歳(大正末期から昭和初期)の短い間に童話雑誌などに投稿していた童謡詩人です。
しかし、大正デモクラシーとは言っても、一般の女性が文学を志すのは、まだまだ難しい時代でした。
投稿詩人であった金子みすゞは生前には一冊も単独の詩集を出版していません。
万物と響き合うウェルビーイングイズム・万権主義に溢れるみすゞ作品を紹介します。
まず、NHKテレビ番組の「みんなのうた」や「にほんごであそぼ」で何度も取り上げられ歌われる「わたしと小鳥とすずと」です。
人、自然の生き物や無生物が持つ特色に公平な目線を注いで、違っていることを認め合って調和しています。
金子みすゞは「自分は詩人であっていい」と言っているようです。
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように、
たくさんなうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
次にみすゞの万物に優しい宇宙観ある「星とたんぽぽ」を取り上げます。
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」と金子みすゞが詩を謡っても、発表するような雑誌は次第に忍び寄る戦争ムードに無くなっていきました。
時代に合わせて万物と言っても"戦争"は謡えないみすゞの心の内に「ある」願いが込められていると私には響いてきます。
女性ゆえの不公平な運命に翻弄されていた優しすぎる金子みすゞは、天空の楽園が見えても与謝野晶子や林芙美子のようには生きることはできずに26歳で自死しました。
詩の出典:金子みすゞ童謡集『わたしと小鳥とすずと』(JULA出版局)より