文化講座
Well-being120(120歳まで幸せに生きる)・・9
コモンズ協働社会・Commons協働社会
前回の「私たちが直面していること」で、人類社会が直面している危機について取り上げました。
私たちが幸せな生活をするために「地球温暖化と地球環境汚染」、「貧困格差と差別を生みだした資本主義の危機」を乗り越える局面を迎えています。
そうした難局を人間が乗り越えて、人間やあらゆる生物が共存し幸せで平和に生きるためには、AIやIoTなどのハイテクを取り込んだ「コモンズ協働社会・Commons協働社会」を築くことがキーだと私は思います。
「コモンズ協働社会」は、日本が誇る経済学者(数理経済学)で、残念ながら亡くなったためにノーベル賞受賞ができなくなった宇沢弘文(1928~2014)が説いた「社会的共通資本」を基本とした社会です。
宇沢は経済学で名門のシカゴ大学時代に新自由主義を代表する同僚だったミルトン・フリードマンが主張する、市場競争を優先する経済効率重視の市場主義が「格差を拡大させる市場原理優先社会と環境問題」への疑問を提起して激しく対立したことで有名です。
前述のフリードマンが協力した1973年の南米チリ・クーデターで、軍閥がCIAや米国多国籍企業と組んで合法的選挙で民主的に選ばれたアジェンデ大統領の「虐殺」転覆に成功したことを知った時に宇沢教授は36歳で就任したシカゴ大学教授を、辞表を出して辞めたことで知られています。
シカゴ時代の弟子ジョセフ・スティグリッツは彼を尊敬しており、ノーベル経済学賞を受賞しています。
宇沢は地球環境変化にどうすればきれいな地球を残せるかと具体的提言と対応策を探っています(「地球温暖化を考える」岩波新書1995年)。
地球温暖化の危機を訴えて「比例的炭素税」導入の必要性を主張しました。
東京大学教授時代には電車や車を使わずにジョギングで通ったとのことです。ランニングシャツと短パン姿でも知られています。
今日のグレタ・トゥーンベリの先考・先行者だと言えます。
2019年に女性2人目のノーベル経済学賞を受賞したフランスとUSAの国籍を持つエステル・デュフロも、最貧国のインドなどの綿密な調査で「コモンズ協働社会」を実証的に肯定しています。
「GDP の最大化」は格差を広げる先進国が考えた的外れなゴールだとしています。
最近話題の斎藤幸平編の「資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐」(集英社新書)や「コモンウェルス」(NHKブックス)の著者の一人マイケル・ハートが言及しており、若き学者のE・グレン・ワイルらによる「ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀」(東洋経済新報社)などのように、資本主義の終焉を予告し、故宇沢が主張した「社会的共通資本」(岩波新書)や「人間の経済」(新潮新書)を基本とした主張だと思います。
宇沢が指摘した新自由主義者たちの矛盾から資本主義が人間味のない経済主義だと言うことが明らかになり、宇沢の「人間の経済」たる「社会的共通資本」に人間的な希望のある経済学が花を開こうとしています。
国家権力や資本主義か社会主義かを超えた「コモンズ協働社会」で、格差のない社会で暮らせる豊かな自然と人間味ある命を大切にする社会を築くのです。