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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

「ケガレ・ケ・ハレ」:喫茶・茶の湯のもう一つの道-2

 今回から喫茶・茶の湯は我が国の民俗・文化人類的な深層に根ざした「ケガレ・ケ・ハレの生活律」観念の文化だとの私の喫茶・茶の湯論を紹介します。

 喫茶・茶の湯は貴賎を超えた生活文化であることを忘れてはならないと思います。
 今日、茶の湯といえば「ワビ・サビ」観念の文化として広く知られており、利休によって完成された茶道的点前と茶碗などの茶道具や草庵の茶室をイメージしますが、日常茶飯の生活文化とは言えません。
 今日の茶道は、江戸時代の元禄期に誕生した茶道家元制によって、武家や富豪の商人などによる文化として様式化され、維持保存されてきました。
 一方で、煎茶、焙じ茶などの食事に伴った飲料、もてなしの飲み物としての日常生活文化的な喫茶が続いています。
 今日では、ペットボトル飲料としての"お茶"が普及して、メジャーとなっています。
 生活スタイルの変化に伴った喫茶・茶の湯が持続、変転していると言えます。

 何故に、学名をカメリア・シネンシスたる茶やその成分が飲料として今日に続いているのでしょうか。
 近年は、茶葉の成分たるカテキン類を主成分とするポリフェノールの抗酸化物成分が注目され"健康飲料"として普及しています。
 企業努力によって、ペットボトルの茶成分飲料が世代間格差を乗り越えています。
 また、茶の湯が伝統的日本文化の代表として、近年は若い人達や男性にも注目され、関心が持たれるようになっています。
 伝統文化として、日常生活とは離れて、非日常的な超然の時空を求める喜びです。

 喫茶・茶の湯文化が我が国の文化として生きているのは、私は次のように考えています。
 民俗学的・文化人類学的に言って、我が国の生活や民俗・習俗習慣の心操に適っているからだと思います。
 我が国は唯一絶対の神を持つ一元的な人間中心的な生活習慣を求めるよりも、万物に霊魂が宿っているとするアニミズム信仰を持って、動植物や自然に人間と同じ仲間として交流する多元的多義的生活習慣を持っています。
 生きとし生けるものに慈しみの心と魂を注ぐのです。
 その生活習慣は「ケガレ・ケ・ハレの生活律」観念を人々の日常の暮らしや社会の中に根付かせてきました。
 日本人の心性に深く根ざした「ケ・気」が生活と社会、文化の深層を支配しています。

 喫茶・茶の湯は「ケガレ・ケ・ハレの生活律」観念の「ケガレ・気枯れ」から「ハレ・ケ」を求めるアニミズム文化なのです。

信天翁喫茶ワールド
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