文化講座
「ケガレ・ケ・ハレ」:喫茶・茶の湯のもう一つの道-14
「ワンピース」の価値観と人間関係―4
自分と向き合う文化
私は、喫茶・茶の湯は「自分と向き合う」文化だと思っています。
幕末の大老・井伊直弼は、江戸時代の最も優れた茶人であり、井伊宗観として著した「茶湯一会集」は歴史上の名茶書です。
「一期一会」、「予情残心」とともに「独坐観念」の大切さを説いています。
茶会が終わって客人を見送った後に、閑寂として独服しながら「誠に自得せざればいたりがたき境界」と説いています。
「自ら会得して、自業する」姿勢です。
「ワンピース」のイーストブルー編に出てくるルフィ海賊団のコック・サンジが赤鬼と恐れられた海賊だったゼフの海上レストランで修業していた時代のお話を取り上げます。
首領クリークが率いる非情な戦闘団のクリーク海賊団総隊長の"鬼人"ギンが飢餓で死にそうであった時に、サンジは"腹を空かしている如何なる悪党であれ食べさせる"と命を救ったのですが、復活したギンに瀕死の攻撃を受けます。
首領クリークを裏切ったと疑われたギンは逆にクリークの毒ガスに、あわや命を落とす状況にありながら、サンジ達に再び救われます。
ルフィは首領クリークをダウンさせましたが命まで奪われなかったが故に、ギンは自分を殺そうとしたクリークを肩に担いで、ルフィやサンジに"自分は総隊長として有能だったが、首領の命令を実践していただけだ。自分で考え、自分の意志で行動してこなかった。これからは、自分の頭で考え、自分の足で動くのだ"と「自分と向き合い」ました。
そして、"他の人の責任に転換できないように、自分の意志と責任で行動する"と宣言して、ルフィらと再び自らの意志で決戦を挑むと決意して去って行きました。
ルフィやサンジは武器を用いることなく戦い、決して相手が極悪非情であっても、止めを刺して殺さないところが素晴らしいアニメだと私は思います。
海上レストランのオーナーシェフでサンジの師匠で、かつて海賊の"赤鬼"と恐れられたゼフもオールブルーの食材を求めて天下一品の料理を極めようとするサンジをルフィ一味の料理人として夢を実現するための船出を認めて、見送りました。
"失敗"するも"成功して実現"するも、責任転嫁しないように自らの意志で考え行動して後悔しない生き方を求めて独坐観念しましょう。
茶の湯は、自分と向き合う文化であることを忘れてはなりません。