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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

「ケガレ・ケ・ハレ」:喫茶・茶の湯のもう一つの道-13

「ワンピース」の価値観と人間関係―3

生老病死の憂患の彼方

 喫茶・茶の湯は、主客直心と一期一会の信認関係を基本とします。
 しかし、下剋上、戦国動乱のいつ欺かれるかもわからない相互不信の人間関係が蔓延していた時代に発展した文化なのです。
 今日の不安時代、国家権力や既存の権威は信じられず、組織も信頼できず、専門職の人達、個人的関係も含めて、人の繋がりには儒教的な信頼と信義は見かけだけと言えます。
 医者と患者、先生と学生・生徒、学者や役人・議員の発言、企業の発する情報、口コミ情報も、専門的な人間関係であれ、一般的であれ、情報や知識のアンバランスがあり、落とし穴はどこにでもあります。
 それ故、信認関係(Fiduciary Relation)に信が置けない不安があるのです。
 喫茶・茶の湯は装飾や過剰なものは削ぎ落とすことによって必要不可欠を求めて全てが不完全、不十分であることを認めながら単純化を追求してきました。
 人間関係も直心・一期一会の信認関係の繋がりを求める生老病死の彼方の心です。
 グローバルな人間関係より、個人と個人との信認関係を重要としています。
 「ワンピース」の麦わら一味は反社会的なる海賊集団であり、グローバル基準に反するため、海軍に追われる集団です。
 ルフィを海賊船の船長として、ゾロ、ナミ、ロビン、サンジ、ウソップ、チョッパー、ブルックと一人一人は別々の目標を持っており、それぞれが果たすべき役割があり、協力しあう仲間としての信認関係です。
 決して、いわゆる上下関係、集団規律がある通俗的組織としての結束はしていません。
 一人一人が専門的な役割を果たす個人と個人の信認関係にあるのです。
 しかし、仲間と思う人が危険な場合は命を惜しむことなく助け、「同情だけで命はかけない」としています。
 第1巻ではルフィが子供の頃ボートでさ迷っていた折に怪魚に食べられそうになり、シャンクスと言う海賊の親分が片腕を引きちぎられながら「無事で良かった 腕の一本くらい安いもんだ」と助けました。
 シャンクスのような海賊の船長に何時かなりたいと心から思って、友のためには命をかけるような信認関係を築きながら、それぞれは目標、ゴールを変えることなく不安、恐怖を乗り越える漫画アニメです。
 ルフィがシャンクスからもらった麦わら帽を大切にしている理由です。
 虚飾を削ぎ落とした信認関係は"麦わら帽子"を被って「明けない夜はない」と自由、闊達で悩まない赤裸々な人間関係です。

信天翁喫茶ワールド
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