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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

臨床喫茶学:38

健康寿命&平和寿命を延ばすスキ茶寄合-7-

 「かぐや姫の物語」(高畑勲監督・脚本)が公開されました。
 私は高畑作品が好きです。
 今回も平安時代初期のわが国最古の物語たる「竹取物語」をそのストーリーを変えずに、今日的生き方、死に方を考えさせます。
 高畑作品は、日本画の特長的描法たる清楚な線描減筆法と余白で描き、絵巻の伝統を踏襲していると判ります。
 かぐや姫は竹取翁夫婦に可愛がられて育ち自然の四季を満喫し、村の子供達と心のままに戯れて素朴で自由に育ちました。
 翁は竹から手に入れた黄金で都に出て公家の地位と寝殿造の邸を獲得してかぐや姫を都の雅文化と虚像の世界に連れて行き自分の名誉や欲望を達成しようとします。
 その美貌に身分は高いが虚栄、虚飾にまみれて勘違いしている公家5人、みかどまでが自分の女にしようと近づいてきました。
 かぐや姫は5人の公家には難題をかなえるように求めて諦めさせました。
 しかし、みかどは自分が欲すれば女性は喜ぶものと嫌がるとのカルチャーがありませんから、嫌がってもお構いなく迫りました。
 迫られたかぐや姫は"死にたい"と叫んでしまったため、その瞬間に死の世界。
 月からのお迎えが来ることになってしまいました。
 かぐや姫は虚飾の世界を嫌って自ら庭に育てていた草木をニセモノだと引き抜くシーンで自分が望む生き方を示します。
 本来の自然と心のまゝに興ずる素朴な友達たちと過ごした村に長い髪をなびかせ、白と赤の服装で疾風のごとく急行するシーンが素晴らしい。
 そして、月からの死の世界たるお迎えが来る時には、生の世界たる地球の四季ある自然と人間の名誉、虚栄、欺瞞を含めた一切の生の営みを許す気になります。
 つまり、うごめき、あがく情念のある生の営みは如何に美しく見える死の世界より、素晴らしいと言っていると思います。
 人は人生に試されており、如何なる生き方をするのか選べる自由があるのです。
 かぐや姫の自分が欲する自然の四季と素朴な山村民と素直に生きる生活が素晴らしいと死を前に目覚めたのです。
 月からのお迎えが、美しい音楽を奏でながらの諸尊佛龕であっても地球上の移ろい、情念に揺れる生の世界が素晴らしいのです。
 かぐや姫の悲劇は「人間は生きたいと思う願い」を誰からも奪われないと言う自由がないことです。
 私達は最後まで生きたいと思う誰からも奪われない自由がある人間であるのが素晴らしい!

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