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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

臨床喫茶学:49

和食文化と喫茶・茶の湯―11

 和食文化は四季折々の食材を素朴・繊細に生かした料理法を大切にします。
 醗酵・醸造は自然界の現象を人間が保存法を含めた料理法として発展させたもの。
 現代は農耕、牧畜法の開発によって食材は季節感とは関係なく手に入ります。
 また、食品化学の進歩・開発によって禅僧が工夫していた他の食材料理に似せて作る「擬き」食文化とは異次元の"もどき"食品が出回るようになりました。
 コーヒーについてくる"ミルク"には牛乳が用いられていないことを知っている人は多いと思います。
 最近は、"しょうゆ"は"もどき醤油"で大豆などを醸造することはなく、"マヨネーズ"は卵黄、酢、油を混ぜて作ることはなく、化学成分の混合によっていずれも短時間で安価に作られることが多くなって"もどき食品"が日常生活に入り込んでいます。
 しかし、いろいろな人達に聞いてみますとほとんどが"もどき醤油"、"もどきマヨネーズ"について知っていません。
 最近は、ペットボトルの茶飲料が広く愛用されています。
 こうしたレディーメイドの茶飲料の多くが茶葉からの抽出成分だけで作られている商品は大変稀と言って良いのです。
 主成分たるカテキン類成分やビタミンC、アミノ酸類などは人工的な成分を添加して混ぜ合わせて作られています。
 "梅干し"も伝統法で漬けられることなく短時間で人工的なビタミンC、着色剤や蜂蜜などが加えられて作られています。
 多くの人達が日常生活で、動植物食材などから自分で料理することなく"レディーメイド料理"を中心とした食生活が現実となっています。
 「おにぎり」で言えば、コンビニ、スーパー、デパ地下などでレディーメイドの"おにぎり"を多くの人は食べています。
 自分でご飯を炊いて作った「おにぎり」より"おにぎり"の方が美味しいと感ずるようになっています。
 外国産の古米などを化学成分など多数の添加物を用いて補強して"おいしく"したり、賞味期限を延ばす食品化学の成果が普及しているからです。 
 そうした技術革新によって、人々の味覚は大きく変わりました。
 和食も素材・料理法・食生活スタイルは四季を越えています。

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