文化講座
レッスン32 感情表現 その2 変意語について

ラツィオ州:オスティア アンティーカ
Lazio : Ostia Antica
レッスン32 感情表現 その2 変意語について
A. 変意語について
イタリア語では、名詞、形容詞、副詞の語尾を操作していろいろな意味を持たせます。例えば食卓で使うスプンでも、スープ用のスプーン(cucchiàio)もあり、コーヒー用のスプーンもあり(cucchiaino)、料理に使う大きなスプーン(cucchiaione)もあります。普通サイズのスプーン(cucchiàio)の語尾に接尾辞を付けてその違いを表します。変意語には、「縮小・親愛」「拡大」「軽蔑」を表す語尾があります。
| 名詞の場合: | bàcio(キス) → bacino, bacetto(小さなキス)bacione(大きなキス) pane(パン) → panino(パニーノ)panettone(パネットーネ) |
| 形容詞の場合: | pòvero(みすぼらしい) → poverino(ちょっと可愛そうな)poveràccio(気の毒な人) buono → buonino(まあまあ良い、そこそこ良い、かわいく良い) dolce → dolcino(少し甘い、ほんのり甘い) freddo → freddino(ちょっと寒い) |
| 副詞の場合: | bene(上手く・良く) → benino(なかなか上手く)benone(とても上手く) piano → pianino(もう少しゆっくり、そっと) presto → prestino(少し早めに) tardi → tardino(少し遅めに) poco → pochino(ほんの少し) |
1. 縮小・親愛を表す語尾(-ino/a, -etto/a, -ello/a, -cello, -cino, -uccio/a, -one, -uzzo/a)
| gatto(猫) | → | gattino(かわいい子猫) |
| fratello(兄弟) | → | fratellino(弟) |
| pomodoro(トマト) | → | pomodorini (ミニトマト) |
| lume(灯火・ランプ) | → | lumicino(薄明かり・小さなランプ) |
| fiume(川) | → | fiumicino(小川) |
| pallone(ボール) | → | palloncino(風船) |
| caro(親しい) | → | carina(可愛らしい女の子) |
| spago(紐) | → | spaghetti(スパゲッティ) |
| fiore(花) | → | fioretto(小さな可愛い花) |
| libro(本) | → | libretto(小雑誌・オペラなどの台本) |
| casa(家) | → | casetta(小さな家) |
| sacco(袋) | → | sacchetto(小さい袋) |
| chiesa(教会) | → | chiesetta(小さな可愛い教会) |
| giacca(上着) | → | giacchetta(ジャケット) |
| campana(鐘) | → | campanella(小さな鐘・鈴) |
| forno(オーブン) | → | fornello(レンジ) |
| monte(山) | → | monticello(小さい山) |
| vento(風) | → | venticello(そよ風) |
| viola(楽器のビオラ) | → | violoncello(チェロ) |
| porta(ドアー) | → | porticina(小さなドアー) |
| casa(家) | → | casùccia(可愛らしい家) |
| caldo(暑い) | → | caldùccio(暖かくて気持ちのよい) |
| occhi(目) | → | occhiuzzi(可愛らしい目) |
| zucca(カボチャ) | → | zucchina(ズッキーニ) |
| vecchio(老人) | → | vecchietto(おじいちゃん) |
2. 拡大を表す語尾(-one, -ona, -otto, -ozzo)
| porta(ドアー) | → | portone(門) |
| carta(紙) | → | cartone(厚紙、段ボール紙) |
| sala(広間) | → | salone(大広間) |
| scarpa(靴) | → | scarpone(登山靴) |
| simpàtico(感じの良い) | → | simpaticone(とても感じが良い) |
| sciocco(馬鹿な) | → | scioccone(大馬鹿な) |
| curioso(好奇心を持った) | → | curiosone(大変な好奇心持ち) |
| ragazzo(男の子) | → | ragazzotto(体格のよい男の子) |
| grosso(大きな) | → | grossotto(かなり大きな) |
| basso(低い) | → | bassotto(ずんぐりした) |
| giovane(若い) | → | giovanotto(若者) |
| zucca(カボチャ) | → | zuccotto(ズコット:トスカーナ州のドルチェ) |
| gatto(猫) | → | gattone(大きな猫) |
3. 軽蔑を表す語尾(-accio/a, -astro/a, -onzolo/a, -iciattolo/a, -ucolo/a, -aglia)
| tempo(天候) | → | tempàccio(ひどい天気) |
| cane(犬) | → | cagnàccio(ダメ犬、野良犬) |
| cane(犬) | → | canàglia(ろくでなし) |
| giornata(一日) | → | giornatàccia(嫌な一日) |
| ragazza(女の子) | → | ragazzàccia・ragazzàglia(不良の女の子) |
| figura(姿) | → | figuràccia(みっともない姿) |
| strada(道) | → | strad$00E1ccia(ひどい道) |
| parola(言葉) | → | parolàccia(汚い言葉・卑わいな言葉) |
| libro(本) | → | libràccio(くだらない本) |
| caffè(コーヒー) | → | caffacciò(まずいコーヒー) |
| rosso(赤い) | → | rossàccio(赤茶けた) |
| male(悪い) | → | malàccio(とても悪い) |
| poeta(詩人) | → | poetastro(三文詩人) |
| verde(緑色の) | → | verdastro(汚い緑色の) |
| dolce(甘い) | → | dolciastro(甘ったるい) |
| mèdico(医者) | → | medicònzolo(やぶ医者) |
| uomo(男) | → | omiciàttolo(小さくて醜い男) |
| àlbero(木) | → | albericiàttolo(しょぼい木) |
| paese(田舎) | → | paesiciàttolo(軽蔑をこめ田舎の小さな村) |
| maestro(先生) | → | maestrùcolo(悪い先生) |
| gente(人々) | → | gentàglia(下品な人たち) |
| giallo(黄色) | → | giallògnolo(黄ばんだ) |
| bianco(白い) | → | biancchìccio(白っぽい・やや白い) |
| scrittore(作家) | → | scrittorùcolo(しょぼい作家) |
4. 語尾を見ただけでは変意語と間違えやすい名詞があります。
変異語が固有名詞化して、元の名詞の意味とは異なった使い方をする場合。
| aquilone(凧・ハングライダー) | → | àquila(鷲) |
| bottone(ボタン) | → | botte(樽) |
| bastone(杖、ステッキ) | → | basto(木鞍) |
| burrone(がけ、渓谷) | → | burro(バター) |
| filetto(ヒレ肉) | → | filo(糸、線、コード) |
| lupino(ハウチワ豆) | → | lupo(オオカミ) |
| mattone(煉瓦) | → | matto(狂人) |
| merletto(レース) | → | merlo(黒ツグミ) |
| tacchino(七面鳥) | → | tacco(かかと) |
| ombrello(傘) | → | òmbra(陰) |
B. 名前にも変意語
名前を呼んだりするとき、あだ名(soprannome)などから派生したニックネームや愛称などがよく使われます。イタリアでは名前+変意語(-ino, -etto, -uccio, -oneなど)で愛称を作るのが一般的で、家族・恋人・親しい友人・子どもなどに対してよく使われます。
| Piero | → | Pierino(ピエーロちゃん) |
| Giovanni | → | Gianni / Giannino |
| Maria | → | Mariuccia / Marietta |
| Antonio | → | Tonio / Tonino / Nino |
| Giuseppe | → | Giuseppino / Beppe / Peppino |
| Elena | → | Elenina |
| Luigi | → | Gigi / Gigino |
| Paolo | → | Paolino / Paolone |
| Anna | → | Annina |
| Giulia | → | Giulietta |
1. ボッティチェッリの名前の由来
ルネサンス期の画家サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)の本名はAllesandro di Mariano Filipepiといいます。通称ボッティチェッリと呼ばれています。この呼び名には諸説あるようです。
長男のGiovanniが酒好きで、酒樽(botte)のように太っていたので、その弟だから「小さな酒樽」(botticello)というあだ名で呼ばれ「酒飲みで太った兄弟」のSandroという意味で使われていたという説。もう一つの説は、Filippo Lippiの工房に入る前、兄のAntonioと同じ金銀細工師のBotticelloの工房で修行を積んでいたことから、付けられた名前であったという説です。Botticelliと語尾が男性複数形となっているので、その工房で働いていた人たちと考えることが出来ます。
2. イタリアのパンについて
変意語のなかには、pallone(サッカーボール ← palla)、giacchetta(ジャケット ← giacca)などのように変意語というより、固有名詞となっている名詞もあります。
またpane(パン)も、panino(パニーノ)、panettone(パネットーネ)という固有名詞で、変意語としての意味はあまりありません。
イタリアのパンには、それぞれに名前が付いています。paninoは、pagnotta(丸パン)のなかの一つにpanino(丸形の小さなパン)があります。その他にrosetta(バラ形に割れ目をつけた丸いパン)、michetta(縦に割れ目をつけた丸いパン)、pane toscano(円盤状の大型パン)などがあります。
その他の代表的なパンの名前
grissini(細長い棒状の乾パン)
filone, pastone(バゲット)
pane di segale (di segala)(ライ麦パン)
croissant(クロワッサン)
panone(大きなパンの意味)
pane a(in) cassetta(サンドイッチやトースト用の食パン)
最後に、panettone(パネットーネ)について
日本でもおなじみのパネットーネですが、拡大を表す語尾-oneが付いているので、大きなパンをイメージすると思います。変意語の「大きなパン」は、panoneとなります。パネットーネは固有名詞で、イタリアではクリスマスケーキとしてよく食べます。
さてその名前の由来について、一つの伝説がありますので紹介したいと思います。
クリスマスの前日、ミラノ公爵のLudovicoによる宮廷での祝宴が行われていました。料理長の準備したケーキが焼け焦げてしまい使い物にならなくなってしまいました。厨房で下働きをしていたToniが、ケーキの材料の残りで作ったケーキを出したところ、公爵や客人たちから拍手喝采で受け入れられ、そのケーキを料理人の名前を付けてpane d'Toni(トーニのパン)と命名することとなりました。その時からイタリアでは、「トーニのパン」すなわちパネットーネを食べて祝うこととなりました。

