文化講座
Dr.ビュート流もう一つの栄養情報・・12
メタボ関連因子改善は低炭水化物(低糖質)・カロリー無制限食ダイエットが一番:欧米の糖尿病食事療法
前回は低炭水化物・カロリー無制限食ダイエットは体重減少とメタボ関連因子改善となると述べましたが、糖尿病治療食としても優れた食事療法なのです。
アメリカ糖尿病学会(ADA)が糖尿病治療のために食事療法として系統的なレビューを行って、本年2月にDiabetes Care(35,434~445,2012)に「Macronutrients, Food Groups and Eating Pattern in the Management of Diabetes」として声明を出しました。
低炭水化物(低糖質)・カロリー無制限な食事療法の有効性が公式に認められたのです。
英語で低炭水化物食はlow―carbohydrate diet と表現されます。
炭水化物には速やかに体内カロリー成分となる糖質となり難い植物繊維があります。
植物繊維は消化器内では分解されず大腸の腸内細菌によってゆっくり分解され、カロリー成分としては1グラム当たり4キロカロリーある糖質の半分以下の2キロカロリー以下であり速やかな血糖上昇には役立ちません。
糖質は炭水化物から食物繊維を除いたものを意味しますが、英語では糖質にあたる言葉はなくて炭水化物(carbohydrate)となります。
わが国で糖質とわざわざ言うのは、食物繊維は制限しないとの意味を強調するためです。
わが国では炭水化物(糖質)は善玉で脂質は悪玉とする神話が強く、カロリー摂取比率は炭水化物55%、脂肪20%(20~25%)、蛋白質25%が望ましいとしています。
糖尿病食事療法としても、糖質50~60%、脂肪25%以下、蛋白質15~25%の割合となっています。
糖尿病食にあっても、善玉は糖質、悪玉は脂質とするカロリー制限食が主流です。
ADA声明では低炭水化物(低糖質)・カロリー無制限食がまとめられています。
・血糖や前々回紹介したHbA1cは低下し、Ⅱ型糖尿病にとって改善が重要なインスリン感受性は増す。
・メタボや心血管病の危険因子たるLDLコレステロールは上昇することなく、HDLコレステロール値は上昇し、中性脂肪は低下する改善がある。
・インスリン感受性やメタボ改善につながる、高いことが望ましいアディポネクチンは上昇する。
・糖質とは異なって食物繊維はインスリン感受性を増し、炎症指標であり動脈硬化予防指標でもある高感度CRPを低下させる。
穀物や果物からの食物繊維は糖尿病療法や予防につながることになります。
文明病たる肥満や糖尿病は白米、精製小麦白粉、砂糖の"登場"病なのです。
糖質は善玉、脂質は悪玉とする神話から脱する必要があります。