文化講座
Dr.ビュート流もう一つの栄養情報・・2
死亡率は低コレステロールで高い―1
日本脂質栄養学会(「長寿のためのコレステロールガイドライン」発行)と日本動脈硬化学会(「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」発行)とはコレステロール値をめぐって対立した議論が続いています。
日本動脈硬化学会は心臓病を中心とした動脈硬化性疾患の予防を問題としていますが、一方、日本脂質栄養学会は心臓病、脳卒中、ガンに加えて、感染症などその他の病気を含めた総合的な死亡の危険を問題にしています。
人は動脈硬化だけで死ぬわけではありませんから、その点に、まず、皆さんは注意する必要があります。
加えて、多くの人達はコレステロールやLDL コレステロールは"健康"に悪いとの思い込みをしています。
しかし、日本動脈硬化学会は新しいガイドラインで、課題が多いコレステロール値を検査項目から除いてしまいました。
また、世に悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールはコレステロール代謝にとって必要不可欠な成分で、その内の如何なるLDLコレステロールが悪いのかが未だ良く判っていないのです。
酸化LDLコレステロールが問題だとされてきましたが、実際の診療の場では未だに検査される指標とはなっていません。
最近は、超悪玉LDLコレステロールに注目が集まっていますが、診療の場では検査されていません。
つまり、LDLコレステロールにも"善玉"LDLコレステロールがあり、酸化LDLコレステロールに加えて超悪玉コレステロールなどがあるのです。
しかし、LDLコレステロールをまるごと悪玉コレステロールのレッテルを張って、多くの人達に勘違いを蔓延させてしまっています。
LDLコレステロールが低いことによる危険があるのです。
超悪玉コレステロ-ルは、いわゆるLDLコレステロールより分子が小さく(s:small)て比重は重い(d:dense高比重)ためにsdLDL コレステロールと表示されます。
最近、sdLDLコレステロールはLDLコレステロールに糖が結び付いたものだと判って来ました。
sdLDLコレステロールが出来る過程では酸化反応は関与していないことが判ったのです。
つまり、抗酸化物質(剤)と言われるトコフェロールやカテキンなどのポリフェノールによる酸化反応の抑制では超悪玉コレステロールの生成は抑えられないとなります。
前向き無作為試験などの恣意性が入り難い疫学調査で抗酸化物質の有効性がハッキリしないのは超悪玉コレステロール生成を抑えられないためなのかとマダマダ動脈硬化予防には不明瞭な点が多いのです。