文化講座
心筋梗塞既往と心血管死亡:コレステロール180㎎/dl以下、LDL-コレステロール100㎎/dl以下の危険性・その3
今回は、日本動脈硬化学会による『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007年版』による診断基準を紹介します。
「リスク別脂質管理目標値」と「カテゴリーと管理目標値から見た治療方針」として提示されています。
既に取り上げました(第5回メタボリック症候群とは−3、第11回「高脂血症」改め「脂質異常症」:但し、コレステロール値は除外された)で紹介しましたように、この4月(2007年)に改定されたのです。
病名を「高脂血症」から「脂質異常症」と改めた上に、動脈硬化を代表すると思われてきた「血中コレステロール」値を診断基準から除外した上で、「LDL-コレステロール」値で判定することと変更されました。
以下の如くの診断基準となっています。
・ リスク別脂質管理目標値
カテゴリー | 脂質管理目標値 | ||
主要危険因子の数# | LDL-C# | HDL-C# | TG# |
Ⅰ:低リスク群 0 | <160 | ≧40 | <150 |
Ⅱ:中リスク群 1~2 | <140 | ≧40 | <150 |
Ⅲ:高リスク群 3以上 | <120 | ≧40 | <150 |
冠動脈疾患の既往あり | <100 | ≧40 | <150 |
#LDL-C以外の主要冠危険因子の数、LDL-C(LDL-コレステロール値、㎎/dl)、HDL−C(HDL-コレステロール値、㎎/dl)、TG(中性脂肪、㎎/dl)
#LDL-Cの主要冠危険因子。
- 加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)
- 喫煙、冠動脈疾患の家族
- 低HDL-C血症(<40㎎/dl)
前回紹介しました大櫛陽一グループ基準と同じ動脈硬化症疾患の診断基準であっても、大きな相違があると判ります。
大櫛グループ基準との相違は以下の如くです。
- 「冠動脈疾患の既往あり」の場合、大櫛グループ基準では危険基準とするLDL-Cが100㎎/dl以下にコントロールする基準にあること.
- 大櫛グループ基準では、LDL-Cは、男女別、年齢別による基準値として差がある。
- 一番の相違は大櫛グループ基準ではリスクとは関係なく、LDL-Cは100㎎/dl以下にしない。
血中総コレステロールは180㎎/dl以下にしないこと.
今回の日本動脈硬化学会基準の改定によって明らかになったことは、従来の動脈硬化症のシンボル的価値を占めていると思われていた血中コレステロール値が、削除されてしまったことです。
今や、血中コレステロール値同様、LDL-Cについても、量的問題ではなく、質的問題に注目は変わってしまっていることです。