文化講座
コレステロール180㎎/dl以下、LDL-コレステロール100㎎/dl以下の危険性 その8
『メタボの罠−「病人」にされる健康な人々』(大櫛陽一著、角川SSC新書)からの紹介で続けます。
第六章は「コレステロールは大切な脂質」となっています。
既に紹介しましたが、昨年の4月に、日本動脈硬化学会は、高脂血症の病名を脂質異常症と改名して、その診断基準から悪玉の代表とされてきた総コレステロール値は外されたのです。
次のように紹介されています。
『総コレステロール値が外された本当の理由は「ウソ」を隠しきれなくなったことによるものだ。日本動脈硬化学会は、総コレステロールの基準を220㎎/dlとしてきた。
これにより、健診受信者の中高年女性の5割以上が「高脂血症」という病気にされて、コレステロール低下薬が処方されていた。』
『だが、女性は授乳などのために皮下脂肪が発達し、脂質を貯めて利用する能力が高く、脂質が高くても健康に影響を与えることはない。
欧米では総コレステロールの基準が260~270㎎/dlであり、「女性にコレステロール低下薬は不要(JAMA、291、2243,2004)」としているのに、日本だけが女性を中心にコレステロール低下薬を出していたのだ。』
『日本人の死亡率のトップはガンであるが、コレステロールが少ないとガン死亡率が増加することが知られている。』
つまり、『コレステロールは日本人にとって最も必要な成分の1つだとも言えるのだ。』
脂質異常症では総コレステロールに代わってLDLが取り入れられたのですが、『LDLが入れられた理由は、心疾患の真の悪玉がLDLだとしようとしていることによる。』
『しかし、LDLについての基準は総コレステロールよりひどい基準が設定されており、問題はさらに大きくなっている。』とあります。
総コレステロール値設定の場合と同様に、LDL-コレステロール値設定にあっても、日本動脈硬化学会では、人の死亡について、全体的に考えられていない体質が続いています。
『しかし、総コレステロール値が低くなるほど、ガン、肺炎、不慮の事故(自殺を含む)など、その他の死亡が増える。』のです。
『このようにすべての原因による死亡(総死亡)が報告されないと、誤った判断へ導かれる』
『メタボリックシンドロームについても、心疾患などの特定の疾患のみに言及した報告が多く、要注意である。』
それぞれの学会のご都合ではなく、人の健康や死を全体的、総合的視点からの検討が求められているのです。
つまり、死因は何であれ、人の死についてへの配慮を忘れてはなりません。