文化講座
心筋梗塞既往と心血管死亡:コレステロール180㎎/dl以下、LDL-コレステロール100㎎/dl以下の危険性・その4
今回は、最近(10月30日)に出版されました本『メタボの罠−「病人」にされる健康な人々』(大櫛陽一著、角川SSC新書)について、紹介したいと思います。
厚労省は、2008年度から新しい健診制度として、メタボリックシンドローム(メタボリック症候群.代謝症候群)対策を目標に特定健康・特定保健指導を40~74歳の人を対象にしてスタートさせようとしています。
メタボリック症候群撲滅によって、医療費を2兆円削減しようとの厚労省の計画です。
しかしながら、逆に、医療費が5~6兆円の増加になりかねない危険性があるのです。
次のような理由を挙げています。
今回は、まず、その概略の紹介です。
1:メタボリック症候群の診断基準に問題がある
我が国のメタボリック症候群の診断基準は2006年に日本肥満学会を中心に決められました。
肥満基準が必須項目とされ、腹周囲径によって判定されるのですが、厚労省は、今回の設定基準によれば、40~74歳の男性では約半分の人達が、女性では約20%の人達が、その対象となると予想され、異常者は全国で2000万人近いと推定されているのです。
しかし、肥満基準としての腹周囲径については、同じ日本人に対して、国際糖尿学会は異なった基準を設定しています。
つまり、日本人にどちらの診断基準を用いるかによって、正常、異常が異なる判定となり、今だ、検討すべき課題を必須判断基準としていることなどの問題があるのです。
2:「ちょいメタ」が最も長生き
我が国の死亡率から判断すると、メタボリック症候群基準の正常範囲より、「ちょいメタ」となる条件の方が「長生き」となるのです。
我が国の死亡率はBMI(肥満度)が正常といわれる25以下のみならず、25以上の高い人々より、逆に、男女ともに20以下で上昇するのです。
3:中性脂肪、コレステロールは大切な脂質
4:高血圧、糖尿病は痩せでも発病する
5:タバコ、トランス脂肪などの危険因子規制が進んでいない
6:産官学の癒着の問題
以上のような課題が指摘されています。
今後、もう少し詳しく取り上げたいと思います。