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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

「臨床喫茶学」:「信天翁喫茶入門益荒男が茶の道」(山中直樹著)の勧め-7

平和資本主義の経営者・山田文男―日本の成熟の道

 「良心的暴力・戦力の拒否」は臨床喫茶学の三大キーの一つとしています。
 岡倉天心は1906年にアメリカで著した『The Book of Tea(茶の本)』にある「われわれが文明国たるためには血なまぐさい戦争の名誉に寄らなければならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう」と我が国が「満州の戦場に大々的殺戮を始めてから文明国と呼んでいる」と平和に生きる術を説く喫茶・茶の湯文化に尊厳を置いています。
 その具現化として日本国憲法の前文と九条は日本の文明的成熟を示すものだと思います。
 岡倉天心は非暴力・不服従運動の平和をリードしたガンジーにマハトマ(偉大なる魂)の尊称を贈ったアジア人初のノーベル賞(1913年)に輝いたラビンドラナール・タゴールと親しく交流(1901~2年にインド遊行)しており、天心への追悼を行っています。
 経済活動としても利益の最大化を求める資本主義に代わるソーシャルビジネスによる貧困救済でバングラディシュのノーベル賞受賞者ムハマド・ユヌスもガンジーが行った農村のコミュニティでの協同組合運動によるマイクロファイナンス(小規模融資)に原点があるに相違ありません。
 そうした文化、社会、経済的人類の平和活動の歴史にあって、矢作建設工業株式会社の取締役社長・山田文男が『つちおと』4月号に「日常生活の中でパンと平和の両立を企図する」を発表しました。
 現役バリバリの経営者による「他者の為の平和を作ることを対価として、日々のパンを得ることが可能であるような経済が実現出来れば、それは人類全体の平和にとって最も現実的なアプローチ」として、利益の最大化を求める資本主義に代わる人類平和の価値基準を導入した資本主義を提示したのです。
 バブル経済の破綻、リーマンショックは利益の最大化を価値基準とする資本主義が崩壊することを意味します。
 「バブルが弾け、お客のこなくなったピアニストがもう一度自らの演奏を平和の歌にまで高めようと再スタートするように、企業家も彼なりの平和を歌わなければならない時代となったのである」と企業家が「命の糧」たる「パン」を得るために「平和」を指標とした人間的な資本主義を企業理念とする提言です。
 そして、日本国憲法九条による積極的平和の具体化を求めています。
 今や、『価値観による選択の自由の権利に基づく多様性を認めなかった』ために共産主義のように崩壊する前に、利益の最大化を求める資本主義を転換してソーシャルビジネスによる貧困救済・格差是正と日本のみならず全世界で暴力・戦力・戦争を拒否する平和の価値基準を導入した資本主義が迫られているのです。
 まさに、本物の喫茶・茶の湯者による日本の成熟した生きる術です。

信天翁喫茶ワールド
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