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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

「ケガレ・ケ・ハレ」:喫茶・茶の湯のもう一つの道-15

「ワンピース」の価値観と人間関係―5

風狂・風雅の文化:1

 私は喫茶・茶の湯は人間味あふれる「風狂・風雅」が最も大切な文化だと思っています。
 喫茶・茶の湯は風狂・風雅人の歴史です。
 室町幕府設立期前後のバサラ大名で有名な佐々木道誉、応仁・文明の乱の時代の室町将軍の足利義政、「狂雲集」の一休宗純禅師、わび茶の始祖村田珠光、その珠光からわびの心の原点となっている「心の文」を受け取った奈良近郊の半僧半俗的土豪・豪族の古市播磨法師澄胤、生駒郡の有力支配者の筒井順永などが喫茶・茶の湯の創成期の人達です。
 村田珠光は賤民層より一つ上のすれすれの地位にあって、称名寺から大徳寺へ転じて出家することによって身分的に上がったと伝わります。
 古市、筒井は清濁併せ持つ代表的な人物だったのです。
 古市播磨は高利貸、バクチ打ちの張本人、胴元、暴力団、昼間は悪を取りしまる責任者の官符棟梁で、「まことに以て不足第一比興(ひきょう)の者」で下剋上の象徴的人物だったのです。
 一方で、当時、大部分が無学文盲無知蒙昧の大名や土豪であったのですが、文化、教養を身に付けていました。
 連歌をたしなみ連歌会を開き、達人としての心敬僧都庭訓を贈られるほどでした。
 能では謡も謡い、尺八は上手で、小笠流の馬術の習練に努め、蹴鞠(けまり)の会も催し、幸若舞を楽しみ、豪華な風流や念仏踊りなどを催していたのです。
 絵画、仏像にも関心があり、「淋汗茶湯」と言われる淋汗、つまり、夏風呂を楽しみ、茶の湯と酒宴と風流的な装飾を混合させて催していたのです。
 上は貴族出身、下は郷民の男女、南蛮の帰化人も参加して僧俗数百人が入浴群飲する大衆的熱闘(ねっとう)、オープンな大茶会を催していたのです。
 さらに驚くべきは、本を読める人たちが珍しい時代に茶書一巻を著したとあるのです。
 残念ながら村田珠光が送った「心の文」のように今日に伝わってはいませんが、俗物、ごろつき暴力団、手練手管でもあった古市澄胤の素描は風狂・風雅の代表と言えます。
 古市澄胤と争った筒井尚順や順賢は土豪としては名門だったのですが、悪さは負けず劣らずだったのです。
 筒井氏は徳川時代には伊賀の殿様となり、現代の当代筒井宣政氏は東海メディカルプロダクツ社を創立して30周年を9月1日(2012年)に催し、日本を代表する医療用カテーテルのトップ製造会社となっています。
 創立記念と言っても午前10時から午後1時半まで、ランチョンセミナーをはさんで医療シンポジュウム「日本の最先端医療とこれからの医療産業・育成」では、日本を代表する医師、研究者による講演を名古屋大学総長濱口道成を総括者として心思に開いています。
 続いて愛知県芸術劇場に移って午後3時から5時まで、天才ピアニスト・辻井伸行ピアノリサイタルを「癒しのコンサート」と銘して催しました。
 当代筒井宣政は茶人で茶会を催して自らの点前でもてなします。
 茶は「ワンピース」のルフィの如き純心さと風狂・風雅を併せ持つ茶人の歴史です。

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