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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

「臨床喫茶学」:「信天翁喫茶入門益荒男が茶の道」(山中直樹著)の勧め―1

臨床喫茶学とは

喫茶は中国唐代の喫茶の元祖・陸羽著(760年頃)による「茶経」以来、既に、単に喉の渇きを癒すだけの飲み物ではなく、頭痛、疲労解消、うっとうしい時や手足の具合が悪い時などに薬としての効用(身体的効用)のみならず、自己の修養、志気の向上、情緒の安定などと精行倹徳としての有益性《心理的、精神(心霊)的、社会的》を説いています(「茶聖陸羽」成田重行著)。

つまり、喫茶はWHO(世界保健機関)の言う健康の身体的、心理的、精神的(心霊的)、社会的に良好な状態を意味する役割を内包していることになるのです。
我が国にあっても、喫茶・茶の湯は身体的健康・栄養、修行、儀礼、娯楽・遊興・遊芸・社会、芸術や平和な生き方を学ぶ人間的な絆・連帯に加えて、自然・宇宙との絆・共鳴も求めた生活総合文化として発展しました。

一方で、能や連歌などと共に中世に花咲いた我が国のグローカル(地域性ある地球的視野)文化たる風雅・閑寂な喫茶・茶の湯文化は会所、茶室、茶の間や床の間などと家族や人々が集って団欒し易い住居環境から、近年は個室化した生活住環境への変化となり、マスメディア、ITによる情報の介入が著しくなったクロスカップリングな触媒による人間関係が生活様式や社会環境に大きな影響を与えています。
そうした時代に、人の生き方や交流・おもてなし文化である喫茶・茶の湯の日常茶飯での役割は大切さを増しており、実践的な臨床喫茶学を発展させる必要があると思います。

「臨床喫茶学」と名付けたのは、大阪大学総長の哲学者・鷲見清一が「臨床哲学」と称した哲学の「社会・学」として具体的に今起きていることを考察する日常茶飯の哲学の復権を実践されている努力に賛同、習っての命名です(『大澤真幸THINKING「0」六号』特集「生きることを哲学する」)。

私は時代の変転が目まぐるしい不安の時代の今日では、まさに、具体的に日常茶飯な実践すべき喫茶・茶の湯を考えるための「臨床喫茶学」が求められていると思うからの命名です。

信天翁喫茶ワールド
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