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信天翁喫茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

「臨床喫茶学」:「信天翁喫茶入門益荒男が茶の道」(山中直樹著)の勧め-4

 臨床喫茶学の原点たる信天翁喫茶を考える上で、私は鶴見俊輔「限界芸術論」(筑紫書房、1999年)にある「芸術は専門的芸術家による純粋芸術に対して、俗悪なもの、非芸術的なもの、ニセモノ、芸術と考えられる製作過程が企業家と専門芸術家による合作の形を取る大衆芸術よりもさらに広大な領域で芸術と生活との境界線にある非専門的芸術家によって作られる限界芸術(Marginal Art)がある」を大切にしています。

 昨年は3月に「思い出袋」(岩波書店)、12月には、「かくれ佛教」(ダイヤモンド社)を上梓されました。
 今日にあって大切な生き方の提言です。
 年の瀬にNHKテレビ番組で再放映された今は亡き小田実ともどもハーバード大学卒の日本の知性だと尊敬しています。

 私は喫茶、茶の湯の発展史で忘れてならないのは市聖・空也、西大寺律僧・叡尊、狂雲・一休宗純と流れる施茶、施粥、儲茶、淡食麁茶を介しての生活弱者への優しい眼差しです。
 加えて、現代の人道家・中村哲に伝わる奈良時代の行基、江戸時代の良寛、中国禅僧・六租慧能、インド独立の父・マハトマ ガンジーの考え方や行動を肝に銘じています。
 そうした人達を鶴見俊輔は「かくれ佛教」で高く評価して記述しています。
 そして、忘れてならないのは喫茶・茶の湯文化が世俗の権力や武力とは無縁な自由と平和、相手の如何を問わず一切平等に救う慈悲心、自由な一味同心の理想郷思考にあるのは日本の中世の無縁、公界(クカイ)、楽の自由な遍歴者による活躍があったからです(網野善彦著「無縁・公界・楽」平凡社)。

 私は、この年末年始に、不安と不信の時代にキーとなる箴言を新たにしました。
 鶴見俊輔「かくれ佛教」の教えから、私は寂滅為楽迷人となり、次の箴言とします。

・Misplaced Objectivity:「客観性の誤用」
 自分が入っているとどうなるかを基本とする発言と行動。

・Unlearning:「学びほどく」
 ねばならないにこだわらない。

信天翁喫茶ワールド
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