文化講座
花火の色

「わぁ、きれい!」これが花火の感動の原点であり、楽しみの全てといっても過言ではないでしょう。
ご存じのように花火は火薬で作られています。現在ではその殆どは化学合成による化学薬品です。花火は夜空で化合物の燃焼が行われているものです。ところがもし花火が、火薬の燃焼つまり化学現象によって生まれる単純な爆発音や閃光だけのものなら、最初はびっくりしても、人の心に感動を残すことは無かったでしょう。花火が人を感動させるのは、音や光の強さだけでなく、「美しさ」を同時にもっていたからです。美の追求に花火師が没頭してきた結果、日本の花火は比類無き「美しさ」を手にしました。火薬が燃焼するだけの化学反応から芸術になったのです。
歴史的には、江戸時代に将軍吉宗が、疫病などで亡くなった人の慰霊と悪霊の退散を願って「両国川開き」を始め、その時に花火をあげたのがきっかけと言われます。
また、花火は本来、迎え火や送り火など魂や霊を供養するものなので、お盆を中心に夏に行われる習慣があるのです。
花火の様々な色はどのように生まれるのでしょうか?化学の時間にやった「炎色反応」という実験を覚えていますか?ある元素を含む化合物を燃やすとその元素固有の様々な色の炎を出して燃えるというものです。ガスバーナーの中に色々な金属化合物をかざして実験したと思います。花火の色はこの炎色反応を利用しているのです。

最近ではこれらに加え、マグネシウム等も使われて星の色はより明るくなる傾向にあります。またこれらの混合によって、かつては難しかったピンクや紫、水色やレモン色といった微妙な中間色も次々に実現されています。
夜空に輝く光の華の祭典、花火大会。毎年、浴衣を着て出掛けたいものです。
金属の炎色反応

写真提供:東京都立小岩高等学校 教諭 中條 敏明

写真提供:東京都立小岩高等学校 教諭 中條 敏明