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インターネット公開文化講座

文化講座

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カラーコーディネーターに聞く色の活用術

栄中日文化センター講師
竹内 ゆい子

民族と色彩

世界には200以上の国がありますが、それぞれの国の国旗には、その国の歴史や思想、環境などが詰まっています。たとえば、国旗に「赤」を使用している国は、赤が尊重される色とされています。日本の国旗「日の丸」の赤は、"朝日"を象徴していますが、同じアジアでも中国、北朝鮮、ベトナム、カンボジアなどの赤は、共産主義やその勝利を表しています。また、インドネシアとフィリピンの赤は、独立戦争の勇気の象徴です。ベトナムや中国の国旗にある星型の黄色は仏教や儒教世界では最も高貴な色とされています。映画「ラスト・エンペラー」の中で、最後の皇帝、愛新覚羅薄儀がまだ幼い頃、黄色の服を着た弟に向かって、「中国には二人の皇帝がいる。この黄色の服を着られるのは私だけだ!」と叫ぶシーンがあります。中国では黄色は皇帝のシンボルカラーなのです。中国大陸を悠々と流れる河は黄河で、地下泉を黄泉といいます。黄金につながり、太陽の色ともいえる黄色は、中国にとって最高の色というわけです。
一 方、ヨーロッパでは黄色が屈辱の色とされてきた歴史があります。中世では、乞食、売春婦、道化師の衣服の色とし、貴族は身につけるのを嫌がったといいます。また、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害のシンボルとしての黄色い星が忌まわしい事実として蘇ってきます。ヨーロッパで黄色が嫌われるのは、キリストを裏切ったユダが黄色の衣服を着ていたからだといわれています。ヨーロッパの国旗には、トリコロール(三色配色)が多く見られます。
フランス国旗の青、白、赤、はそれぞれ自由、平等、博愛を意味し、自由を求めるフランス革命の象徴です。イタリアン・トリコロールは緑、白、赤で、美しい領土、正義、愛国心を象徴しています。イタリア料理といえばピッツァがあげられます。ピッツァマルガリータは、バジルの葉、モッツァレアチーズ、トマトで国旗の3色を表現している、愛国心あふれた料理なのです。
ヨーロッパでは一般的に白や青が高貴な色とされています。カトリック教会最高司教であるローマ法王の礼装用の正式法衣は白。またイギリス王室の色はロイヤルブルーです。これは、イギリスが海洋国家であり、7つの海を支配したことから海の色「青」を王室の色と定めたといわれています。王家や貴族の血統のことを英語ではブルー・ブラッド(青い血)いいます。
私たちは自由に色彩をコーディネートできる時代に生きていますが、かつて色は社会階級を表すものであったり、権威の象徴であったりしたので、使用を制限されてきました。また、民族によって全く異なる意味を持っていますので、色々な国の歴史や文化を通して色を見てみると大変興味深いものがあります。
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