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シリーズ 骨董をもう少し深く楽しみましょう

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

縄文の魅力(合計4回)

 縄文土器は日本が世界に誇りうる世界最古の土器です。どのくらい古いかというと、教科書的な通説ではいまから13000年をさかのぼる時代、紀元前11000年頃に始まり、紀元前800年頃に弥生土器に取って変わられ、衰退したと考えられてます。

 年代測定の方法は、放射性炭素C14測定法によります。若干の誤差はありますが、現在測定しうる最も正確な測定方法とされています。これは土器などに付着するカーボンを採取して、それを測定器にかける訳ですが、放射性炭素C14は、約5,730年の半減期で減じていく性質をもっているため、これを利用して年代を推定することができます。

 日本で最初に測定されたのは、1950年・1955年に調査された夏島貝塚の縄文時代早期の層から出土したカキ殻と木炭でした。この測定の結果、縄文時代早期として9500年前という年代がはじめて示され、縄文土器が世界最古の土器文化である可能性が指摘される一方、それがエジプトやメソポタミア、インダス、黄河文明という世界の4大文明の発祥年代を上回る年代であったことが日本の考古学者の多くを驚愕させました。

 また、弥生時代の開始期は通説では紀元前5~紀元前4世紀ごろでしたが、2003年3月の国立歴史民俗博物館の発表では約500年古い約3000年前(紀元前10世紀終頃、つまり、九州北部の弥生時代早期が前949年~915年から、前期が前810年頃から、中期が前350年頃から、それぞれ始まった。)にさかのぼる結果が出ました。

 このように測定する対象によって測定結果が若干ずれることがありますが、日本の縄文土器は現代の最先端技術によって、ほぼ間違いなく世界最古の焼き物であることが立証されてきています。

 さて、今回のテーマである「縄文の魅力」とは何でしょうか。洋画家の岡本太郎は、縄文土器の美しさを最初に発見して、非常に高く評価しました。その土器の持つ原始的なエネルギーの力強さ、また腹の底から突き上げてくるような、圧倒される造形の数々。その原動力は何か?これから4回にわたり、縄文の魅力と縄文人の生活のベースを形成した土器の成立と展開、その文様の変遷を追って考えてゆきたいと思います。

 現在、縄文研究の第一人者とされる國學院大學の小林達雄教授とお話しする機会がありましたが、その折りに縄文土器は全て使われたことを力説されていました。どのような優れた造形の土器でも、たとえどのように図柄が躍動していても、芸術品として見たり、飾ったり、宗教的対象として礼拝したことは全くなかったということでした。全てが使われた、すなはち全ての土器にカーボンが付着しており、それはまさに実用に供されていたということの証になります。

 また土偶という女性を象徴させるような土でできた人形があります。これらは一体何の為に作られたのか、検証してみたいと思います。


伝群馬県吾妻町出土 ハート形土偶頭部 縄文後期

縄文土器 なぜ縄目を刷り込んだのか(次回をお楽しみに)

縄文土器の鑑定方法

 まず本論に入る前に、知っておいてもらいたいのが縄文土器の鑑定方法です。各地で開催される露店の骨董市に行きますと、縄文土器の破片が沢山安く売られています。それらの破片に面白い文様や珍しい図柄を見つけたら購入して楽しんでみると興味が出るでしょう。これらの破片が本物かそうでないかは、破片を水で濡らすと土臭い強い匂いがしたら本物の作品と思っていいでしょう。乾燥した状態では臭いはしません。水に濡らすとすごい土臭がする。鑑定法は極めて簡単。この方法が一番確かです。何千年も土の中に埋まっていた土器は、本体に土の成分がしみこみ、水に濡らすと土臭がすごい。新しく焼かれた贋物の土器に水をつけても土臭はしません。これも是非試してみてください。

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