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インターネット公開文化講座

文化講座

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シリーズ 骨董をもう少し深く楽しみましょう

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

イギリスのアンティーク事情
アンティーク・マーケットとショップを歩く

今回から切り口をかえまして、西洋と西洋古代の美術、日本の美術のおもしろさという観点からお話しできればと考えております。
私は昔から外国旅行が好きで、いろいろな国に出かけるようにしています。それは逆に外国の人々の生活や美術品を見る事によって、日本人の生活の特徴や美術の特質がわかるからでもあります。
アンティークという観点から見ますと、フランスのクリニアンクール・アンティークマーケットもとてもおもしろいのですが、私はイギリスのアンティークマーケットの方が好きです。言葉の問題もあるかもしれませんが、イギリスではほぼ毎日ロンドン市内で骨董市が開催されているということが魅力なのかもしれません。また郊外に少し足を伸ばせば、とてもすばらしい街がたくさんあります。
なだらかな傾斜の美しい山や野原を川が流れる様は、まさにピーターラビットの世界です。自然を愛し、保護しているイギリスならではの美しい光景です。
そんなイギリス人が愛するのが骨董(アンティーク)です。世界広しといえど,ほぼ毎日どこかで骨董市を開催している国はないと思います。それだけイギリス人は骨董が好きだとも言えるのではないでしょうか。

左の大きなスプーンは1787年のエドワード時代のもの
真ん中下のキャディスプーンは1786年のもの いずれもジョージアン様式
ゴルフの発祥の地、セントアンドリュースの記念シルバースプーン 1928年製

ここで主なロンドンで開催される骨董市をご紹介してみましょう。

1 ポートベロー・アンティーク・マーケット 毎週土曜日 地下鉄ノッティング・ヒル・ゲート駅下車徒歩8分
ザ・骨董市とも言うべきイギリスを代表するマーケット。
ノッティング・ヒル・ゲート駅から人波について行けば、ポートベローに着くと言われるくらいにこの骨董市に向かう人たちが多い。ここは何でもありの世界です。
店舗数も2000軒を超えるとも言われており、フランスのクリニアンクールに匹敵する骨董市です。大半が露天ではなく店舗形式で、言ってみれば街全体が骨董店という感じ。
おしゃれな飲食店やファッション・ブティックが多くなり始めている街です。ハンバーガーやソーセージ、サンドイッチなどが路上で売っており、疲れたらそれらを食べながら一休み。やはりイギリスに来たら、歴史ある銀器でしょう。ウエッジウッドの古いカップ&ソーサーもおもしろいのですが、私はここでは主にエジプトやメソポタミアの美術、そして17世紀から19世紀の銀器がお目当てです。それらを求めながら、膨大な品々を見て回ると、あっという間に一日が終わってしまいます。一日では回りきれません。大きな市なのでスリが有名です。ご用心ください。

2 アルフィーズ・アンティーク・マーケット 火曜日から土曜日 地下鉄ベーカー・ストリート駅から徒歩10分 ここは露天の市ではなく、200軒が集まる倉庫のような場所。実に雑多でおもしろい。私は古い絵画やアールデコの作品をここに探しに行きます。
独特の雰囲気。細かい女性の装飾品もたくさんあるので、女性も十分楽しめます。地下鉄駅からこの建物まで雑貨や果物店、飲食店が並び人種も様々でロンドンの一つの顔を見せている。

3 バーモンジー・アンティーク・マーケット 毎週金曜日 地下鉄ボロー駅、ならびにロンドンブリッジ駅から徒歩15分
一つの区画にびっしり露天の骨董商が出ているすごくおもしろい市。イギリス中から骨董商が集まり、活気がある骨董市。すばらしい味わいの古いダンヒルのたばこケースやガラス、陶磁器、ジュエリーなどさまざまな骨董品がひしめいている。銀も専門店が出ていて、ティーサーバーなどのコレクションが安くてすばらしい。以前はトイレがなく悲惨であったが、最近は新しいトイレができて安心。

4 コベント・ガーデン・アンティーク・マーケット(ジュビリー&アップル・マーケット) 毎週月曜日  地下鉄コベントガーデン駅徒歩5分
とても古くて落ち着いていて、モダンな街で、若者のファッションや昔からある紅茶の店がとてもいろいろな種類のおいしいお茶を売っていてうれしい。300年を超える歴史を秘めたこのマーケットでは、特に銀器がたくさんありわくわくします。古カメラやジュエリー、銀器、食器類、雑貨品などにおもしろいものがあります。是非訪ねてほしい骨董市です。

5 キャムデン・パッセージ・アンティーク・マーケット 毎週水曜日と土曜日 地下鉄エンジェル駅下車3分
この街はセンスの良い街で、フランスのカフェテラス風の店が並んで、独特のいい雰囲気です。店は露天もありで、こじんまりとした街がアンティークショップそのものという感じです。細い路地が入り組み、骨董の奥深く入り込むという感じがいいです。他では見ない古いオルゴールの専門店があり、マニア必見の場所です。キルトや布地も売っている店もあります。私の見たところでは、ビクトリア朝のガラスにいいコレクションがあり、値段も高くないので楽しめます。日本から明治時代に輸出された磁器や工芸品が見られる店も結構あります。

6 グレイズ・アンティーク・マーケット 月曜日から金曜日 地下鉄ボンドストリート駅から徒歩1分、駅からすぐ。ロンドン市内では大きなインドア・マーケット。150軒くらいは出店してます。
露天が雨で中止であったりした場合はこのグレイズ・アンティーク・マーケットが最適です。ここのおもしろいのはジュエリー、最高級品というものではなく、比較的日常に使えるジュエリーが並んでいます。
また古代エジプトやギリシャの美術品を扱う店もかなりあり、時間のたつのを忘れる程です。ドイツ、イギリスの軍装品なども多く、

7 アンティクオリアス・アンティーク・マーケット 月曜日から土曜日 地下鉄スローン・スクエア駅徒歩13分
ここも露天が雨で中止の時に訪れるといいマーケット。高級感のある店で、120軒ほどが出店。時計、貴金属、ジュエリーが中心であるが、おもしろいには古い旅行バッグ店。ここにはアンティークの革カバンがいっぱい。
男の個性あふれるカバンがひしめいている。自分だけのイギリスのアンティークカバンを持って旅行したら人の目をひくこと請けあいです。大切に使い込まれた革は味わいがいいですね。

もちろんこの他にアンティークマニア必見の場所はビクトリア&アルバート美術館です。地下鉄サウス・ケンジントン徒歩5分。 ここはジュエリー愛好家必見の博物館です。ビクトリア女王が身につけたジュエリーのすばらしさに圧倒されます。
また工芸品、たとえば陶磁器の歴史をたどれる膨大な資料がここにはあります。また大英博物館(トッテナム・コート・ロード駅下車徒歩8分)ももちろん必見の博物館です。
ロンドンのアンティークをめぐる旅では最低8日間は必要ですが、一番大きなポートベロー・アンティーク・マーケット 毎週土曜日だけでも観ていただければイギリスアンティークのおもしろさがご理解できると思います。

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