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知って得するお茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

二十一世紀と茶の湯

IT技術、遺伝子・クローン技術などのバイオ技術、原子や分子一個一個のレベルで操作が可能となるナノ(超微細)技術が私達の日常的な生活の場に入って来る。
その進歩を人類が享受出来るために、茶の湯は心霊的に重要な意味を持つ。

 私事になるが、第十五代裏千家家元より十二月末に二十世紀最後の教授許状を認められた。ただ単なる自慢事として、この事実をお話するのではない。茶の湯は我が国の伝統的家元制の中で一般的には大変古い体質を持つと思われている。しかし、当代家元の思考、指導には、我が国の打ち破るべき形骸化した閉鎖的、非弾力的社会にあって、アメリカ社会が内包するような基準を定めながら動的で、前衛性、創造性があると私には感ぜられる。
つまり、閉塞感が覆う日本社会にあって、二十一世紀に必要な体質があると言うことだ。そうでなければ、私に教授許状などは考えられない。
当然金品は関係ない。考えて見れば、侘・寂の茶の湯を前衛的に完成した利休からの伝統的な体質が今もって続いていると思えば、それが伝統なのかもと言える。

 一方で、現実の茶の湯の世界では世俗的な習俗が少なからず支配しているとも感ぜられる。道具の世界での贋物の横行と拝金主義。 単なる書画、骨董界とどこに相違があるのかと思えて来る。虚礼、欲得的な人間関係は我が国の人間関係の縮図でもある。こうした習俗は歴史的に見れば何時の時代でも存在する人間社会の業か。

 しかし、茶の湯は、本来、風雪に耐えられる伝統を蓄積した上での創造的な総合生活文化、コミュニケーション文化であることを忘れてはいけない。
骨董趣味的であるより、求道的な心霊を持つ。加えて、一人一人の創造的な価値観を尊重した文化なのだ。

 前述の科学技術の社会的な導入はその過程と基準が重要だ。原子力エネルギー利用と同様な地球レベルの幸福と危険の両面性を持つからだ。
それ故に、茶の湯の心霊性、基準性、創造性は極めて重要な意味を増す。

 茶の湯は釈迦の「我意我執を忘れ」、キリストの「愛と許し」の心霊を俗悪な習俗を払う不二元の世界として内包する。本来、茶の湯からはその心霊を学ぶことが出来るし、求められている。
人類が科学技術の進歩を享受するために、我が国の人類文明的な文化として一人一人が体現しなければならない。

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