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知って得するお茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

岡倉天心と茶(Ⅱ)

天心は東洋思想の大切さを説いた為に、戦前の大東亜共栄圏思想に悪用されたりもした。しかし、「文明的人類の和と不戦」「戦争の名誉によらない芸術及び思想に尊厳が求められる時期」が来ることを予言した。

「茶の本」(村岡博訳・岩波書店)に次のようだ。「西洋人は、日本が平和な文芸にふけっていた間は、野蛮国と見なしていたものである。しかるに、満州の戦場に大々的殺戮を行い始めてから文明国と呼んでいる」

「近頃武士道−わが兵士に喜び勇んで身を捨てさせる死の術−について盛んに論評されてきた。しかし、茶道には殆ど注意がひかれてい ない。この道はわが生の術を多く説いているものであるが、もし、われわれが文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなけ ればならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう。われわれは、わが芸術及び理想に対して、しかるべき尊敬が払われ る時期がくるのを喜んで待とう」

「この人生という、愚かな苦労の波の騒がしい海の上の生活を、適当に律していく道を知らない人々は、外観は幸福に、安じているように努めながらも、そのかいもなく絶えず悲惨な状態にいる。われわれは、心の安定を保とうとしてはよろめき、水平線上に浮かぶ雲にこ とごとく暴風雨の前兆を見る。しかしながら、永遠に向かって押し寄せる波濤のうねりの中に、喜びと美しさが存在している。なぜにそ の心をくまないのであるか」とある。

そして、千利休の真髄について「利休は媚びへつらう佞人(ねいじん)ではなかったから、恐ろしい彼の後援者(秀吉のこと)と議論して、しばしば意見を異にすることをもはばからなかった」と記している。

今日の我々が置かれている状況は国内社会にはびこる閉鎖体質での偽善が表面を装おう習欲や俗でいっぱいだ。洋の東西・南北、エスニック・宗教的問題が愚かな殺戮を起こしている。

人間社会故の普遍的な文明基準、科学技術的な発見と自然の節理を見定めながら、考える時を与えるのが茶の湯なのだ。しかも、日常茶飯の中で、そのことを考え、実行していることが大切なのだ。

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