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インターネット公開文化講座

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知って得するお茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

お茶とイエズス会宣教師ロドリーゲス

16世紀後半から17世紀初期にかけて我が国に滞在したキリスト教宣教師ジョアン・ロドリーゲスは「日本教会史」(大航海時代叢書、岩波書店1967年訳本)を著している。信長、秀吉、家康の時代だ。茶の効能、利得について6項目を上げているが飲む習慣や客人をもてなす礼法、精神性についても詳しい観察をしている。イエズス会の地域研究資料の一環としてまとめられたものだが当時を知る上で興味深い。

お茶の6項目について今日的解釈を行って紹介する。

第一、
食物の消化を助け食べ過ぎによる胸のつかえを楽にする。胃を丈夫にする。

第二、
眠気、頭痛、二日酔いを抑える。夜に勉強、仕事をするのによい。

第三、
解熱鎮痛作用、強心作用がある。上等なものは香りが大いに活力を与える−今日のアロマ作用。

第四、
利尿作用がある。ヨーロッパやその他の地方のような疫病が少ない。食事の終わりには必ず茶を飲んで、水を飲む時のように胃を狂わさない。つまり、食中毒などの疫病予防になることを指摘している。

第五、
多量の尿を排泄させて余剰物や病原物質を体内から排泄するため結石病や尿淋瀝(りんれき)によい。

第六、
禁欲と節制によい。

西欧的な見方で興味深い。中国の「茶経」や「本草綱目」、我が国の「喫茶養生記」などを参考にしたり、読んでいるのか判らないがかなり具体的に整理されている。利尿強心作用、沈痛作用、殺菌作用、アロマ作用等今日に通用する。

※イエズス会:プロテスタントに対抗し、カトリックの発展を図り、1540年にローマ教皇の公認を得た男子修道会。東洋布教に力を入れ、特にフランシスコ・ザビエルは有名。
※淋瀝:したたるさま

禁欲と節制作用については議論のあるところだ。茶の礼法、精神性に関連して「茶の道」について言及している。そこでは外面的行動における礼法、作法、謙譲、自制、謙虚さ、身辺の安らぎ、静けさに注目して、礼儀正しく、一定の規律と清浄さと淡泊さに感心をしている。それが禁欲と節制作用があると解釈されたのか、はたまた、お茶の成分に化学物質として、そうした作用があるのか要研究である。しかし、「喫茶養生記」にある「寿命を延ばす妙術」については何も言及していない。

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