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知って得するお茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

お茶は癌予防に有効と言われるが

お茶が癌予防に有効と日常茶飯の話題。乾燥茶葉の30%は抗酸化物質のポリフェノール、特にカテキン類から成る。はるか赤ワイン以上に多量で各種を含む。実際の人での有効性を最新の報告から検討してみよう。

世界中で一人当たりのお茶消費量が一番多いのはアイルランドと英国でイタリアの30倍になる。日本はイタリアの10倍ぐらい飲む。しかし、10万人当たり の癌死亡数は、各国とも殆ど同じようなもの。つまり、お茶を沢山飲む国で癌死が少ないことはない。お茶が胃、食道、大腸、肺癌予防に良いという報告もある が、逆に増えるとの結果もあり、一致を見ていない。緑茶が大腸癌予防に良いとの報告が注目される。お茶が閉経後婦人の消化器、泌尿器系の癌予防に良い、紅 茶を野菜や果物と一緒に飲む人は乳癌、大腸癌を30~40%減らすとの報告もある。我が国は胃癌が世界一多い国だからあまりお茶が予防に効いていると言え るか疑問。

最近の論文では、現在のところ癌危険性の高い人達がお茶を沢山飲むのは良いかも知れないとまとめている。

注意すべきは:
(1)動物実験で良かったからと言って人でもよいか別の話。
(2)人レベルの報告では、生活習慣、例えば、タバコ、アルコール、脂肪分、野菜、果物などの摂取についてまで検討した報告でなければあまり信じてはいけない。
(3)我が国の実態は、まだ、信頼できる大規模栄養介入試験が行えていない。
(4)国際的には紅茶の報告が多く、緑茶については不十分な状況にある。抹茶は粉ごと飲むため脂溶性の抗酸化物質であるビタミンE、ベーターカロチンなどまで摂取できる。それ故に抹茶の有効性が一番期待される。

現状での結論は以下。

お茶飲用者は健康的なライフスタイルの人が多い。つまり、ゆとりを持ったお茶を含めた食事内容と様式、運動習慣がよい。禁煙、アルコールも適量。言ってみ れば、お茶、赤ワインやその成分がよいと言って、高いお金を出してただ沢山摂取すれば効果が出るほど話は単純でない。

参考資料
1) 山中宗直「お茶健康記」淡交社、1998.
2) J.H. Weisburger, Cancer Res., 58, 9月号 Cover Legend,1998.

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