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知って得するお茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

岡倉天心と茶(Ⅰ)

日本画で大和絵の流れを受け継ぐ「院展」は天心が創始者。愛知県には「隠れキリシタン」と白描の画伯・小山硬がいる。私の「お茶健康記」の表紙絵「南蛮茶碗」は画伯の絵。天心は、今日の東京芸大の前身、東京美術学校の初代でもある。ボストン美術館顧問も務めた。明治期の日本文化軽視の時代に、フェノロサと共に全国の仏教美術など日本の文化財を調査したことでも知られる。優れた文化財、芸術品の海外流出を防いだ功績もある。インドや米国などの外国を訪れて、西欧的な文化や思想も知っていた。それだけに、より強く日本や東洋を意識するようになり、一読に値する東洋思想に関する著作物が多い。

茶についても岡倉覚三の名で「The Book of Tea」(茶の本)を米国で英語本として出版した。最近でも日本語訳が次々に各種出ている程の名著である。日本の美、芸術、人間性、平和思想を茶の湯に見出したのだ。茶の湯でよく言われる「わび」の思想は「不完全なるもの」を良しとする考えだとは天心がこの本で述べていること。今日で言う「負の思想」だ。西欧の合理思想から発する「完全なるもの」を求める「正の思想」に対比される。但し、「不完全性」の思想は、ただ単に、「好い加減」を良しとするのではない。他力本願思想と共に今日よく取り違えられる所だ。完全性を越える不完全性を求めるものだ。例をあげれば、「月は満月が良い」というのに対して、「雲間の月や欠ける月を美しい」とする感性。負の思想は、今日、私達が地球上で平和に過ごすためには不可欠の考えだ。地球環境資源の問題にあっては、資源やエネルギーを使用することばかりでは成り立たない。原子力やゴミ問題もそうだ。遺伝子やクローン技術も利用の仕方が問題となる。

天心は茶の湯にある「主客一体」の関係に含まれている人間の生き方の尊さを説いている。しかし、「主客一体」の思想は、単に仲間内の人間関係だけを正当化するものであってはならない。我が国によくある閉鎖集団の御都合であってはならないのだ。特に、まだ一会もない人々のことを常に忘れてはいけない。

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