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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ヴェネツィアとその干潟 その2 (Venezia e la sua laguna) 1987年登録

その2 カステッロ区:
サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会(Santi Giovanni e Paolo)
サン・マルコ大信徒会館(Scuola Grande di San Marco)


スケッチ 樋口佳代

 ヴェネツィアの町は6つの地区に分かれています。鉄道のサンタ・ルチア駅やバスターミナルのローマ広場があるサンタ・クローチェ区、更に北西にカンナレージョ区が延びています。本土とヴェネツィアを繋ぐ鉄道橋が建設されるまでは、大変賑わっていた地区でした。過疎化の進むヴェネツィアの町ですが、人口の約3分の1がこの地区に集中しています。ヴェネツィアの南玄関でジュデッカ島までを含むドルソドゥーロ区(「堅い骨」という意味で脊椎を連想します)、ここにはアカデミア美術館やサンタ・マリア・デルラ ・サルーテ教会などがあります。かつて栄華を誇ったヴェネツィアの玄関口でサン・マルコ大聖堂やドゥカーレ宮殿があるサン・マルコ区、大運河(Canal Grande)の広い湾曲部にすっぽりとおさまったサン・ポーロ区、ここはリアルト橋やフラーリ教会など観光名所が集中しているところで大変活気があり賑わっている地区です。そして今回案内するカステッロ区は、リアルト橋から東側にあたり、地図で見ると魚の形をしたヴェネツィアの、ちょうど尾っぽの部分にあたります。カステッロ(城塞)という名前が付けられたのは、ローマ時代に、サン・ピエトロ島に城塞がつくられたことから区名となったようです。13世紀初めに、造船所がつくられ、この地区の発展に大きく貢献しました。
 時のヴェネツィアの第41代総督であったヤコポ・ティエポロが見た夢のなかで「湿地帯に見事な花が咲き誇り、その上を額に黄金の十字架をつけた白い鳩が飛んできて、ここが選ばれた土地である」という神託を受けます。そしてその場所に教会を建てるようドメニコ修道会に許可が出されました。1246年から1430年にかけてゴシック様式の荘厳なサンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会が建設されました。

■サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会(Basilica dei Santi Giovanni e Paolo スケッチ画)
 この教会の前にはL字型をした広い広場があり、そこにはヴェッロッキオの騎馬像が建っています。これはヴェネツィア共和国に忠誠を尽くしたベルガモ出身の傭兵隊長バルトロメオ・コッレオーニの騎馬像で、ヴェッロッキオ(Andrea del Verrocchio)によるものです。隣国のパドヴァの聖アントニオ教会の前に立つドナテッロの「ガッタメラータ将軍」の騎馬像と並ぶ、ルネサンス時代の騎馬像の双璧といえるでしょう。
 教会に隣接するように建っているのがサン・マルコ大信徒会(Scuola Grande di San Marco)の建物、優雅で洗練されたファサード、そして1階壁面の大理石に描かれた遠近画法のレリーフは素晴らしいです。ティントレットの「聖マルコとの奇跡」は現在アカデミア美術館に移され見ることが出来ます。現在は市立病院として使われていますので見学は遠慮された方がよいと思います。
 さて教会は、10本の円柱に支えられたラテン十字型の三廊式の教会で、前回紹介したフラーリ教会と大変よく似ています。
 15世紀中頃からは総督の厳粛な葬儀のために使われるようになり、ヴェネツィア市民にとって、栄光のパンテオンであり、堂内各所には1778年没のジョヴァンニ・モチェニーゴまでの25人の総督が祀られています。
 側廊には礼拝堂が並んでおり、特に右手2番目の礼拝堂には、ジョヴァンニ・ベニーニ「聖ヴィンチェンツォ・フェッレーリの多翼祭壇画」があり、さらに右側廊の一番奥の聖ドメニコ礼拝堂には、ジャンバッティスタ・ピアッツェッタ「聖ドメニコの栄光」(Gloria di S.Domenico)が浮き彫りや金箔が施された天井に描かれています。また右翼廊には、 ロレンツォ・ロット「聖アントニオの施し」(Elemosina di S.Antonio)の傑作を見ることが出来ます。そして彩色のステンドグラスがはめ込まれたゴシック様式の大きな窓は注目に値します。
 さらに総督アンドレア・ヴェンドラミンの墓廟の奥には「ロザリオの礼拝堂」(Cappella del Rosario)があります。この礼拝堂は1571年のレパントの海戦での勝利がちょうど「ロザリオの聖母の祝日」(107日)であったことから、感謝の意をこめて建設されたものでした。ここは当時のヴェネツィア派の画家たちの傑作で飾られていたのですが、1867年の火災で破壊されすべてが灰に消えてしまいました。改築後の1925年、ヴェロネーゼ(Paolo Veronese 1528-88)の傑作「受胎告知」「聖母被昇天」「牧者の礼拝」の3点が天井などに設置されました。

 その他にカステッロ区には、重要な教会が多くあります。サン・ジョルジョ・デリ・スキアヴォーニ信徒会館(Scuola di San Giorgio degli Schiavoni)ではカルパッチョ(Vittore Carpaccio 1465-1525)の聖ゲオルギウスのドラゴン退治の伝説を描いた絵画を、アンドレア・パラーディオが教会のファサードを手がけたサン・フランチェスコ・デルラ・ヴィーニャ教会(Chiesa di San Francesco della Vigna)では、ネグロポンテ(Antonio da Negroponte)の「幼子キリストを賞賛する玉座の聖母」(Madonna in trono adorante il Bambino)、ジョヴァンニ・ベッリーニの「聖母と諸聖人」(Madonna e quattro santi e donatore)などを見ることが出来ます。サン・ザッカリーア教会(Chiesa di San Zaccaria)では、ジョヴァンニ・ベッリーニの傑作で祭壇画の到達点と言わている「玉座の聖母と諸聖人」(Madonna in trono col Bambino e santi)が一際輝いています。また多色大理石でつくられたヴェネツィア・ルネッサンスの最高傑作とされるサンタ・マリーア・デイ・ミラーコリ教会は、その優美な姿から宝石箱のような小さな教会と言われています。最後に、ピエタ教会(Chiesa della Pietà)は、17世紀教会の孤児院に付属する形で音楽院ができ、そこでクラウディオ・モンテヴェルディやヴィヴァルディなどの音楽の巨匠たちが音楽教育とコンサートなどを通じてヴェネツィア音楽を世に知らしめたその舞台です。

■サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会(Basilica dei Santi Giovanni e Paolo) http://www.basilicasantigiovanniepaolo.it/it

■サン・マルコ大信徒会館(Scuola Grande di San Marco) http://it.wikipedia.org/wiki/Scuola_Grande_di_San_Marco

■サン・ジョルジョ・デリ・スキアヴォーニ信徒会館(Scuola di San Giorgio degli Schiavoni) http://it.wikipedia.org/wiki/Scuola_di_San_Giorgio_degli_Schiavoni

■サン・フランチェスコ・デルラ・ヴィーニャ教会(Chiesa di San Francesco della Vigna) http://it.wikipedia.org/wiki/Chiesa_di_San_Francesco_della_Vigna

■サン・ザッカリーア教会(Chiesa di San Zaccaria) http://it.wikipedia.org/wiki/Chiesa_di_San_Zaccaria
ジョヴァンニ・ベッリーニの「玉座の聖母と諸聖人」(Madonna in trono col Bambino e santi)
http://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Pala_di_San_Zaccaria

■サンタ・マリーア・デイ・ミラーコリ教会(Chiesa di Santa Maria dei Miracoli) http://it.wikipedia.org/wiki/Chiesa_di_Santa_Maria_dei_Miracoli_(Venezia)

■ピエタ教会(Chiesa della Pietà) http://it.wikipedia.org/wiki/Chiesa_della_Piet%C3%A0_(Venezia)

新シリーズ
 ◆誰でもわかるイタリア語 第6回

 今回は、動詞の説明に進むための基礎知識を学びましょう。
 「私はテレビを見る」、「マリアはテレビを見る」「私達はテレビを見る」と言う場合、日本語では動詞の「見る」は人称(主語にあたる部分)が変わっても変化しません。しかしイタリア語では主語に合わせて動詞が変化します。
 人称には1人称、2人称、3人称があり、それぞれ単数と複数があります。

主語 単数 主語 複数
1人称 私は io 1人称 私たちは noi
2人称 君は tu 2人称 君たちは voi
あなたは Lei あなたたちは voi
3人称 彼は / 彼女は lui/lei 3人称 彼らは / 彼女たちは loro

 上の表を見ますと2人称には、tu「君は」とLei「あなたは」の2つあります。イタリア語では、家族や友人に対しては親称のtuを使います。しかし初対面で親しくない人や目上の人に対しては敬称のLeiを使います。
 これらの人称が単独で使われている場合はそれ程問題はないのですが、人称が混ざっている場合はどうなるのでしょうか!
 例えば、「私とマリアは」(一人称複数)、「君とカルロは」(二人称複数)、「マリアとカルロは」(三人称複数)という場合です。「私」とか「君」があればそれが軸となりますので、その人称の複数形となります。
 次に、「これは...です」とか「あのレストランは...です」と言う場合、「これは」や「レストランは」は何人称でしょうか!「これは」「あれは」は3人称です。

 動詞には人称の変化と時制の変化があります。時制には、現在形、未来形、過去形の3つがあります。
 今回は、基本的な動詞のessere(~です)とavere(~を持っている)の現在形の人称変化を覚えましょう。英語の be動詞とhave動詞は例外的に人称変化を暗記したように、イタリア語でも不規則な変化をする動詞ですので暗記するようにしましょう。

【essere(~です)の現在形の人称変化】

人称 単数 人称 複数
io(私は) sono noi (私たちは) abbiamo
tu (君は) sei voi (君たちは) siete
Lei(あなたは) è voi (あなたたちは) siete
lui(彼は) è loro (彼らは) sono
lei(彼女は) è loro (彼女らは) sono
注意

 2人称単数の敬称「あなたは」の動詞の変化は、いつも3人称単数と同じです。「彼女は」のleiと「あなたは」Leiは綴りも発音も同じです。書くときは小文字と大文字で区別します。
 日本語の動詞は変化しない代わりに常に主語をハッキリさせなければなりません。しかしイタリア語では動詞の変化が人称も表しているので、主語を強調する場合を除いて省略するのが普通です。
 否定文を作るときは、nonを動詞の前に付けます。英語とは逆ですので注意して下さい。

■動詞essereを使った例文

(Io) Sono giapponese.
イーオ ソーノ ジャッポネーゼ
私は日本人です。
Maria è italiana.
マリーア エ イタリアーナ
マリアはイタリア人です。
Io e Maria siamo studenti.
イーオ エ マリーア シアーモ ストゥデンティ
私とマリーアは学生です。
Tu e Carlo siete simpatici.
トゥ エ カルロ シエーテ シンパーティチ
君とカルロは感じがいい。
Maria e Carlo sono allegri.
マリーア エ カルロ ソーノ アッレグリ
マリーアとカルロは陽気です。
Hanako non è italiana.
ハナコ ノネ イタリアーナ
花子はイタリア人ではありません。
Questo libro è interessante.
クエスト リーブロ エ インテレッサンテ
この本はおもしろい。
Questi negozi non sono aperti.
クエスティ ネゴーツィ ノン ソーノ アペルティ
これらのお店は開いていない。

■「...がある(いる)」という表現を学びましょう。場所を表すci「そこに」と動詞essere の三人称を使って表します。
c'è + 単数の名詞」「ci sono + 複数の名詞」

C'è una banca qui vicino?
チェ ウーナ バンカ クイ ヴィチーノ
この近くに銀行はありますか?
Non c'è Maria in casa.
ノン チェ マリーア イン カーザ
マリアは家にはいません。
Ci sono molti piatti sulla tavola.
チ ソーノ モルティ ピアッティ スルラ ターヴォラ
テーブルに沢山のお皿があります。
Non ci sono tante sedie in classe.
ノン チ ソーノ タンテ セーディエ イン クラッセ
教室には沢山の椅子がない。

【avere(~を持っている)の現在形の人称変化】

人称 単数 人称 複数
io (私は) ho noi(私たちは) abbiamo
tu (君は) hai voi(君たちは) avete
Lei(あなたは) ha voi(あなたたちは) avete
lui (彼は) ha loro (彼らは) hanno
lei (彼女は) ha loro (彼女らは) hanno

動詞avere は後ろに名詞を置いて、物を持っている、身につけている、友達や兄弟がいる、身長、体重、年齢などを表現するときに使う大切な動詞です。

■動詞avereを使った例文

(Io) Ho un giornale italiano.
イーオ オ ウン ジョルナーレ イタリアーノ
イタリア語の新聞を持っています。
Abbiamo un amico italiano.
アッビアーモ ウン アミーコ イタリアーノ
私たちにはイタリア人の友達がいます。
Avete una camera libera per stanotte?
アヴェーテ ウーナ カーメラ リーベラ ペル スタノッテ
(ホテルのフロントで)今夜、開いている部屋はありますか?
Non abbiamo lezione oggi.
ノンナッビアーモ レツィオーネ オッジ
今日はレッスンがありません。
La bambina ha sonno.
ラ バンビーナ ア ソンノ
子供は眠い。
Luigi e Mario hanno i capelli castani.
ルイージ エ マーリオ アンノ イ カペッリ カスターニ
ルイージとマリオは茶色の髪をしています。
Quella signora ha un gatto e due cani.
クエルラ シニョーラ ア ウン ガット エ ドゥーエ カーニ
あの奥さんはネコ1匹と犬2匹を飼っています。

単語帳

  1. イタリア語のportare[ポルターレ]という動詞は、「運ぶ、持って行く、携帯する」などの意味で使います。この動詞が名詞と結合して以下のような合成語が作られています。
    • il portafoglio[イル ポルタフォーリオ](財布): foglioは「用紙、紙幣」の意味。
    • il portacenere[イル ポルタチェーネレ](灰皿) : cenereは「灰」の意味。
    • la portafortuna[ラ ポルタフォルトゥーナ](お守り):fortunaは「幸運」の意味。
    • la portamina[ラ ポルタミーナ](シャープペン): minaは「(鉛筆の)芯」の意味。
  2. 言葉の前に接頭辞を付け、いろいろな意味を持たせます。その多くはギリシャ語やラテン語から来ており、その言葉に含まれる意味が付けられます。
    接頭辞(1) ギリシャ語のteleは「遠い」を意味し、ギリシャ語のphonos「音・声」と結合してtelefono「電話」(遠くの声が聞こえるもの)というイタリア語の合成語が生まれました。
    • il telescopio[イル テレスコーピオ](望遠鏡):ギリシャ語のscopioは「観察する道具・器具」を意味します。
    • il telecomando[イル テレコマンド](リモコン): comando は「命令すること」という意味。
    • la televisione[ラ テレヴィジオーネ](テレビ): visioneは「見ること・視力」という意味。
    • la telepatia[ラ テレパティーア](テレパシー) : ギリシャ語のpathosは「苦しみ・感情」を意味しています。
    接頭辞(2) ラテン語のbiは「2、2度、2回、両、重」の意味します。
    • bilingue[ビリングエ](バイリンガル): linguaは「言葉」という意味。
    • il binario[イル ビナーリオ](レール・駅のホーム): ラテン語binariumで「対の、2つの」を意味するbinoから派生した言葉です。
    • la bilancia[ラ ビランチャ](天秤): lanciaは「槍」の意味。
    • il binocolo[イル ビノーコロ](双眼鏡): ラテン語のoculusは「目」(occhio)の意味です。
  3. 語尾に tecaを付けた単語:ギリシャ語のtecaは「所蔵」「収集」を意味し、名詞との合成語でその名詞が多く集まっている場所を表します。
    • la biblioteca[ラ ビブリオテーカ](図書館): ギリシャ語のbiblionは「本」を意味しています。
    • la discoteca[ラ ディスコテーカ](ディスコ): ギリシャ語のdiskosは「円盤」の意味、ここでは「レコード」を意味しています。
    • la enoteca[ラ エノテーカ](酒屋): ギリシャ語のoinos, enoは「ワイン」を意味しています。
    • la pinacoteca[ラ ピナコテーカ](絵画館): ギリシャ語のpinakosは「絵画」を意味しています。
「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」
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