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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ローマ歴史地区(Centro storico di Roma)その22
アッピア街道(Via Appia)その1 "すべての道はローマに通ず"
1980/1990年登録


スケッチ画 樋口佳代

 紀元前753年といわれているローマの建国から400年経ち、ローマの支配地域が広がるにつれ軍隊の迅速な移動が必要となり、街道は可能な限り直線として建設される必要がありました。常に平らに均し、地盤の悪い湿地帯では無数の杭を打ち込み土手を築きその上に街道を建設しました。軍隊が敏速に移動するためには、一般の人々の往来を妨げないように、車道の両脇に13m程度の歩道を分離して設けています。また街道のほとんどを全線敷石舗装で建設しており、驚くことに街道を堅固に保つため、車道内に雨水が浸透しないよう道路中央部を高く弓形の排水勾配を設け、両脇には排水溝を設置していることです。
 ローマ街道網は、紀元前3世紀に始まり、紀元後の2世紀までの500年の間に敷設した全長は、375本の幹線だけでも8万キロ以上、支線まで加えれば15万キロに達したとされています。正に「すべての道はローマに通ず」(Tutte le strade portano a Roma)でした。

 アッピア街道Via Appiaスケッチ画)は最初のローマ街道であるだけでなく、「街道の女王」(regina viarum)と呼ばれるように、のちに敷設されていく街道の手本でもありました。
 アッピア街道の建設は、紀元前312年に執政官アッピウス・クラディウス・カエクスにより着工され、最初はローマが制覇した南端のカプア(カンパーニャ州Capua)まで建設されました。その後、ローマが征服した都市、ベネヴェント、ヴェノーザ、ターラントまで延長し、終点のアドリア海に面する港町ブリンディシ(Brindisi)までの530kmが開通するには70年かかっています。

 アッピア街道の始点は、現在のローマの旧市街をめぐっているアウレリアヌス城壁(Mura Aureliane)の18の門のひとつであるサン・セバスティアーノ門(旧称アッピア門)です。しかしアッピア街道の建設が始まる紀元前312年時点の始点は、当時のローマ市街の境界であったカラカラ浴場の南東、セルウィウスの城壁のカペーナ門でした。約600年後の紀元3世紀になってアウレリアヌス城壁が築かれ、市街との境界になったため、アッピア街道の始点もサン・セバスティアーノ門に移動しました。サン・セバスティアーノ聖堂への巡礼の通り道だったため、その名前で呼ばれるようになりました。
 サン・セバスティアーノ聖堂は、ローマの七大聖堂のひとつで、見所は地下に広がるサン・セバスティアーノのカタコンベ(地下墓所)です。地下4階、狭いトンネルが迷路のように続いている通路は全長12kmもあるそうです。また、サン・カリストのカタコンベも、規模の大きな埋葬施設で旧アッピア街道沿いにあり、3世紀以降の歴代教皇はここに埋葬されました。
 サン・セバスティアーノ門を通り、アッピア街道沿いにある小さな教会があります。キリスト教の歴史においては、きわめて重要な場所であるドミネ・クオ・ヴァディス教会(正式名サンタ・マリア・イン・パルミス教会)があります。聖ペトロは、キリスト教徒への迫害から逃れるため、ローマの町から脱出しアッピア街道を歩いていたところ、復活したイエス・キリストが現れました。驚いた聖ペトロが「主よ何処に行かれるのですか?」(ラテン語Domine quo vadis?)と尋ねると、キリストは「再びローマへ戻り、十字架に架かりに行くためだ」と答えたと言う有名な話です。聖ペトロは、迫害から逃れようとした自分を恥じ、ローマに戻りました。しかし彼はすぐに捕らえられ頭を下にして十字架にかけられ殉教しました(64年)。キリストが現れた場所がこの教会なのです。教会の中央にはキリストの足跡とされる大理石版が残っています。

■アッピア街道のガイドと写真
http://www.romanoimpero.com/2010/03/appia-antica.html

■ドミネ・クオ・ヴァディス教会(サンタ・マリア・イン・パルミス教会)のガイドと写真
http://www.romeartlover.it/Vasi10.htm
http://www.sacred-destinations.com/italy/rome-domine-quo-vadis

新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第38回

このシリーズ「誰でもわかるイタリア語」では、イタリア語の基礎を文法用語に頼って説明することを出来るだけ避け、誰にでもわかるようにまとめています。また「単語帳」のコーナーを設けていますので、少しずつ単語や簡単なフレーズを覚えるようにして下さい。

【受動態(受け身)】

(a) Io invito Mario alla festa di compleanno.(私はマーリオを誕生日のパーティーに招く)という文章では、主語の「私」が行う行為を動詞(invitare)で表し、能動的に働きかけているという意味で「能動態」と言います。動詞invitareは、「...を」という目的語(ここではMario)を直接にとる他動詞です。
(b) Mario è invitato alla festa di compleanno.(マーリオは、誕生日のパーティーに招かれる)という文章では、主語の招かれる側のマーリオは、なにものか(誰か)の招く行為を受けています。(a)の文章では主語が積極的(能動的)に働きかけていますが、(b)の文章では消極的に受けています。その意味でこのような文章を受動態といい、「...される」と訳します。
また「...によって」には前置詞「da」を使います。例えば「マーリオは、ある友達によってパーティーに招かれる」は、Mario è invitato alla festa da un amico.となります。

受動態(受け身)の文章は、一見すると近過去のように見えるので注意して下さい。
Sono andato a Roma.(私はローマに行きました)Maria è partita per il Giappone(マリアは日本に発ちました)の「essere+過去分詞」で作る近過去の文章では、動詞が「移動」や「状態」などを表す「自動詞」で、近過去にする際「助動詞essere+「移動や状態を表す自動詞の過去分詞」の形をとりました。
しかし受動態になる動詞はいつも「他動詞」です。そして「essere+他動詞の過去分詞」は受動態の現在形ですので「...される」であって「...された」と受動態の過去形で訳さないように注意して下さい。

【受動態の時制】
受動態にも、過去や未来を表したり、条件法などで表したりすることが出来ます。essereを変化させて作ります。近過去のように複合時制では、「esserestatoessereの過去分詞)」となります。そして更に他動詞の過去文が続きます。
 例えば受動態の近過去は、Mario è stato invitato alla festa.(マーリオはパーティーに招かれた)となります。過去分詞が二つありますが、statoは、essereの過去分詞です。è statoで近過去となっています。主語が女性のLuciaであれば、Lucia è stata invitata alla festa.となり、過去分詞の語尾を主語の性と数に一致させ女性形となっています。

Mario è invitato alla festa.
(マーリオはパーティーに招かれる) 現在形

Mario è stato invitato alla festa.
(マーリオはパーティーに招かれた) 近過去形

Mario sarà invitato alla festa.
(マーリオはパーティに招かれるでしょう) 未来形

Mario era invitato alla festa.
(マーリオはパーティーに招かれていた) 半過去形

Mario fu invitato alla festa.
(マーリオはパーティーに招かれた) 遠過去形

【受動態の種類】
受動態には、A.essere+他動詞の過去分詞」の他に、「動き」や「状態」を強調するB.venire(stare)+他動詞の過去分詞」や、「義務」(されるべき)を強調したり、「消滅、解消」を強調するC.andare+他動詞の過去分詞」、そして日常会話などでもよく使われる受け身小詞と呼ばれる「si+他動詞の三人称」があります。

A. 「essere+他動詞の過去分詞」:近過去のような複合時制でも使うことが出来るので、最も普通の受動態として使います。

【現在形の例文】

(1) La cena è preparata da Lucia.
(夕食はルチアによって準備される)

(2) Il menu è aggiornata ogni stagione.
(メニューは季節ごとに入れ替わります)

(3) Questo colore è preferito dai giovani.
(この色は若者たちによって好まれています)

(4) Questa musica è preferita dai giovani.
(この音楽は若者たちによって好まれています)

(5) I vestiti alla moda sono preferiti dai giovani.
(流行の服は若者たちによって好まれています)

(6) Il museo è visitato da molta gente.
(博物館は多くの人たちが訪れる)

(7) L'ordine della città è mantenuto dalla polizia.
(町の秩序は警察によって守られる)

(8) La notizia è trasmessa dalla radio.
(ニュースはラジオによって伝えられる)

【近過去形などの例文】

(1) Rita è stata lodata dalla maestra.
(リータは先生から褒められました)

(2) Lucia è stata regalata un mazzo di rose da Mario.
(ルチーアはマーリオからバラの花束を贈られた)

(3) Questi libri sono stati tradotti in italiano dal professor Bianchi.
(これらの本はビアンキ先生によってイタリア語に翻訳されました)

(4) Quel romanzo è stato consigliato da Luigi.
(あの小説はルイージから勧められました)

(5) Questa notizia ti sarà comunicato a voce.
(この知らせは口頭で君に伝えられるだろう)

(6) La partita di calcio sarà seguita da molte persone in TV.
(サッカーの試合は多くの人たちによってテレビで見られるでしょう)

(7) La raccomandazione è stata consegnata dal postino.
(書留郵便は郵便配達人によって渡される)

(8) Se mario avesse presentato i documenti in tempo, sarebbe stato assunto dalla ditta.
(マーリオは期限内に書類を提出していれば、その会社に採用されていたでしょう)

単語帳

食材から学ぶイタリア語 その2

 今回は、メイン料理から食材を選び、イタリア語の単語をまとめてみました。牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉等の部位は地域によって呼び名が異なるため、ここではレストランなどのメニューで使われている一般的な言葉に止めます。
料理名によく「ローマ風の...」(alla romana)、「ヴェネチア風の...」(alla veneziana)、「ミラノ風の...」(alla milanese)と地名が入っています。「...ふう」にあたるmanieraは省き、「alla+地名の形容詞」で表します。
よく使う「自家製の」(alla casalinga)も同じ言い方です。また「...風味、...で味付けした、...であえた」など特性を表すときには、一般的に「前置詞a+名詞」の形をとります。例えば、spaghetti alle vongole(アサリスパゲッティ)、filetto al pepe verde(グリーンペッパー風味のヒレステーキ)、risotto al nero di seppia(イカ墨リゾット)、pollo alla griglia(鶏の網焼き)、pollo allo spiedo(鶏の串焼き)と言います。
肉と魚の基本的な食材について単語をまとめましたのでしっかり覚えましょう。

A. 肉(carne):

1. ビーフステーキ bistecca
2. ヒレ肉 filetto
3. ロース costata
4. カツレツ cotoletta
5. ローストビーフ manzo arrosto
6. 子牛の肉 vitello(a)
7. maiale
8. 鶏の肉 pollo(おんどり gallo、めんどり gallina
9. 鶏の胸肉 petto di pollo
10. 子羊の肉 agnello
11. カモ ànatra
12. ホロホロ鳥 gallina faraona

B. 魚(pesce):

1. エビ(小エビ) gàmbero(gamberetto)
2. カニ grànchio
3. イカ calamaro
4. シタヒラメ sògliola
5. スズキ spìgola
6. クロダイ orata
7. アサリ vòngole
8. カキ óstrica(複数 óstriche
9. ムール貝 cozza(複数 cozze
10. アワビ aliòtide(orecchia di mare)
11. ウニ riccio di mare
12. アナゴ grongo(複数 gronghi
13. ウナギ anguilla
14. イワシ sardina
15. カタクチイワシ acciuga(複数 acciughe
16. タラ merluzzo(ヴェネト州ではbaccalà
17. メカジキ pesce spada
「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」
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