愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ヴァル・ドルチャ(オルチャ渓谷) (Val d'Orcia) 2004年登録


スケッチ画 樋口佳代

 オルチャ渓谷は、トスカーナ州シエーナ県の南部にあるアミアータ山(Monte Amiata 1738m)からキアーナの谷に向かって、穏やかに傾斜する丘陵地と、ラディコーファニ(Radicofani)からモンタルチーノ(Montalcino)にまたがる丘陵地に広がっています。またオルチャ川とその支流のつくる渓谷は、なだらかな山容を南に見せるアミアータ山を背景に、中世の町が周囲の牧歌的な田園地帯と織りなす景観がその美しさを作り出しています。オルチャ渓谷には、ローマ時代の主要なカッシーナ街道(Via Cassina)が通っており、中世には、イタリアの主要な巡礼の街道の一つであるフランチジェーナ街道(Via Francigena)がこの地域を通り、ローマやエルサレムに向かう巡礼者や騎士、商人たちが往来しました。街道沿いにはサン・クイリコ・ドルチャ(San Quirico d'Orcia)、カスティリョーネ・ドルチャ(Castiglione d'Orcia)、ラディコーファニ(Radicofani)、モンタルチーノ(Montalcino)、ピエンツァ(pienza)などの町が中世からルネッサンスにかけて作られました。
 12~15世紀にかけてその大部分の地域がシエーナ共和国の領土となりますが、1555年フィレンツェに攻略され、フィレンツェ公国の領土となります。

 オルチャ渓谷の丘陵地帯は、陽光が降り注ぐ丘に糸杉(cipresso)の並木(スケッチ画)や小麦などの穀物、葡萄、オリーブなどの畑が広がる牧歌的な美しい田園地帯です。シエーナ地方特有の粘土質の地層で、豪雨によって表土がはぎ取られた荒地で耕作には適していませんでした。急斜面は階段状に開墾し、石垣を組んで土壌の流出を防いで畑を作っています。穀物と葡萄、オリーブなどの樹木が同一の耕地で栽培され、丘の斜面にぶどう畑とオリーブ畑が交互に見える典型的な景観がつくられてきました。人間と自然の共存を見事に保つその伝統耕法が、今もなみなみと受け継がれるこの地域の風土と生活、調和のとれた素晴らしい景観は、訪れる人を魅了し強く印象づけることでしょう。
 観光シーズンは、5月から7月の春が最も美しい季節だと思います。トスカーナ地方では、日照時間も長くなり気候も安定しており、新緑の輝きと成長の息吹で活気づいてきます。じゅうたんのように広がる田園風景は天気や陽のあたり方でその景観が変わり、また日々の花などの生長により、1日過ぎても昨日とは違う顔を見せてくれます。
 また高品質なワインを生産する地域でもあります。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)やテヌータ・ディ・トリノーロ(Tenuta di Torinoro)は世界的に有名です。是非最寄りのワイナリーに足を運びワインの試飲を楽しんで下さい。

 1996年世界遺産に登録された「ピエンツァ(Pienza)市街の歴史地区」については、第18回(20102月号)で案内していますので是非お読み下さい。

■オルチャ渓谷公園(Parco della val d'Orcia)http://www.parcodellavaldorcia.com/parcob.asp

■オルチャ渓谷の写真http://www.perlavaldorcia.com/p/val-dorcia-photo-gallery.html

■オルチャ渓谷へのアクセスシエーナ(Siena)からモンテプルチャーノ(Montepulciano)などの町を結ぶTrain社の路線バスのご利用をおすすめします。
http://www.trainspa.it/EXTRAURBANO.HTM

新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第10回

 前回は、「...(A)することを(B)...する」Aの動詞 + Bの動詞と言うように2つの動詞を一緒に使う場合、2つの動詞を繋げるため、接着剤のような働きをする前置詞aまたはdiを動詞と動詞の間に入れることを学習しました。
しかし、動詞によっては接着剤のような働きをした前置詞を必要としない動詞があります。

A 従属動詞の場合:

動詞の原形 dovere
(...しなければならない)
potere
(...できる)
volere
(... したい)
sapere
(...できる)
io(私は) devo posso voglio so
tu(君は) devi puoi vuoi sai
lui(彼は)
lei(彼女は)
Lei(あなたは)
deve può vuole sa
noi(私たちは) dobbiamo possiamo vogliamo sappiamo
voi(君たちは)
(あなたたちは)
dovete potete volete sapete
loro(彼らは)
(彼女らは)
devono possono vogliono sanno

 注意:potereの「出来る」は許可や認容などの意味です。一方、sapereの「出来る」は、sapereはもともと「知る」を意味する動詞で、従属動詞として使う場合は、「運転できる」「泳げる」「(楽器など)を弾ける」など「(学習・経験によって)...出来る」の意味で使います。

 英語では助動詞(must, can, want)と呼ばれるものです。イタリア語の助動詞は、essereavereの2つです。従属動詞は、次に動詞の原形を直接従える動詞です。上の表にあるように不規則に変化する動詞ですが、日常会話でもよく使う動詞ですのでしっかり覚えましょう。

dovereの例文:(... しなければならない;... するはずだ;... にちがいない)

1. Devo prenotare il posto.
デーヴォ プレノターレ イル ポスト
席を予約しなければならない。
2. Anna deve tornare a casa presto.
アンナ デーヴェ トルナーレ ア カーザ プレスト
アンナは早く家に帰らなければならない。
3. Devono arrivare qui verso sera.
デーヴォノ アッリヴァーレ クイ ヴェルソ セーラ
彼らは夕方にここに着くはずだ。
4. Deve costare molto questa giacca.
デーヴェ コスターレ モルト クエスト ジャッカ
この上着は高いにちがいない。
5. Gli studenti devono studiare molto per l'esame.
リ ストゥデンティ デーヴォノ ストゥディアーレ モルト ペル レザーメ
学生たちは試験のためよく勉強しなければならない。

potereの例文:(... 出来る;... してよい;... かもしれない)

1. Possiamo partire subito.
ポッシアーモ パルティーレ スビト
私たちはすぐに出発できます。
2. Può chiudere la porta, per favore!
プオ キューデレ ラ ポルタ ペル ファヴォーレ
お願いだからドアを閉めていただけますか!
3. Mi può ripetere ancora?
ミ プオ リペーテレ アンコーラ
もう一度繰り返していただけますか?
4. Posso fumare qui?
ポッソ フマーレ クイ
ここでタバコを吸ってもよろしいですか?
5. Può essere vero.
プオ エッセレ ヴェーロ
それは本当かもしれない。

volereの例文:(... 望む ; ... したい)

1. Voglio mangiare la pizza napolitana.
ヴォーリオ マンジャーレ ラ ピッツァ ナポリターナ
ナポリのピッツァを食べたい。
2. Vuoi uscire con me stasera?
ヴオイ ウシーレ コン メ スタセーラ
今夜一緒に出掛けませんか?
3. Vogliamo vedere la partita di calcio alla TV.
ヴォリアーモ ヴェデーレ ラ パルティータ ディ カルチョ アルラ ティーヴ
サッカーの試合をテレビで観戦したい。
4. Luigi vuole leggere l'ultimo libro di quel scrittore.
ルイージ ヴオーレ レッジェレ ルルティモ リーブロ ディ クエル スクリットーレ
ルイージはあの作家の新作を読みたい。
5. Voglio passare le vacanze in montagna.
ヴォーリオ パッサーレ レ ヴァカンツェ イン モンターニャ
バカンスを山ですごしたい。

sapereの例文:(出来る)

1. So parlare italiano.
ソ パルラーレ イタリアーノ
イタリア語を話すことが出来ます。
2. Mario sa guidare bene la macchina.
マーリオ サ グイダーレ ベーネ ラ マッキナ
マリオは車をうまく運転できます。
3. Sanno tradurre dal giapponese all'italiano.
サンノ トゥラドゥッレ ダル ジャッポネーゼ アルリタリアーノ
彼らは日本語からイタリア語に訳すことが出来ます。
4. Andrea sa suonare bene il violino.
アンドゥレア サ スオナーレ ベーネ イル ヴィオリーノ
アンドレアはヴァイオリンをうまく弾くことが出来ます。
5. Non sappiamo giocare a tennis.
ノン サッピアーモ ジョカーレ ア テニス
私たちはテニスをすることが出来ません。

単語帳

 前回に引き続きは前置詞を使った成句的表現をまとめてみました。ここでは日常会話などによく使うものを選びました。

C. 前置詞 in の場合

  1. in genere[イン ジェネレ](普通は、いつもは)
    • Oggi Angela è triste, in genere è sempre allegra.[オッジ アンジェラ エ トゥリステ イン ジェーネレ エ センプレ アッレグラ](今日はアンジェラは寂しそうだけどいつもは陽気です)
  2. in macchina[イン マッキナ](車で)
    • Mi piace viaggiare in macchina.[ミ ピアーチェ ヴィアッジャーレ イン マッキナ](私は車で旅行するのが好きです)
  3. in contanti[イン コンタンティ](現金で)
    • Si deve pagare in contanti per avere un forte sconto.[シ デーヴェ パガーレ イン コンタンティ ペル アヴェーレ ウン フォルテ スコント](たくさんの割引をしてもらうために現金で支払わなければなりません)
  4. in anticipo / in ritardo / in orario[イン アンティーチポ / イン リタルド / イン オラーリオ](早めに、遅れて、時間通りに)
    • Quando ho appuntamento, arrivo in anticipo, o in ritardo, ma mai in orario.[クアンド ホ アップンタメント アッリボ イン アンティーチポ オ イン リタルド マ マイ イン オラーリオ](約束があるときは、早めに着くか遅れて着きます。しかし決して時間通りには着きません)
  5. in apparenza / in realtà[イン アッパレンツァ / イン レアルタ](うわべは、実際は)
    • In apparenza sembra molto calmo, ma in realtà è molto nervoso.[イン アッパレンツァ センブラ モルト カルモ マ イン レアルタ エ モルト ネルボーゾ](うわべは大変冷静に見えるが、実際は大変神経質です)

D.前置詞 per の場合

  1. per caso[ペル カーゾ](偶然に、ひょっとして、万一)
    • Hai , per caso, degli spiccioli?[アイ ペル カーゾ リ スピッチョリ](ひょっとして小銭持っていない?)
  2. per esempio / ad esempio[ペル エゼンピオ / アドゥ エゼンピオ](例えば)
    • Maria parla varie lingue, per esempio, inglese, francese e tedesco.[マリーア パルラ ヴァーリエ リングエ ペル エゼンピオ イングレーゼ フランチェーゼ エ テデースコ](マリアはいろいろな言葉を話します。例えば英語、フランス語そしてドイツ語を)
  3. per carità![ペル カリタ](お願いだから!)
    • Per carità, non dire questo![ペル カリタ ノン ディーレ クエスト!](どうかこの事は言わないで下さい)
  4. per cortesia!(どうぞ!すみませんが!)は、親切や思いやりを意味するcortesia[コルテジーア]を使って丁寧にお願いするときに使います。普通の日常会話でお願いするときには、per favore![ペル ファヴォーレ]またはper piacere![ペル ピアチェーレ]を使うようにして下さい。
  5. per forza[ペル フォルツァ](むりやり、どうしても、しかたなく、当然)
    • Devo uscire questa sera per forza.[デーヴォ ウシーレ クエスタ セーラ ペル フォルツァ](今夜はどうしても出掛けなければならない)
  6. per quando riguarda[ペル クアント リグアルダ](~に関して、~について)
    • Per quanto riguarda quella faccenda...[ペル クアント リグアルダ クエルラ ファッチェンダ](あの件に関しては...)
「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」
このページの一番上へ