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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ピサのドゥオーモ広場 Pisa, Piazza del Duomo 1987年登録


スケッチ 樋口佳代

 ピサはフィレンツェから西へ約100キロ、アルノ川下流の干潟に出来た港町です。ピサの町の誕生は紀元前に遡ります。アルノ川とセルキオ川が合流する地点でリグリア海に面して開けており、ローマ人はイタリア北部と西地中海の勢力を拡大するための最高の拠点と考え、重要な海軍基地として発展した町です。8世紀から9世紀にかけてピサはサラセン人に対する軍事基地として、また地中海の商業基地として大変栄えました。ピサが最も栄えたのは、11世紀から13世紀にかけてでした。サルデーニャのアラブ勢力を制圧し、更にはコルシカも手中に納め西地中海での覇権をにぎり強力な海洋都市国家となったのです。1064年のサラセン人に対するパレルモ沖の海戦での歴史的な勝利を記念して、聖母マリアに捧げる大聖堂(Duomo:Cattedrale di Santa Maria Assunta)の建設が始まりました。1152年から1284年には洗礼堂(Battistero)が建造され、また1278年にはカンポ・サント墓地(Camposanto)が建造され、1173年に鐘楼(Campanile)の建設が開始し、1350年の完成まで工事は続けられました。これらの建造物が中世の城壁を背景に広がる広々とした緑の芝生の上に聳えて建っています。これらの一連の宗教的建造物は、「ゆりかごから墓場まで」というキリスト教徒の生から死までを象徴的に表しています。別名「奇跡の広場」(Campo dei Miracoli)と呼ばれています。フィレンツェで見た建物や美術などはルネッサンス様式のものでしたが、ピサではそれよりも約1世紀も早いロマネスク様式の荘厳で美しい建造物や美術に出会うことになります。
 しかし、1284年のメロリア海戦で宿敵ジェノバに敗れてからというもの、地中海支配の時代に終止符を打つと同時に衰退の道を歩むことになりました。この海戦でピサは40艘のガレー船を失い、6,000人の死者を出し、1万人が捕虜となったと言われています。
 1406年にはフィレンツェに征服され、メディチ家の支配下のもとで新しい発展の時代を迎えることになります。

ピサの斜塔(Torre di Pisa)
 世界の七不思議の一つである「ピサの斜塔」(スケッチ画)は世界的に有名でよく知られています。この塔は大聖堂の後陣側に建つ円筒形の鐘楼で、1173年に工事が着工しましたが、3階の建設が終わった時点ですでに塔は傾き始め工事は中断、1275年に再開、1350年に今の斜塔が完成しました。
 鐘楼は当初、高さ100mになる計画だったそうですが、55mの塔の高さに見慣れているので他の建物と釣り合いがとれないのではないかと思います。塔の外周の直径は17m、総重量が14,453トンもあります。高さは北側で54.8m、南側で55.65m、南に向かって4.5m(530分)傾いており、塔の南側の地盤沈下は2.4mにおよびます。この辺りは基礎が浅く、地盤が砂岩質なので「奇跡の広場」の建物はすべて傾いているそうです。800年も倒れずに傾いたまま建っているのはやはり奇跡(Miracoli)と言えるでしょう。
 ピサの斜塔を有名にしたのは、近代科学の父といわれるガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei 1564‐1642)がピサの斜塔を使って「落下の法則」を証明した話ではないでしょうか。斜塔の上から重さの異なる球を同時に落として同時に地面に落ちたという話です。物体が落下するときの時間はその物体の質量に関係なく一定であると証明したのでした。しかし実際は弟子のヴィンチェンツォ・ヴィヴィアーニ(Vincenzo Viviani)の創作であって、全く別の方法で証明したようです。また若きガリレオは、大聖堂の内陣に吊されたブロンズ製のランプが揺れているのを見て「振り子の等時性」(1583年)を発見したと言われています。つまり振り子は重りや振幅に関係なく、ランプを吊す長さによって往復する時間(周期)が決まるのであると発見したのでした。しかし通称「ガリレオのランプ」と言われている大聖堂のランプは1587年に取り付けられたもので、鉄の棒でしっかり支えられており、ランプは揺れることはなかったようです。

 1990年、倒壊防止のための工事が始まりました。塔を反対側に引っぱり、塔の根もとの地面に鉄管を入れ軟弱な地盤を吸い上げ、そこにコンクリートの基礎を流し込むというシンプルな建築工法でした。2001年には工事が終了し、人数を限って一般公開されました。その後20年にもおよぶ修復と外部の清掃作業が2011422日に完全に終了し、工事用の足場が撤去され、真っ白に輝く生まれ変わったピサの斜塔が姿を現し観光客を喜ばせています。617日、ピサの守護聖人聖ラニエリの灯火祭(Luminaria di S.Ranieri)の日に修復完了を記念するイベントが行われました。斜塔の傾きは現在5度。塔内には塔の傾斜や振動、ゆがみなどを監視する複数のセンサーが設置され、専門家は修復の結果、今後300年間は倒壊の危険はないとしています。斜塔を維持することは、ピサの栄光の歴史を残すことになるのです。

■ピサ(Pisa)へのアクセス
フィレンツェ(Firenze)からピサ中央駅(Pisa Centrale)まで列車で約1時間。中央駅からピサの斜塔のある「奇跡の広場」(Campo dei Miracoli)までバスが出ています。徒歩で約20分から30分。

■ピサ(Pisa)の写真
http://www.globopix.net/fotografie/pisa_1.html

■ピサの斜塔(Torre di Pisa)についての案内
http://torredipisa.historiaweb.net/

■ピサの町の案内
http://www.italyguides.it/it/pisa/cattedrale_di_pisa.htm

新シリーズ
 ◆誰でもわかるイタリア語 第3回

 劇場などで拍手しながら「ブラボー!ブラボー!」と言っているのをよく耳にします。「ブラボー!」はイタリア語の形容詞「Bravo!」で、「素晴らしい!」とか「うまいぞ!」の意味です。
 イタリア語の名詞にはそれぞれに男性名詞と女性名詞がありますが、形容詞には固有の性はありません。形容詞は、「素晴らしい~」とか「親切な~」というように名詞を修飾する言葉です。その名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に左右され、形容詞も名詞と同じように語尾が変化しますので注意する必要があります。ですから劇場でも、誰に対して「ブラボー!」と言っているかが問題で、相手が1人の女性であれば、「ブラバー!」(Brava!)と女性の語尾にしなければなりません。また男女複数の場合は男性の複数の語尾にして「ブラビー!」(Bravi!)としなければなりません。
 またレストランでも同様に、スパゲッティが「美味しいです」と言うとき、「ブオーノ!」(Buono!)では1本のスパゲッティしか食べていないことになってしまうので、「ブオーニ!」(Buoni!)と複数の語尾にしなければなりません。

注意

 コンサートなどでは「ブラボー、アンコール!」と言っていますが、イタリアでは「アンコール」とは言わず、ラテン語の「2回」「2度」を意味する「Bis」[ビース]を使います。「Bis! Bis!」と聞こえてくると何かブーイングのように聞こえますが、アンコールを要請しているんです。

形容詞の使い方を学習しましょう!

【形容詞の使い方】
1.「Bravo!」とか「Marco è bravo.」(マルコは素晴らしい)というように形容詞単独で使う場合があります。その場合でも何に対して言われているかが問題で、形容詞の語尾を変化させなければなりません。

Marco è bravo.[マルコ エ ブラーヴォ](マルコは素晴らしい)
Carla è brava.[カルラ エ ブラーヴァ](カルラは素晴らしい)
Marco e Carla sono bravi.[マルコ エ カルラ ソーノ ブラーヴィ](マルコとカルラは素晴らしい)
Carla e Maria sono brave.[カルラ エ マリーア ソーノ ブラーヴェ](カルラとマリーアは素晴らしい)

2.「Il ponte vecchio」[イル ポンテ ヴェッキオ](古い橋)とか「la casa nuova」[ラ カーザ ヌオーヴァ](新しい家)、のように名詞を修飾して使う場合があります。同じように形容詞は名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に合わせ語尾を変化させなければなりません。また形容詞の位置は、通常は名詞の後ろに置きます。これは英語とは逆になりますので注意して下さい。

il ristorante italiano[イル リストランテ イタリアーノ] (イタリアレストラン)
la canzone italiana[ラ カンツォーネ イタリアーナ] (イタリアの歌)
i cibi leggeri[イ チービ レッジェーリ] (軽い食べ物)
le bevande gassate[レ ベヴァンデ ガッサーテ](炭酸飲料)

3.形容詞の位置が名詞より前に来る場合。形容詞としての意味がそれほど強くなく日常的によく使われる形容詞(bello・buono・caro・vero・santoなど)は名詞の前に置きます。

Bella signorina![ベッラ シニョリーナ](美しいお嬢さん!)
Buongiorno![ブオン ジョルノ](おはよう!こんにちは!)
un caro amico[ウン カーロ アミーコ](親友)
una vera artista[ウーナ ヴェーラ アルティスタ](真の芸術家)
Santa Chiara[サンタ キアーラ](聖キアーラ)

4.位置により意味が異なる形容詞があります。この場合、後ろに置かれたときがその形容詞の本来の意味を表します。 そのような形容詞にはbravo・buono・grande・povero・certo・gentileなどがあります。

un brav'uomo[ウン ブラヴオーモ](人のよい男)
un uomo bravo[ウン ウオーモ ブラーヴォ](勇敢な男)
un buon uomo[ウン ブオン ウオーモ](お人よし)
un uomo buono[ウン ウオーモ ブオーノ](親切でよい人)
un gran uomo[ウン グラン ウオーモ](偉大な人)
un uomo grande[ウン ウオーモ グランデ](体の大きな人)
un povero uomo[ウン ポーヴェロ ウオーモ](可哀想な・気の毒な人)
un uomo povero[ウン ウオーモ ポーヴェロ](貧乏な人)
una certa cosa[ウーナ チェルタ コーザ](あること)
una cosa certa[ウーナ コーザ チェルタ](確実なこと)
un gentiluomo[ウン ジェンティルウオーモ](紳士)
un uomo gentile[ウン ウオーモ ジェンティーレ](親切な男)

単語帳

  1. la stazione[ラ スタツィオーネ](駅)
    : la stazione central[ラ スタツィオーネ チェントゥラーレ](中央駅)
  2. la fermata[ラ フェルマータ](停留所)
    la fermata di autobus[ラ フェルマータ ディ アウトブス](バスの停留所)
  3. aperto[アペルト](開いている)⇔chiuso[キュウゾ](閉まっている)
    il museo è aperto[イル ムゼオ エ アペルト](博物館は開いている)、
     la pizzeria è chiusa.[ラ ピッツェーリア エ キウーザ](ピザ屋は閉まっている)
  4. la pianta[ラ ピアンタ](地図)
    la pianta di Roma[ラ ピアンタ ディ ローマ](ローマの地図)
  5. la guida[ラ グイーダ](ガイドブック)
    la guida di Venezia[ラ グイーダ ディ ヴェネツィア](ヴェネツィアのガイドブック)
  6. la casa[ラ カーザ](家)
    la casa piccola<grande>[ラ カーザ ピッコラ<グランデ>](小さな<大きな>家)
  7. il ragazzo・la ragazza[イル ラガッツォ・ラ ラガッツァ](男の子・女の子)
    il ragazzo serio[イル ラガッツォ セーリオ](まじめな男の子)、
     la ragazza allegra[ラ ラガッツァ アッレーグラ](陽気な女の子)
  8. la signora[ラ シニョーラ](夫人)
    la signora gentile<simpatica>[ラ シニョーラ ジェンティーレ<シンパーティカ>](親切な<感じのよい>奥さん)
  9. il telefonino[イル テレフォニーノ]又は il telefono cellulare[イル テレーフォノ チェッルラーレ](携帯電話)
  10. il colore[イル コローレ](色)
    il colore chiaro<scuro>[イル コローレ キアーロ<シクーロ>](明るい<暗い>色)
「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」
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