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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

フィレンツェ歴史地区 その2 シニョリーア広場とヴェッキオ宮殿 Centro storico di Firenze 2.Piazza della Signoria e Palazzo Vecchio 1982年登録


スケッチ 樋口佳代

 シニョリーア広場(Piazza della Signoria)には多くの彫刻が並んでいます。ヴェッキオ宮殿(Palazzo Vecchio スケッチ画)を正面に、左からジャンボローニャの作品「コジモ1世の騎馬像」、その隣にはバルトロメオ・アンマナーティ作の巨大な「ネプチューン噴水」、その隣にはドナテッロの青銅彫刻「ジュデッタとオロフェルネ」のレプリカが建っています。本物はヴェッキオ宮殿の中で見ることが出来ます。
 宮殿の正面には、フィレンツェの象徴であるドナテッロ作のライオン「マルゾッコ」があり、宮殿の正面入口にはミケランジェロの傑作の「ダヴィデ」がフィレンツェの町を守るように建っています。しかしここで見る二つの彫刻はいずれもレプリカです。「マルゾッコ」はバルジェッロ博物館で、また「ダヴィデ」はアカデミア美術館で本物を見ることが出来ます。「ダヴィデ」の右にある巨人の彫刻は、パンディネッリ作の「ヘラクレスとカクス」です。ヘラクレスはメディチ家による権力の奪還を象徴しており、ルネサンス晩期に特徴的な力強い上半身をみせつけています。彫刻家のベンヴェヌート・チェリーニは「メロンのつぶし屋」と呼んだそうです。
 ミケランジェロの「ダヴィデ」像の設置場所をめぐって有名なエピノードがあります。設置委員でもあった先輩レオナルド・ダ・ヴィンチが、宮殿正面の「ダヴィデ」を隣のロッジャの中に入れようという主張に対して、頑固な若き作者ミケランジェロがそれに対抗し、 ドナテッロの「ジュデッタとオロフェルネ」をどけて自分の「ダヴィデ」を強引に置かせたという話は有名です。
 ヴェッキオ宮殿の右手には軽やかな三連アーチをもつゴシック様式の開廊ロッジャ・デッラ・シニョリーア(Loggia della Signoria)が建っています。14世紀に建てられ自由都市フィレンツェ共和国の集会所と公式な行事の場所として使われていました。今では彫刻が並べられており野外ギャラリーとしてシニョリーア広場の景観にはなくてはならない空間を飾っています。
 ロッジャには、ベンヴェヌート・チェリーニの傑作「メドゥーサの首をもつペルセウス」、ジャンボローニャの作品「サビーネ女の略奪」や「ヘラクレスとネッソ」、ピオ・フェーディの作品「ポリセーナ略奪」が並んでいます。また第3列目の女性像6体は帝政ローマ時代のものです。

ヴェッキオ宮殿
 14世紀以来、フィレンツェ共和国の政庁舎として使われてきました。会議の招集や火災や敵の攻撃を告げるための威圧的とも見える鐘楼の塔が聳えています。塔は1310年に完成し、高さ94m、「アルノルフォの塔」(Torre d'Arnolfo)と呼ばれています。ここを自分の居館としていたコジモ1世(1519‐1574)が新居のピッティ宮殿に移ってから、古いを意味するヴェッキオを宮殿の名前に付けたようです。
 正面入口を入ると中央には小さな噴水があり、水盤に建っているブロンズ像がヴェロッキオ作の「イルカを持つ少年」(レプリカ)です。オリジナルは屋内のジュノーネのテラスに移されています。2階には500人を収容する「五百人広間」(Salone dei Cinquecento)と呼ばれる市民大評議会の会議場があります。コジモ1世はヴァザーリ(1511‐1574)に依頼して、1555年から1572年にかけてこの部屋を謁見の間に改修させました。フィレンツェのピサとシエーナに対する勝利とコジモ1世の礼賛ために天井も周囲の壁面もすべてヴァザーリと彼の弟子たちによる絵画で埋めつくされました。
 実は、1503年から1505年頃、フィレンツェ共和国は、当時のルネッサンスの巨匠であったレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452‐1519)とミケランジェロ(1475‐1564)に「五百人広間」の壁画を依頼し競作させたのでした。しかしいずれも未完のまま終わってしまいましたが。1512年、ミケランジェロの未完の「カッシーナの戦い」(Battaglia di Cascina)は、彼の才能を妬んだバルトロメオ・バンディネッリによって切り刻まれてしまいました。一方、レオナルド・ダ・ヴィンチの「アンギアーリの戦い」(Battaglia di Anghiari)の壁画についてはその後数十年は多くの画家たちによって模写されており、中でもパリのルーブル美術館所蔵のルーベンスによる模写(1603年)は有名です。しかしルーベンスが模写したのは原画からでなく1558年のロレンツォ・ツァッキア(Lorenzo Zacchia)による版画をもとにして描いたようです。
 1975年、イタリアの美術史家マウリツィオ・セラチーニ(Maurizio Seracini)教授は、「アンギアーリの戦い」がヴァザーリによって「五百人広間」に描かれたフレスコ画「マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い」(Battaglia di Marciano della Chiana)の壁画の中にその謎を解くメッセージがあると主張しました。壁画の中央の奥に小さく描かれている緑色の軍旗に描かれている「CERCA TROVA」(探しなさい、さすれば見つかるであろう!)の文字に注目し、その後の調査の結果、壁画の裏の壁に奥行き2.5cm程の空洞があることが明らかになっており、そのすき間に隠されているのではないかと考えられています。今年の8月、新聞ラ・レプッブリカ(La Repubblica)の報道では、2012年末までにこの幻の大作「アンギアーリの戦い」の調査結果が明らかになると報じています。36年間のセラチーニ教授の夢は実現するのでしょうか!

■シニョリーア広場(Piazza della Signoria)の写真
http://www.italy360.it/italia/firenze/piazza-della-signoria.html

■ヴェッキオ宮殿(Palazzo Vecchio)の案内
http://www.museicivicifiorentini.it/palazzovecchio/gallery.htm

La Repubblica(Firenze版)の記事について
http://firenze.repubblica.it/cronaca/2011/08/31/news/caccia_hi-tech_al_leonardo_perduto_raggi_gamma_per_scovare_il_capolavoro-21081959/

新シリーズ
 ◆誰でもわかるイタリア語 第2回

 前回では、名詞には男性名詞・女性名詞があることを説明しました。語尾が‐oであれば男性名詞、語尾が‐aであれば女性名詞でした。やっかいなのは、 語尾が‐eで終わる名詞でした。男性名詞か女性名詞か単語ひとつひとつ覚えなければなりません。決して名詞のイメージから決めるのではありません。「お花」(fiore[フィオーレ])のイメージはというと、多くの人は女性的と考えるでしょう。しかし男性名詞なんです。「鍵」(chiave[キアーヴェ])のイメージはと聞かれると、男性的?女性的?イメージは全く湧いてきませんね!

■さて今回は「名詞の複数形」について学習しましょう。

 イタリア料理の代表はと聞かれると、誰もがスパゲッティと言うでしょう。実はこれはspaghetto[スパゲット]の複数形なんです。spago[スパーゴ]は「紐(ひも)」の意味で、spaghetto[スパゲット]は「細長い紐(ひも)」の意味です。でもレストランでspaghetto[スパゲット](単数形)を注文したら、お皿にスパゲッティが1本しかのっていなかったら困ってしまいますね!
 イタリア語では、下の表に従って名詞の話尾を操作(変化)させ複数形を作ります。

  単数形 複数形
男性名詞 ‐o ‐i
女性名詞 ‐a ‐e
男性・女性名詞 ‐e ‐i
  単数形   複数形
例: camera[カーメラ](部屋)  camere[カーメレ]
  gelato[ジェラート](アイスクリーム) gelati[ジェラーティ]
  casa[カーザ](家) case[カーゼ]
  fiore[フィオーレ](花) fiori[フィオーリ]
  chiave[キアーヴェ](鍵) chiavi[キアーヴィ]
注意

 イタリア語の名詞の中には、ごく僅かですがcaffè[カッフェ](コーヒー)、[テ](紅茶)、città[チッタ](町)やbambù[バンブ](竹)のように語尾にアクセントが付いている名詞があります。これらの名詞は単数も複数も同じ形になります(単複同形)ので注意して下さい。

例:un caffè[ウン カッフェ](1杯のコーヒー)は、2杯のコーヒー(due caffè[ドゥーエ カッフェ])となります。
una città[ウーナ チッタ](1つの町)は、3つの町(tre città[トゥレ チッタ])となります。

 ついでに数字の言い方も一緒に覚えましょう!
 基数のワン(1)・ツゥ(2)・スリー(3)は、イタリア語でUno[ウーノ]・due[ドゥーエ]・tre[トゥレ]と言います。
 序数のファースト(I)・セカンド(II)・サード(III)は、イタリア語でprimo[プリーモ]・secondo[セコンド]・terzo[テルツォ]と言います。

例: primo atto[プリモ アット](第一幕)、
  secondo tempo[セコンド テンポ](第2楽章)、
  terzo binario[テルツォ ビナーリオ](3番線ホーム)

定冠詞について学習しましょう!

 一般的に名詞の前には冠詞が付いてきます。なかでも定冠詞が付いてくる場合が多いです。英語のthe book, the apple というようにtheにあたる言葉です。定冠詞を「その」とか「れいの」という意味で理解している方が多いようです。決してそのような名詞を特定化するような強い意味も働きもありません。「その本」とか「そのリンゴ」ではなく「本」は本で「リンゴ」はリンゴです。定冠詞は名詞の一部と考えてよいと思います。イタリア人の方は生まれたときからil libro[イル リーブロ](本)、la mela[ラ メーラ](リンゴ)と定冠詞が付いた名詞を聞いてイタリア語を学習します。私達も単語を覚えるときは定冠詞を付けて覚えるようにしましょう。

 定冠詞は、下の表のように、名詞の前に付けます。その名詞が男性名詞か女性名詞か、また母音で始まるのか、子音で始まるのかによって変わってきます。少し複雑のようですね!
 先ず、母音の音とはどんな音を言うのでしょう! 日本語のア(a)・イ(i)・ウ(u)・工(e)・オ(0)です。その他の音を子音といいます。

  単数 複数
男性名詞 子音の前 il biglietto(切符)
母音の前 |(o)'amico(友達)
i biglietti
gli amici
女性名詞 子音の前 la borsa(カバン)
母音の前 |(a)'aula(教室)
le borse
le aule
注意

 定冠詞の母音と名詞の母音が重なるときはl(o)'amico, l(a)'aulaのように定冠詞の母音を省略してl'amico, l'aulaと書きます。また複数形の場合はle auleのように省略せずに離します。

 しかし男性名詞の子音のなかには特別な子音があります。例えば
(1)不純なsと言い(s-impura)sで始まる男性名詞で次に子音が来る場合
例:studente[ストゥデンテ](男子学生)、spazio[スパーツィオ](空間・スペース)
(2)zで始まる男性名詞
例:zio[ツィーオ](おじさん)、zaino[ザーイノ](リュックサック)

その特別な子音のまえでは、定冠詞は下の表のようになります。

  単数 複数
男性名詞(特別な子音
s+子音、z-)
lo sutudente
lo zio
gli studenti
gli zii

単語帳

  1. Giappone[ジャッポネ](giapponese[ジャッポネーゼ])
    日本(日本人/日本語/日本の)
  2. Italia[イタリア](italiano/a[イタリアーノ/ナ])
    イタリア(イタリア人/イタリア語/イタリアの)
  3. Va bene.[ヴァ ベーネ] いいです(OKです)
    Va bene, cosi?[ヴァ ベーネ コシ?](これでいいですか?)
  4. D'accordo.[ダッコルド] 了解です。 賛成です。
  5. il caffè[イル カッフェ] コーヒー
  6. il tè verde(inglese)[イル テ ヴェルデ(イングレーゼ)] 緑茶(紅茶)
  7. l'acqua[ラクア] 水
    l'acqua minerale[ラクア ミネラーレ](ミネラルウォーター)
  8. lo spumante[ロ スプマンテ] 発泡酒ワイン
  9. il vino bianco(rosso)[イル ヴィーノ ビアンコ(ロッソ)] 白ワイン(赤ワイン)
  10. la birra[ラ ビルラ] ビール
    la birra alla spina[ラ ビルラ アルラ スピーナ](生ビール)
    la birra in lattina[ラ ビルラ イン ラッティーナ](缶ビール)
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