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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ローマ歴史地区(Centro storico di Roma)その11
サンタ・マリア・イン・コスメディン教会〈真実の口〉とその周辺 1980/1990年登録


「真実の口」の前にて:樋口佳代さん提供

 カンピドーリオ、パラティーノ、アヴェンティーノの丘からテヴェレ川にかけての地域は、昔から交通の要衝だったところです。このあたりはローマ時代、町の商業港があり、テヴェレ川の水運を利用した市場として栄えた場所でした。フォロ・オリトーリオForo Olitorio 野菜市のフォロ)が広がり、さらにはパラティーナの丘からフォロ・ロマーノに沿ってフォロ・ボアリオForo Boario 畜牛市のフォロ)が広がり現在の真実の口広場(Piazza della Bocca della verità)へと続いていました。ローマ建国の父、ロムルスとレムスが狼に育てられたといわれる窪地(Velabrum ヴェラブルム)もこの辺りで、ローマで最も古い歴史のある地域です。

 キリスト教の世界では、聖像が木版・大理石・象牙などに描写・彫造され、キリスト教信仰の純粋性が維持されキリスト教文化が拡大されてきました。726年、ビザンチン皇帝レオン3世(在位717-741)は「聖像禁止令」を発布して聖像制作活動を禁止しました。更に教会や修道院は徹底的な弾圧を受ける「聖像画(イコン)破壊運動」(イコノクラスム)が起こり、反対派の人々は次々と弾圧・処刑されました。これらの弾圧から逃れてローマに亡命してきたギリシャ人たちが、テヴェレ川の近くのこの地域に住むようになりました。教皇ハドリアヌス1世(在位:772795)は、オラトリオ(集会施設)であった場所にギリシャ人たちのための聖堂に造り替え与えました。その教会の姿が素晴らしかったので、ギリシャ語で「素晴らしく装飾された」を意味する「イン・コスメディン」という言葉を付け「おしゃれな聖母マリア教会」(Chiesa di Santa Maria in Cosmedin)と言う愛称で呼ばれるようになりました。
 教会内部は、古い円柱を利用し、身廊の両側に側廊が位置する三廊式のバジリカ様式で、見どころは、ゴスマーティ様式で装飾されたモザイクの床や主祭壇の天蓋、聖具室(sagrestia)にあるモザイク画やビザンチン風の聖母子のイコンなどがあります。またバレンタインデーで日本でも馴染み深い殉教者聖バレンティーノの頭蓋骨が正面に向かって左の祭壇に納められています。
 また12世紀につけ加えられた2連窓・3連窓のある7層のロマネスク様式の鐘楼をもつこの教会がローマで最も美しいと言われています。
 オードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペックによる映画「ローマの休日」で有名になった「真実の口」(Bocca della verità)がある教会でもあります。映画では、ウソをつく人間がこの口に手を入れると抜けなくなるという伝説をグレゴリーペックがユーモアたっぷりに検証するシーンがあり、この場面で、一躍、ローマの一大観光スポットになりました。
 この教会に入ってすぐの柱廊式玄関左手の壁面に、通称「真実の口」と呼ばれているものがはめこまれていて、「嘘をついた人は手を入れるとかみ切られる」という伝説が中世以来言い伝えられています。この「真実の口」は、古代ローマ時代の舗装街路に降る雨水を集めて、街路下を通っている下水道に流し込むためのマンホールの蓋であったと言われています。1632年に外壁から出てきた円形の石盤には海神のトリトーネの顔が彫られています。素材はトルコ製の大理石、直径175cm、重さ1,200kgもあります。下水道の蓋だったものを、教会建築時に石材として使ったのではないかと思われます。
 サンタ・マリア・イン・コスメディン教会の前の広場は「真実の口広場」と呼ばれています。広場には、1715年に造られた「トリトーネの噴水」があり、ベルニーニの影響が濃いバロック風の噴水です。噴水の向こう、道路を挟んで二つの神殿があることに注目して下さい。一つは手前の円形の征服者ヘラクレスの神殿(Tempio di Ercole Vincitore)、もう一つは向こう側の長方形のポルトゥヌス神殿(Tempio di Portuno)です。
 20本のコリント式柱で囲まれ円形をしたヘラクレスの神殿は、フォロ・ロマーノのヴェスタの神殿に形が似ていることから、最近まで「ヴェスタの神殿」とも呼ばれていました。しかし大理石に刻まれた献辞からこれが征服者ヘラクレスに捧げられた神殿であることが判明しました。またこの場所は畜産業者が集まるフォロ(Foro Boario)であり、家畜の守り神でもあるヘラクレスに捧げられた神殿と考えられます。ローマに残る大理石の神殿としては最も古いとされています。紀元前2世紀終わりに建造されたものです。
 ヘラクレスの神殿から右奥に見えるのがポルトゥヌス神殿です。河と港の神ポルトゥヌスに捧げられた神殿。建設は紀元前4世紀から前3世紀にさかのぼりますが、その後修復を重ね、現在の建物は紀元前1世紀のものです。

■サンタ・マリア・イン・コスメディン教会のガイドと写真
http://www.romasegreta.it/ripa/piazza-della-bocca-della-verita.html
http://www.sacred-destinations.com/italy/rome-santa-maria-in-cosmedin/photos

新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第27回

このシリーズ「誰でもわかるイタリア語」では、イタリア語の基礎を文法用語に頼って説明することを出来るだけ避け、誰にでもわかるようにまとめています。また「単語帳」のコーナーを設けていますので、少しずつ単語や簡単なフレーズを覚えるようにして下さい。

最上級を表す表現について

 会話の中で、「大変(最も)~だ」と強調したいときがあります。副詞(molto, assai)などを使って形容詞などを強調したり、接頭辞(arci-, stra-, ultra-, sopra-, extra-, super-)などを形容詞などの前に付けたりして表します。また形容詞を繰り返して表すこともあります。

例:

ricco(お金持ち) - molto ricco, straricco, ricco ricco
forte(強い) - molto forte, extraforte, forte forte
arcicontento
(ご満悦の)
stracarico
(積みすぎの・過重の・荷重の)
ultramoderno
(超モダンな)
sopraffino
(極上の)
extravergine
(エクストラバージンの)
supermercato
スーパーマーケット

■また形容詞や副詞の語尾を操作して表すことも出来ます。語尾にissimoを付けます

例:

buono buonissimo(=molto buono)
bravo bravissimo
bene benissimo
magro magrissimo

ただし語尾が-coと-goで終わるものは-chi,-ghiに直しssimoを付けます

例:

poco pochissimo
stanco stanchissimo
largo larghissimo
lungo lunghissimo
Luca è un bravissimo giocatore di calcio.
ルーカ エ ウン ブラビッシモ ジョカトーレ ディ カルチョ
ルカはサッカーの名プレイヤーです。
Luisa è una bellissima signorina.
ルイーザ エ ウーナ ベッリッシマ シニョリーナ
ルイーザは大変美しい女性です。
Queste cioccolate sono dolcissime.
クエステ チョッコラーテ ソーノ ドルチッシメ
このチョコレートは大変甘い。
Questa strada è larghissima.
クエスタ ストゥラーダ エ ラルギッシマ
この道路は道幅が大変広い。
Questo ponte è lunghissimo.
クエスト ポンテ エ ルンギッシモ
この橋は大変長い。
Siamo stanchissimi e andiamo a dormire.
シアーモ スタンキッシミ エ アンディアーモ ア ドルミーレ
疲れているので、寝ましょう。

■以下の形容詞には固有な比較級と最上級があります。またそれぞれ固有の形容詞としてよく使われます。

原級 比較級 最上級
buono(善い) migliore ottimo
cattivo(悪い) peggiore pessimo
grande(大きい) magggiore masssimo
piccolo(小さい) minore minimo
alto(高い) superiore supremo/sommo
basso(低い) inferiore infimo

例:

il piano superiore (上の階) l'uomo migliore (善良な人)
la velocità massima (最高速度) il tempo pessimo (最悪の天気)
la corte suprema (最高裁判所) la merce di infima qualità (粗悪品)
l'ottima qualità (最高品質) la maggiore età (成年)

■「~のなかで、最も(いちばん)~だ」という最上級の表現は、比較の表現とよく似ています。作り方は、「定冠詞+più(meno)+形容詞)」で、piùの前に定冠詞を付けることを忘れないでください。
定冠詞は主語の性(男性・女性)に合わせてilまたはlaを付けて下さい。
「~のなかで」には前置詞diを使うのが普通ですが、trafraを用いることもあります。

Marco è il più piccolo dei nostri figli.
マルコ エ イル ピュ ピッコロ デイ ノストゥリ フィーリ
マルコは子供の中で最も小さい。
Lucia è la più simpatica dei miei amici.
ルチーア エ ラ ピュ シンパーティカ デイ ミエイ アミーチ
ルチアは私の友達の中でいちばん感じがいい。
Questo stadio è il più grande della città.
クエスト スタディオ エ イル ピュ グランデ デルラ チッタ
このスタジアムは町でいちばん大きい。
Il Po è il più lungo di tutti i fiumi d'Italia.
イル ポ エ イル ピュ ルンゴ ディ トゥッティ イ フィウーミ ディタリア
ポー河はイタリアの川の中でいちばん長い。
Questo libro è il più prezioso tra quelli del professore.
クエスト リーブロ エ イル ピュ プレツィオーゾ トゥラ クエルリ デル プロフェッソーレ
この本は先生の本の中で最も貴重なものです。

■「これは(それは)~です」を最初に説明し、さらにその名詞を最上級で説明する場合があります。このような表現は会話でもよく使われます。作り方は、「(定冠詞+名詞+più(meno)+形容詞)」の順で表します。

Questo è il palazzo più antico della città.
クエスト エ イル パラッツォ ピュ アンティーコ デルラ チッタ
これは町の最も古い建物です。
Il calcio è lo sport più popolare dell'Italia.
イル カルチョ エ ロ スポルト ピュ ポポラーレ デッリタリア
サッカーはイタリアで最も人気のあるスポーツです。
Quella cravatta è la meno costosa fra tutte.
クエルラ クラヴァッタ エ ラ メーノ コストーザ フラ トゥッテ
あのネクタイは全てのなかで最も安いです。
Per me è la cosa migliore che abbia potuto fare.
ペル メ エ ラ コーザ ミリオーレ ケ アッビア ポトゥート ファーレ
自分に出来た最善のことだ。

単語帳

 「耳を持っている」、「目がまわる」、「面食らう」、「背に腹は変えられない」など体の一部を使った言葉遣いがあります。今回は体の部分を使ったイタリア語の表現について学習します。

la testa(頭):

Non sto bene: mi gira la testa.
具合が悪く、目まいがします。

la faccia(顔):

Tira un vento che taglia la faccia!
肌を刺すような風が吹いている。

i capelli(髪):

Sono stanco di questa faccenda, ne ho fin sopra i capelli!
この件について疲れた。もううんざりだ。

l'orecchio(耳):

Carlo, mi ascolti? Sì, sono tutt'orecchi!
カルロ、聞いている?え-、全身を耳にして聞いています。

l'occhio(目):

Ho parlato con lei a quattr'occhi e le ho spiegato tutto.
彼女と二人で話しました。彼女にすべて説明しました。

il collo(喉):

Quel fatto mi è capitato fra capo e collo.
あの出来事が不意に起きた。

il naso(鼻):

ficcare(mettere) il naso nella faccende altrui.
他人の事を詮索する、他人の事に口をはさむ。

la bocca(口):

Ha una cattiva memoria: non ricorda dalla bocca al naso.
彼は記憶力が悪く、うろ覚えである。

la spalla(肩):

Carlo non ha un lavoro: vive alle spalle dei genitori.
カルロは仕事がないので両親に養われている。

il braccio(腕):

Ho invitato Maria a braccia aperte.
私はマリアを大歓迎して招待しました。

il gomito(肘):

Ieri sera Franco ha alzato troppo il gomito.
昨晩フランコは大変酔っぱらいました。

la mano(手):

Mario spende tutti i soldi che guadagna: ha le mani bucate.
マリオは稼ぐお金をみんな使ってしまう浪費癖があります。

il dito(指):

Berrei due dita di vino.
少量のワインを飲みたい。
I miei amici si contano sulle dita di una mano.
指で数えるほどしかいない友達。

la gamba(脚):

Luigi è un ragazzo in gamba.
ルイジは優秀(有能)な男の子だ。
Bisogna fare il passo secondo la gamba.
自分の実力をわきまえて行動する必要がある。

il piede(足):

Luigi ha deciso su due piedi di lasciare il lavoro.
ルイジは仕事を辞める事を即座に決めた。
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