文化講座
シエーナ歴史地区 Centro storico di Siena 1995年登録
スケッチ 樋口佳代
シエーナはフィレンツェから南に約60kmに位置し、標高332m、人口約57000人のトスカーナ州にある町です。中世の面影が色濃く残っており、あたかも時計の針が中世で止まっているようです。ここは三つの丘の上に造られた街である上、周囲は中世の城壁に囲まれているため坂道が多く、また、町を歩いていると煉瓦のような赤茶色の建物が目に映ります。シエーナ南部はテラコッタ(terracotta)の産地でも有名です。この色がまさにこの町の色なのでしょう。絵の具にもシエーナ色があるようです。
また歩いているとローマでよく見かける「牝狼に育てられる双子の兄弟ロムルスとレムス」の彫刻をよく見かけます。伝説ではロムルスによりローマが建国されたことはよく知られているところですが、一体どうしてここシエーナでよく見かけるのでしょうか!兄に殺されたレムスの息子セニウスとアスキウスはローマを逃れてシエーナを建国したと伝えられており、シエーナはセニウスの名前に由来しています。
ローマ時代には軍事植民都市として栄え、中世・ルネサンス期にはローマと北ヨーロッパを結ぶ主要街道上にあったため、両替所が生まれ、やがては銀行業へと発展し銀行城下町としてのシエーナの繁栄を確固たるものにしたのでした。隣国のフィレンツェとは長く激しい敵対関係にあって抗争が絶えませんでした。しかし1260年、「モンタペルティの戦い」(Battaglia di Montaperti)で7万人の兵士のフィレンツェ軍に対して僅か2万人足らずのシエーナ軍が奇跡的な勝利を収めたのでした。シエーナが最も栄えた時代は、フィレンツェに勝利を収めてから約2世紀ぐらいの間でした。勝利の感謝の気持ちを示そうとして、シエーナの人々は芸術家たちに立派な聖母像を描くよう制作を依頼します。その代表作がドゥッチョ(Duccio di Buoninsegna 1255-1318)の傑作「荘厳の聖母」(Maestà)で、戦勝50年を記念して大聖堂の主祭壇を飾ることになりました。現在は大聖堂横に造られた大聖堂付属博物館で見ることが出来ます。その他ロレンツェッティ兄弟(Pietro Lorenzetti 1319-1348, Ambrogio Lorenzetti 1290-1348)、シモーネ・マルティーニ(Simone Martini 1284-1344)、ベッカフーミ(Domenico Beccafumi 1484-1551)などシエーナ派の画家たちの作品には「聖母」を描いたものが多いことに気付くでしょう。
街の中心は、カンポ広場(Piazza del Campo スケッチ画)で煉瓦を敷きつめた扇の形をしており、白い大理石で9分割に目地取りされているのは市政を担った9人委員会の象徴とされています。手前の華麗なシルエットを見せながら聳えている102mもあるマンジャの搭(Torre del Mangia)とプッブリコ宮(Palazzo Pubblico)が、ちょうど広場の遠近法の消失点の位置を占めるかたちになっている調和のとれた美しい広場で、市民の憩いの場でもあります。
最後に、シエーナが観光地として脚光を浴びるようになったのは、1147年から引き継がれてきた競馬“パリオ”のお祭りです。パリオは、年2回、シエーナに聖母が出現したという、7月2日と8月16日の「聖母被昇天祭」にカンポ広場で行われます。このお祭りは、町を17の地区に分割されたコントラーダ(contrade)といわれる自治組織の対抗競馬のお祭りで、シエーナの人々にとって誇りであり結束の象徴です。ここでも聖母像の描かれた優勝旗(Palio)を獲得するためにすさまじい競馬が繰り広げられます。シエーナで最も熱いこのお祭りを見に世界中から観光客が押し寄せます。
■シエーナ(Siena)へのアクセス
シエーナへは鉄道よりバスの方が便利です。フィレンツェからバスで約75分。バスの時刻表と料金についてはSITA社の、そしてローマ・ミラノからのバスの時刻表と料金についてはSENA社のホームページを参考にしてください。
SITA社:http://www.sitabus.it/wps/portal
SENA社:http://www.senabus.it
■シエーナ(Siena)の写真
http://www.globopix.net/fotografie/siena_1.html
■ドゥオーモ(Duomo)についての案内
http://www.sacred-destinations.com/italy/siena-duomo
■カンポ広場の360°パノラマ映像
http://www.italy360.it/italia/siena/il-campo.html
新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第4回
前回は il libro italiano[イル リーブロ イタリアーノ](イタリアの本)、la macchina nuova[ラ マッキナ ヌオーヴァ](新しい車) のように形容詞の使い方を学びました。形容詞には名詞と違って固有な性を持っていませんでした。しかし形容する名詞の性(男性名詞・女性名詞)や数(単数・複数)に左右され形容詞も語尾変化しました。
■「だれだれの・なになにの」の言い方を学びましょう。
今回は、所有を表す表現について学びたいと思います。例えば「マーリオの車」と言うときはイタリア語でどう言うのでしょうか。 la macchina di Marioと言うように名詞と名詞を繋げる前置詞のdiを使います。
la casa di Luca[ラ カーザ ディ ルーカ](ルーカの家) |
il compleanno di Maria[イル コンプレアンノ ディ マリーア](マリアの誕生日) |
il giocatore di calcio[イル ジョカトーレ ディ カルチョ](サッカーの選手) |
la carta di credito[ラ カルタ ディ クレディト](クレジットカード) |
la lezione di musica[ラ レツィオーネ ディ ムージカ](音楽のレッスン) |
la scuola di lingue[ラ スクオーラ ディ リングエ](語学学校) |
■「だれだれの~」(所有形容詞)の言い方を学びましょう。
「私の本」「彼のカバン」「君たちのお父さん」と言うことがあります。
mio[ミーオ] (私の) |
tuo[トゥオ] (君の) |
suo[スオ] (彼の・彼女の・あなたの) |
nostro[ノストゥロ] (我々の) |
vostro[ヴォストゥロ] (君たちの) |
loro[ローロ] (彼の・ 彼女らの・あなたたちの) |
上の表にあるように、所有形容詞は直接名詞にかかるので形容詞と同じように名詞の性・数に左右され語尾が変化します。また定冠詞を付けることも忘れないようにしましょう。
il mio passaporto[イル ミーオ パッサポルト](私のパスポート) |
la tua macchina[ラ トゥア マッキナ](君の車) |
i miei amici[イ ミエイ アミーチ](私の友人たち) |
il nostro ufficio[イル ノストゥロ ウフィッチオ](私達の仕事) |
la vostra scuola[ラ ヴォストゥラ スクオーラ](君たちの学校) |
英語ではhis(彼の)- her(彼女の)と言うように男性・女性の区別がありますが、イタリア語では男性・女性の区別がありません。形容詞と同じように、所有される名詞の性と数に左右されます。例えば、il suo cane[イル スオ カーネ]と言う場合、il cane(犬)が男性・単数ですので il suoとなり、「彼の犬」か「彼女の犬」かはそれだけでははっきりしません。la macchina[ラ マッキナ](車)は女性ですので、la sua macchina[ラ スア マッキナ]となり、「彼の車」又は「彼女の車」の意味となります。
■下の表にあるように家族・親族を表す名詞に所有を表す形容詞を付ける場合は注意しなければなりません。家族・親族を表す名詞が単数の場合、例外として定冠詞を省きます。
il padre[イル パードゥレ](お父さん) | la madre[ラ マードゥレ](お母さん) |
il figlio[イル フィーリオ](息子) | la figlia[ラ フィーリア](娘) |
il fratello[イル フラテルロ](兄弟) | la sorella[ラ ソレルラ](姉妹) |
il marito[イル マリート](夫) | la moglie[ラ モーリエ](妻) |
il nonno[イル ノンノ](祖父) | la nonna[ラ ノンナ](祖母) |
il zio[イル ツィーオ](おじ) | la zia[ラ ツィーア](おば) |
il cugino[イル クジーノ](男性のいとこ) | la cugina[ラ クジーナ](女性のいとこ) |
il nipote[イル ニポーテ](甥、男性の孫) | la nipote[ラ ニポーテ](姪、女性の孫) |
il cognato[イル コニャート](義兄弟) | la cognata[ラ コニャータ](義姉妹) |
mio padre[ミオ パードゥレ] (私のお父さん) |
tua madre[トゥア マードゥレ] (君のお母さん) |
nostro zio[ノストゥロ ツィーオ] (我々のおじ) |
vostra nonna[ヴォストゥラ ノンナ] (君たちの祖母) |
しかし家族・親族を表す名詞であっても複数の場合とか、愛称語や名詞の語尾などを操作して親愛の情などを表す(変意語)ような場合は定冠詞を付けて下さい。
i miei fratelli[イ ミエイ フラテルリ] (私の兄弟たち) |
le tue sorelle[レ トゥエ ソレルレ] (君の姉妹たち) |
il mio babbo[イル ミオ バッボ] (私のお父ちゃん) |
la mia mamma[ラ ミア マンマ] (私のママ) |
il mio nipotino[イル ミオ ニポティーノ] (私の可愛い孫) |
la nostra sorellina[ラ ノストゥラ ソレッリーナ] (私達の可愛い妹) |
■「誰のですか?」に対して、「私のです」又は「私のものです」と答えます。
“Di chi è questa macchina?”[ディ キ エ クエスタ マッキナ](この車は誰のですか?)に対して3通りの答えが考えられます。
(a) “È di Mario.” [エ ディ マーリオ](マーリオの車です) |
(b) “È la sua.” [エ ラ スア](彼のものです) |
(c) “È sua.” [エ スア](彼のです) |
(a)は具体的に「だれの」という所有者の名前があるので、前置詞diを使って表しています。
(b)は名詞が省略され所有を表す形容詞に定冠詞が付いたもので「だれのもの」と言うように名詞的に表しています(所有代名詞)。
(c)は定冠詞も名詞も省略されただ単に所有を表す形容詞で「誰の」というように形容詞的に表しています。
- Questo è il suo parere, non è il mio.
- クエスト エ イル スオ パレーレ ノネ イル ミオ
- これは彼の考えであって私のではない。
- Il mio è tuo, il tuo è mio.
- イル ミオ エ トゥオ、 イル トゥオ エ ミオ
- 私のものは私ので、君のものは君のだ。
単語帳
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il giardino [イル ジャルディーノ](庭)
: il giardino pubblico [イル ジャルディーノ プッブリコ](公園)、
広い公園は il parco[イル パルコ]
: il parco nazionale[イル パルコ ナツィオナーレ](国立公園)、
il parco dei divertimenti[イル パルコ ディ ディヴェルティメンティ](遊園地) -
la spesa[ラ スペーザ](買い物、ショッピング、出費)
:le spese di trasporto[レ スペーゼ ディ トゥラスポルト](交通費)、
le spese per la luce e il gasi[レ スペーゼ ペル ラ ルーチェ エ イル ガス](光熱費) -
fratello[フラテッロ](兄弟)- sorella[ソレッラ](姉妹)
:会話の中では兄と弟、姉と妹を grande[グランデ](大きい)・piccolo/la [ピッコロ/ラ](小さい)を使って区別します。 -
il formaggio[イル フォルマッジョ](チーズ)
: la pizza di quattro formaggi[ラ ピッツァ ディ クアットゥロ フォルマッジ](4種類のチーズのピザ)
イタリアの代表的なチーズ
: parmigiano[パルミッジャーノ](パルメザンチーズ)、
mozzarella[モッツァレッラ](モッツァレッラチーズ)、
ricotta[リコッタ](リコッタチーズ)、
gorgonzola [ゴルゴンゾーラ](ゴルゴンゾーラチーズ)などがあります。 -
la stagione[ラ スタジオーネ](季節)
:quattro stagioni[クアトゥロ スタジオーニ](四季)、
alta stagione[アルタ スタジオーネ](ハイシーズン)、
bassa stagione[バッサ スタジオーネ](シーズンオフ) -
il portafoglio[イル ポルタフォーリオ](財布)
:il portachiavi[イル ポルタキアーヴィ](キーホルダー)、
il portafortuna[イル ポルタフォルトゥーナ](お守り) -
l'orologio[ロロロージオ](時計)
:l'orologio da polso[ロロロージオ ダ ポルソ](腕時計)、
l'orologio da tasca[ロロロージオ ダ タスカ](懐中時計)、
(l'orologio a)sveglia[(ロロロージオ ア) ズヴェーリア](目覚まし時計) -
vicino[ヴィチーノ](近くの・近くに)
:vicini di casa[ヴィチーニ ディ カーザ](近所の人)、
qui vicino[クイ ヴィチーノ](この近くに) -
lontano[ロンターノ](遠くの・遠くに)
:lontano da casa[ロンターノ ダ カーザ](家から遠く)、
lontano da qui[ロンターノ ダ クイ](ここから遠い) -
preferito[プレフェリート](お気に入りの・大好きな)
:la canzone preferita[ラ カンツォーネ プレフェリータ](お気に入りの歌)、
la squadra preferita[ラ スクアードゥラ プレフェリータ](ひいきのチーム)