文化講座
ラヴェンナの初期キリスト教建造物群(Monumenti paleocristiani di Ravenna )
その2 1996年登録
サンタポッリナーレ・イン・クラッセ大聖堂(Basilica di Sant'Apollinare in Classe)
サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ大聖堂(Basilica di San'Apollinare Nuovo)
ダンテの墓(Tomba di Dante Alighieri)
スケッチ画 樋口佳代
ラヴェンナから南東へ約6kmのところにクラッセ(Classe)という町があります。ここは古代ローマ時代にアウグストゥス帝により東地中海艦隊の基地が造られました。クラッセとは艦隊を意味する「クラッシスclassis)」から付けられた地名です。西ローマ帝国の最初の皇帝ホノリウスは首都をミラノからラヴェンナに移し、この町はローマに次ぐキリスト教の中心地として大変栄えました。476年に西ローマ帝国が滅亡した後も、約300年にわたってその役割を担い続けることになるのです。
サン・ヴィターレ大聖堂とほぼ 同時期に造られたもう一つの教会がサンタポッリナーレ・イン・クラッセ大聖堂(Basilica di Sant'Apollinare in Classe)です。549年、ラヴェンナの最初の司教だった聖アポッリナーレの遺体を納めるため献堂されました。典型的な長方形のバシリカ式の教会です。聖堂内部は、24本の美しいコリント式の大理石の柱によって三廊式に分かれています。特に後陣の天井には、「キリストの変容」を主題としたモザイク画が寓意的・牧歌的に描写されており、見るものに何とも言えない心の平安を与えてくれます。「キリストの変容」とは、聖書によれば、イエスがエルサレム入城の前にペテロ、ヨハネ、ヤコブを連れて山で祈っている時、モーゼとエリアが現れ、やがて神の声を聞くと言う話で、キリストが神の子であることを弟子たちに示された話です。(ルカ福音書9章28~36節)
この教会は港に近いため人の往来も多く、また海からの外敵から聖人の遺骨を守るには、より安全な所に移すほうがよいと考え、9世紀の中頃、ラヴェンナの市城内にあるサンタポッリナーレ・ヌオーヴォ大聖堂(Basilica di Sant'Apollinare Nuovo スケッチ画)に移され、クラッセと同じ聖堂名に「新しい」を意味する「ヌオーヴォ(Nuovo)」という形容詞を冠する名前が付けられました。しかしこの聖堂は、東ゴート族の王テオドリクスによって496年にアリウス派のために造られた聖堂で、その後560年にカトリックの聖堂として献堂されました。バジリカ式の教会で、聖堂内部は、左右12本ずつの大理石の柱で三つの身廊が区分されています。その柱列の上部の壁面は三段に別れ、全面にモザイク画が施されています。上段のモザイク画には「キリストの生涯」が描かれています。中段には窓が並んでおり、その間の壁に16人の預言者や聖人の立像がモザイク画で描かれています。そして下段のモザイク画は、祭壇に向かって行進する人々の荘厳で華麗な姿が描かれており、右側の列は、天使に守られた「玉座に座るキリスト」に向かう殉教者の行進で、聖ペテロに先導されています。また左側の列は天使に守られた「玉座に座る聖母子」に向かって行進する女性の殉教者たちで、キリストの誕生を祝福するためにやってきたという「東方の三博士」に先導されています。おのおのの人像は画一的で頑くなな正面性に縛られているものの、整然とした配列がより律動感を生み出し、また左右の壁に男性と女性の行列を対称的に描くことにより空間をダイナミックに演出していると思います。そのビザンチン・モザイク芸術の完成度には驚かされます。
ダンテ(Dante Alighieri 1265 - 1321)の墓:
フィレンツェの文豪ダンテは、外交官としてローマへ出掛けている時にフィレンツェの政治的内紛のため市民権が剥奪され、37歳の時、国外追放の判決を受け放浪生活に入ることになります。ヴェローナやガルダ湖畔など北イタリアを遍歴した後、1317年からラヴェンナの領主グイード・ダ・ポレンタの賓客となり、4年後マラリアで亡くなりました。遺体はサン・フランチェスコ聖堂に埋葬されました。現在の墓廟は1780年に教会に隣接するような場所に設置されました。新古典主義様式風に「小神殿(Tempietto)」と呼ばれる建造物ですが、地元の人たちは方言で「砂糖入れポット(la zucaria)」と呼んでいます。
遍歴した先では、領主や商人たちの好意により多くの文学作品を書くことが出来ました。彼の最高傑作の「神曲(Divina Commedia)」もここラヴェンナで完成することが出来ました。彼の洗練された美しいイタリア語は、現在のイタリア語の基礎となっており、ダンテの墓があるラヴェンナの町は、イタリア語の聖地と言えるでしょう。
■サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ教会(Basilica di Sant'Apollinare Nuovo?スケッチ画)とモザイク画
http://www.sacred-destinations.com/italy/ravenna-st-apollinare-nuovo
http://www.paradoxplace.com/Perspectives/Venice%20&%20N%20Italy/Ravenna/San%20Apollinare%20Nuovo.htm
■サンタポッリナーレ・イン・クラッセ教会(Basilica di Sant'Apollinare in Classe)とモザイク画
http://www.sacred-destinations.com/italy/ravenna-st-apollinare-in-classe
http://www.paradoxplace.com/Perspectives/Venice%20&%20N%20Italy/Ravenna/San%20Apollinare%20in%20Classe.htm
■ダンテの墓(Tomba di Dannte Alighieri)の写真
http://www.paradoxplace.com/Perspectives/Venice%20&%20N%20Italy/Ravenna/Tombs%20and%20Memorials.htm
新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第12回
前回は動詞piacereの場合について、使役動詞(fare・lascere)の場合について、そして知覚動詞(vedere・guardareなど)の場合について学習しました。今回も引き続き2つの動詞の間に前置詞(aまたはdi)を必要としない場合について説明します。
E:動詞preferireの場合:preferire + 動詞の原形
preferireという動詞は、「~〈の方を〉好む、選ぶ」の意味で、Preferisco un caffè.(コーヒーがいいです)とか、Preferisco la musica alla pittura.(絵より音楽が好きです)のように使います。
「~する方がいい」とか「~するより~する方を好む」と言う場合、動詞の原形を直接従えます。
- 1. Preferisco mangiare a casa.
- プレフェリスコ マンジャーレ ア カーザ
- 家で食べる方が好きです。
- 2. Preferiamo andare in macchina.
- プレフェリアーモ アンダーレ イン マッキナ
- 私たちは車で行く方がいいです。
- 3. Marco preferisce guardare la TV a casa che vedere il film al cinema.
- マルコ プレフェリッシェ グアルダーレ ラ ティーヴ ア カーザ ケ ヴェデーレ イル フィルム アル チネマ
- マルコは映画館で映画を見るより、テレビを見る方が好きです。
F:動詞desiderareの場合:desiderare + 動詞の原形
desiderareという動詞も「~を欲する、切望する」の意味で、Desidero un bicchiere d'acqua.(水が一杯欲しい)とかDesidero il tuo aiuto.(君の助けが欲しい)などのように動詞volereと同じように使います。
「~することを望む、~することを希望する」と言う場合も、動詞の原形を直接従えます。
- 1. Desidero star solo(sola).
- デジーデロ スタル ソーロ ソーラ
- ひとりで居たい。
- 2. Angela desidera restare ancora un mese in Italia.
- アンジェラ デジーデラ レスターレ アンコーラ ウン メーゼ イン イターリア
- アンジェラは後一月イタリアに留まりたい。
- 3. Noi desideriamo vederti prima di partire
- ノイ デジデリアーモ ヴェデルティ プリーマ ディ パルティーレ
- 私たちは出発する前に君に会いたい。
G:非人称動詞の場合:非人称動詞の場合(3人称単数) + 動詞の原形
「雨が降る(piovere)」とか「雪が降る(nevicare)」など天候を表す動詞は、非人称的に使われます。動詞の変化はつねに3人称単数でpiove, nevicaとなります。
また動詞の意味するところから非人称的に使われる動詞もあります。例えば、「~が起きる」とか「~が必要である」のように言う場合です。次に来る動詞は原形で変化する必要がありません。大変よく使う構文ですのでしっかり覚えましょう。
代表的な非人称動詞には、 「~が起こる」(accadere, succedere, capitare, avvenire)、「~は必要である」(bisognare, occorrere) 、「~のように思われる」(sembrare, parere)、その他に「~で十分である」(bastare)、「~が重要である」(importare)、「~した方がよい」(convenire)などがあります。 |
- 1. Non conviene aspettare più.
- ノン コンヴィエーネ アスペッターレ ピュ
- もうこれ以上待たないほうがいい。
- 2. Basta chiedere per capire.
- バスタ キエーデレ ペル カピーレ
- 理解するためには人に聞けばよい。
- 3. Occorre far presto.
- オッコーッレ ファル プレスト
- 急ぐ必要がある。
単語帳
前回に引き続き前置詞を使った成句的表現をまとめてみました。ここでは日常会話などによく使うものを選びました。
G. 前置詞 su の場合
- sul serio[スル セーリオ](まじめに、本気で)
- Non prendere sul serio
- dare su[ダーレ ス](~に面する)
- Le finestre danno sul giardino.[レ フィネストゥレ ダンノ スル ジャルディーノ](窓は庭に面している)
- tirarsi su[ティラルシ ス](立ち直る)
- Devo tirarmi su dopo quella faccenda.[デーヴォ ティラルミ ス ドーポ クエルラ ファッチェンダ](あの出来事から立ち直らなければならない)
イタリアの代表的なドルチェ「ティラミス(Tiramisù)」は、tira「引き上げて!」mi「私を」sù「上に」の意味で、「私を元気づけて!」「私を励まして!」の意味です。女性が愛の告白にティラミスを作って男性にプレゼントすることもあるようです。 - sul momento[スル モメント](直ぐに、即座に)
- Maria non può capire sul momento.[マリーア ノン プオ カピーレ スル モメント](マリアは直ぐには理解が出来ない)
- su(sui) due piedi[ス/スイ ドゥーエ ピエーディ](直ぐに、ただちに)
- È una cosa da fare sui due piedi.[エ ウーナ コーザ ダ ファーレ スイ ドゥーエ ピエーディ](直ぐにやらなければならないことです)
H.前置詞 fraまたはtra の場合
- fra poco[フラ ポーコ](間もなく、少し後で)
- Sono stanco e fra poco smetterò di studiare.[ソーノ スタンコ エ フラ ポーコ ズメッテロ ディ ストゥディアー レ](疲れたので、間もなく勉強を止めるつもりです)
- fra l'altro[フラ ラルトゥロ](〈その中には~〉も、とりわけ、そのうえ)
- Fra l'altro ci sono i celebri affreschi di Giotto.[フラ ラルトゥロ チ ソーノ イ チェレブリ アッフレスキ ディ ジョット](その中にはジョットのフレスコ画もあります)
- Non possiamo vederci stasera perché ho molte cose da fare e, fra l'altro, non mi sento troppo bene.[ノン ポッシアーモ ヴェデルチ スタセーラ ペルケ オ モルテ コーゼ ダ ファーレ エ フラ ラルトゥロ ノン ミ セント トゥロッポ ベーネ](今夜、大変忙しくて会うことが出来ません。そのうえあまり具合がよくありません)
- fra sé (e sé)[フラ セ エ セ](自分で、心の中で、ひとりで)
- Prima di decidere, deve pensare bene fra sé e sé.[プリーマ ディ デチーデレ デーヴェ ペンサーレ ベーネ フラ セ エ セ](決心する前に自分でよく考えるべきだ)
- parlare fra i denti[パルラーレ フラ イ デンティ](ぼそぼそ話す)
- È difficile capirlo perche parla sempre fra i denti.[エ ディッフィーチレ カピルロ ペルケ パルラ センプレ フラ イ デンティ](彼はいつもぼそぼそ話すので分かり難い)
- fra di ~[フラ ディ](~の間で、お互いに)
- Fra di noi due non ci sono segreti.[フラ ディ ノイ ドゥーエ ノン チ ソーノ セグレティ](私たち二人の間に秘密はありません)