文化講座
第17回:「お節料理」について学びます。
前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介しております。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介しております。
第17回目のテーマは、「お節料理」
お節料理を作る季節を迎えています...と言うと「お節料理を予約する時期ですね」と返されて、一抹の寂しさを感じる料理研究家でございます。お節料理はもともと家族の健康を願って、普通に家庭で作るものでした。
「正月しか作らないものを習う気がしない」...と言われることもありますが、どの料理も普段から食べておいしく健康に良い料理です。祝いの健康料理をこのページから習得してください。
代表的なお節料理のご紹介
*このページ内の料理写真は、すべて伊藤華づ枝が作成・撮影したものです

ガラス皿に盛ったお節料理

白木の重箱に詰めたお節料理

たくさんの重箱お節料理

雑煮
代表的なレシピをご紹介します
筑前煮

| 材料 | 4人分 | |
|---|---|---|
| 干ししいたけ(中~小) | 8枚 | |
| にんじん | 1/2本 | |
| れんこん | 300g | |
| 鶏もも肉(大) | 1枚(300g) | |
| 板こんにゃく | 1丁(250g) | |
| サラダ油 | 適量 | |
| しいたけの戻し汁+水 | 400ml | |
| A | しょうゆ | 大さじ3 |
| みりん | 大さじ3 | |
| 砂糖 | 大さじ2・1/2 | |
| 手まり麩(生麩・あれば) | 4コ | |
作り方
- 干ししいたけを水で戻し、軸を切ります(戻し汁は煮汁として使います)。
- にんじんは皮をむいて乱切り、れんこんは皮をむいてにんじんよりも大きめの乱切りにします。れんこんを水から入れて茹で、沸騰して2分後ににんじんを入れます。1分間茹でて水に取ります (茹ですぎないように注意します)。
- 鶏もも肉は12等分にそぐように切ります。熱湯の中に入れて表面の色が変わったら、すばやく水に取ります(霜降り)。
- 板こんにゃくは碁盤目に切り込みを入れて16等分に切ります。熱湯で下茹でをし、水に取ります。
- 鍋に油を入れ、1.~4.を炒めます。
- しいたけの戻し汁と水を5.に入れ、沸騰したら中強火で20~25分間煮ます。途中で(A)の調味料を加えます。煮汁がほとんどなくなるまで煮て、照りよく仕上げます。
- 6.を器に盛り、煮汁の一部で下煮した手まり麩を添えます。
くるみ入り田作り

| 材料 | 4人分・作りやすい分量 | |
|---|---|---|
| 田作り | 50g | |
| 素焼きくるみ | 40g | |
| A | 酒 | 大さじ2 |
| みりん | 大さじ3 | |
| しょうゆ | 大さじ1 | |
| 砂糖 | 大さじ2・1/2 | |
| たまり | 大さじ1 | |
| サラダ油 | 大さじ1 | |
| 一味唐辛子(お好みで) | 少々 | |
作り方
- 田作りは160度のオーブン又はオーブントースターで、途中で返しながら5分間ほど焼きます(フライパンで2分間炒り、ターンテーブルにクッキングシートを敷き、500wの電子レンジでラップをせずに3分間かけても良いでしょう)。
- くるみは手で大きめに割り、オーブンで焼きます。
- (A)を鍋に合わせて2/3量位にまで煮つめ、1.と2.を手早くからめ、最後にサラダ油をまぶします。
- お好みで一味唐辛子を振り入れ、広げて冷まします。
たたきごぼう

| 材料 | 作りやすい分量 | |
|---|---|---|
| ごぼう | 2本(250g) | |
| A | すりごま(白) | 1/2カップ弱(30g) |
| 砂糖 | 大さじ2 | |
| しょうゆ | 大さじ2 | |
| 酢 | 大さじ2 | |
作り方
- ごぼうは皮をこそげて5cm長さに切り、更に縦4等分に切って水にさらしてアクを抜きます。
- 1.を鍋に入れてたっぷりの水を注いで強火にかけ、沸騰したら中火にして10分間程茹でます。
- すり鉢又はボウルに(A)の材料を入れ、よく混ぜ合わせてごま酢を作ります。
- 2.が熱いうちにすりこぎで叩き、3.に入れてよく絡め、手早く冷やします。
ふっくらぶどう豆

| 材料 | 作りやすい分量 | |
|---|---|---|
| 黒豆(丹波産) | 2カップ(300g) | |
| A | 塩 | 小さじ2/3 |
| 水 | 1400ml | |
| 重曹 | 小さじ1/2 | |
| 砂糖 | 220g | |
| しょうゆ | 大さじ1/2 | |
| さびくぎ(あれば) | 10本 | |
作り方
- 黒豆は洗ってかたいまま(A)と共に鍋に入れ、1晩~2晩おきます。さびくぎ又は鉄玉を入れると、黒豆の色がきれいに仕上がります。いずれもお茶パック(又はガーゼで包む)に入れ、糸で縛って鍋の手に結び付けておくと、黒豆を傷つけにくく、取り出しやすくなります。
- 1.を中火にかけ、沸騰したらアクをすくいとりながら火を弱め、コトコトと3~4時間位ゆっくり煮ます。
- 2.の煮汁が少なくなったら、くり返しさし水をしてアクを取り、豆がやわらかく煮汁がひたひたになったら火を止め、そのまま一昼夜置いて味をなじませます。
- 重箱に入れる前には再度じっくり火を通し、冷めてから詰めます。
魚の幽庵焼き

| 材料 | 4人分 | |
|---|---|---|
| ブリ(1切れ40g位) | 4切れ | |
| A | みりん | 大さじ2 |
| 酒 | 大さじ2 | |
| しょうゆ | 大さじ2 | |
| 柚子(輪切り) | 2枚 | |
作り方
- ブリは(A)の調味料に3時間~1晩漬け、汁気を取ります。
- オーブン皿又は魚焼き器にオーブンぺーパーを敷き、1.をのせて190℃で10~12分間程焼きます。
※写真にはブリの上に、柚子皮のせん切りを添えました
※写真には菊とカニのしょうが酢と菊花カブを添えました
ゆり根きんとん(ゆず風味)

| 材料 | 作りやすい分量 | |
|---|---|---|
| ゆり根(正味) | 200g | |
| A | グラニュー糖 | 45g |
| 水 | 100ml | |
| 柚子ジャム | 25g | |
作り方
- ゆり根は1枚ずつはがし、茶色い部分があったら包丁で薄くこそげ取ります。
- 1.のゆり根を蒸し器で8~10分間蒸します。
- 蒸し上がったゆり根を、熱いうちにすりこ木などでつぶします。
- (A)を煮立ててシロップを作り、そこに柚子ジャムを加えてさらに煮ます。
- 4.につぶした3.のゆり根を加え、中火にかけてよく練ります。
※焦げやすいので注意してください - 5.をバットに広げ、しっかりと冷まして茶巾にしぼります。
※写真には柚子ジャムを添えました
柚子ジャム ~参考レシピ~
| 材料 | 4人分 | |
|---|---|---|
| 柚子(中~小) | 1コ(80g) | |
| 砂糖 | 50~55g | |
作り方
- 柚子は横半分に切り、竹串で種を取ります。これを小さ目に刻みます。
- 電子レンジに入る小さな器に刻んだ柚子を入れ、目分量の約7割程度の砂糖を入れてまぶします。
- 電子レンジ500Wで2~3分かけます。(この時、ラップをしないこと。水分が蒸発したほうが良いからです)
お節料理とは
「お節料理」の始まりは、季節の変わり目の節句に(節供に)神様へのお供えとして作った料理でした。そのうち正月が一番重要な節句であることから、「お節料理」といえば正月料理をさすようになりました。
お節料理は年神様にお供えする為の料理であり、また家族の幸せを願う縁起ものの料理でもあります。
五穀豊穣、子孫繁栄、家族の安全と健康などを願って山海の幸を盛り込みます。

白色のミニ重箱・黒色の折敷・銀色の椀でモダンなイメージを目指しました
色を3色に抑えることで、落ちついた雰囲気のテーブルになります



お節料理のいわれ
お節の由来は、神様にふるまう料理『お節供』です。現在は「節句」という字で知られていますが、季節の節目に神様にお供物をする日を、もともとは「節供」といい、そのときのご馳走を「お節供」と呼びました。
節句には正月のほかにも五節供(ごせっく)と呼ばれる「人日」(1月7日)、「上巳」(3月3日)、「端午」(5月5日)、「七夕」(7月7日)、「重陽」(9月9日)がありますが、やがて一番盛大に祝うお正月料理だけを指して、「お節料理」と呼ばれるようになったのです。現在のお節の原型ができたのは、江戸時代後半と考えられています。
- 紅白かまぼこ...縁起の良い祝いの色
かまぼこは「日の出」を象徴する料理です。紅はめでたさと慶びを、白は神聖さを表します。 - 黒豆...まめに働く
「まめ」は元来、丈夫・健康を意味する言葉です。
まめに働き、まめに(健康に)暮らすことができるようにとの意味です。 - 昆布巻...健康長寿
昆布は「喜ぶ」の言葉にかけて、正月の鏡飾りにも用いられている一家発展の縁起ものです。
お節料理には、煮しめの昆布巻に使われます。 - えび...長寿
ひげの長いえびは、腰が曲がるまで長生きすることを願って正月飾りやお節料理に使われます。
ひげが長く、腰の曲がった姿を長寿の老人に見立てたもので、長命と一家繁栄の祈りを込めています。 - 伊達巻たまご...学業向上
巻いた形が書物を表し、文筆の上達を願う意味が込められています。 - きんとん...金運
きんとんは金団と書き、金運を上げる・商売繁盛を祈る縁起物です。栗を入れるのは、「勝ち栗」に通じることから、勝負運の上昇を願うという意味があります。 - 筑前煮(煮〆)...成功を願う
れんこんは穴があいていることから、先の見通しが良いとされています。 - 魚の幽庵焼き...立身出世
ブリが出世魚であることにあやかったもので、出世を願う意味が込められています。 - たたきごぼう...一家安泰
ごぼうが地中に深く根を張ることから、家がその地に根を張って安泰になることを願うところから来ています。 - 餅(鏡餅と雑煮)...雑煮は、年神様にお供えした餅を、野菜や鶏肉、魚介などの様々なもの(雑多なもの)と共に煮て作ります。雑に煮る...という意味ではありませんよ(笑)
おおむね関西では白味噌仕立て、関東では醤油仕立て(すまし仕立て)と地方によって異なります。
餅の形も関西では丸餅、関東では切り餅(のし餅、角餅)が一般的に使われます。
次号は、「大根」を予定しております

