文化講座
第14回:「キノコ」について学びます。
前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介しております。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介しております。
第14回目のテーマは、「キノコ」
猛暑の夏も過ぎ、食欲の秋を迎える季節となりました。おいしいものがたくさんあって、ついつい食べ過ぎてしまいますが、たくさん食べても体に良くて、おいしくて、香りが良くておすすめしたいのが、秋の味覚の代表選手キノコです。「キノコ」とは「木の子ども」であり、森や林の木の周りでよく見られることからつけられた名前です。 今では栽培物が年中出回っていますが、多くのキノコが出回る秋が旬です(6月~7月に野生のキノコも出ます)。今回は「キノコ」の調理法・種類・栄養素などについて、キノコのおいしいレシピとともにご紹介します。
代表的なキノコ料理のご紹介
*このページ内の料理写真は、すべて伊藤華づ枝が作成・撮影したものです
焼きねぎとマイタケのつけ麵
~日本そばで~
松茸土瓶蒸し
牛肉のマイタケ巻き
牛肉とキノコの和風ピラフ
サバと焼きキノコのおろしポン酢
松茸入り茶碗蒸し
ローストキノコとパリパリごぼうのサラダ・バルサミコソース
キノコと牛肉の洋風炊き込みご飯(ピラフ)
キノコと栗のキッシュ
つぼ焼きキノコ
ほうれん草とキノコのキッシュ
ポルチーニ茸のキッシュ
キノコたっぷりビーフカレー
キノコとトマトたっぷりのハヤシライス
焼きゆり根とキノコのパスタ
代表的なレシピをご紹介します
松茸かやくご飯
※松茸の代わりに、マイタケや生シイタケを入れても良いでしょう
材料 | 4人分 | |
---|---|---|
米 | 2カップ(400ml分) | |
かつお出汁 | 480~500ml | |
松茸 | 中2本(100g) | |
にんじん | 1/2本 | |
板こんにゃく | 1/4丁 | |
油揚げ(6cm角) | 2枚 | |
A | しょうゆ | 大さじ2強 |
塩 | 小さじ1/2 | |
砂糖 | 小さじ1 |
作り方
- 米を洗い、かつお出汁で1時間程浸水します。
- 松茸は水洗いし、石付きは包丁で削って短冊切りにします。
- にんじんは小さめのいちょう切りにします。
- こんにゃくは塩もみをし、塩をつけたまま茹で、油揚げは熱湯で油抜きします。
- こんにゃくと油揚げは細かく刻み、油揚げは水気をしぼります。
- 2.~5.をボウルに移し、(A)で下味をつけて10分間程置きます。
- 炊く直前に1.に6.をのせて、普通に炊きます。
かに玉のキノコあんかけ
材料 | 4人分 | |
---|---|---|
A | 鶏手羽元 | 2本 |
ねぎ | 適宜 | |
しょうが | 適宜 | |
水 | 1000ml | |
かにの身(またはかに缶) | 80g(1缶) | |
茹でたけのこ | 60g | |
白ねぎ | 20㎝(40g) | |
B | 卵 | 6コ |
塩 | 小さじ1/2 | |
白こしょう | 少々 | |
しょうゆ | 小さじ1 | |
サラダ油 | 大さじ4 | |
生シイタケ | 2枚(20g) | |
シメジ | 1パック(100g) | |
エノキ茸 | 1袋(100g) | |
C | 鶏のスープ | 400ml |
塩 | 小さじ1/2 | |
しょうゆ | 大さじ1/2 | |
白こしょう | 少々 | |
片栗粉 | 大さじ2 | |
水 | 大さじ2 |
作り方
- 鍋に(A)を入れて煮立て、沸騰したら中火で15分程煮て、鶏のスープを取ります。
- かにの身は軟骨を取って粗くほぐします。茹でたけのこはせん切りにして水気をギュッとしぼり、白ねぎは小口切りにしておきます。
- 2.と(B)をボウルに合わせ、よく混ぜ合わせます。
- フライパンに油を熱し、3.を入れてかに玉を4枚ずつ焼きます。(大きな1枚を焼いて4つに切り分けても良い)
- 生シイタケは石づきを取って千切り、シメジはほぐします。エノキは3等分の長さに切り、ばらばらにほぐします。
- 4.のフライパンで(C)を煮立てて5.を加え、手早く煮て水溶き片栗粉でとろみをつけます。
- 4.を皿に盛り、6.をかけます。
キノコの調理法
ご飯もの、汁もの、鍋もの、蒸しもの、焼きもの、揚げもの、炒めもの、煮込み料理と、さまざまな料理に使えるキノコは、味と香りと食感が堪能できる素晴らしい食材です。中でも筆者が最もおすすめしたいのが天ぷらです。食材に下衣(小麦粉)をつけてから、天ぷら衣に塩味をつけてカラッと揚げます。口の中に広がるキノコの香りの良さはまさに神秘的です。ちなみに基本の天ぷら衣は、卵1個・水150ml・小麦粉100g(計量カップで約200ml分)です。
さまざまな種類のキノコ
マイタケ・ナメコ・ブナシメジ・エリンギ・生シイタケ・エノキ茸・松茸など、たくさんの種類があります。特にマイタケは昔から「幻のキノコ」と呼ばれるほどの希少価値があり、天然のものは味も香りもよく、採れる量も少なく、大変貴重だったようです。「マイタケ」という名前の由来は、見つけた人が舞い上がって喜ぶので「舞茸」と名づけられたという説と、その形が蝶が舞う姿に似ているところからつけられたという説があります。その他、筆者のお気に入りは洋風キノコの代表選手マッシュルームです。マッシュルームを細かく刻んでからバターソテーし、オムレツやクリームソースに入れて使っています。それ以外にも、キクラゲ・トリュフ・ポルチーニなどもあります。イタリアにはフレッシュポルチーニを食べるだけの目的で出かけるほどのキノコ好きです。
時計回りに真上から
エノキ茸・マイタケ・ナメコ・ブナシメジ・エリンギ
中央が生シイタケです
その他のキノコ
- キクラゲ...ゼラチン質が多く、耳たぶの形状です。乾燥品が多く輸入され、水で戻したものが中国料理の食材としてよく用いられます。
白キクラゲは中国では、古くから不老長寿の食品とされています。 - フクロタケ...中国料理の食材としてよく用いられます。
中国、台湾、インドネシア等、東南アジアでの生産が多いことから「チャイニーズ・マッシュルーム」とも呼ばれます。
フクロタケの水煮缶 - キヌガサタケ...キヌガサタケはスッポンタケ科キヌガサタケ属で、白いレース状の菌網を伸ばす特徴のあるキノコです。
その優雅な姿から「キノコの女王」ともいわれます。
台北の東門市場・林さんの店で
キヌガサタケを買っている筆者・右手前
乾燥したキヌガサタケ - ポルチーニ...ポルチーニは、キノコの王様ともいわれ、イタリア料理に欠くことのできない味覚と香りのよい食材です。
ベニスの市場で見つけたフレッシュポルチーニ
ナポリにて
フレッシュポルチーニと筆者
ナポリの有名ピッツェリアで食べたキノコのピッツァ
乾燥ポルチーニは日本でも手軽に入手できます
ポルチーニを使ったおいしいレシピ
ポルチーニ茸とチーズのリゾット
材料 | 4人分 | |
---|---|---|
ポルチーニ茸(乾燥) | 10g | |
A | くず野菜(玉ねぎやにんじんなど) | 適宜 |
手羽元、手羽先など | 4本 | |
水 | 1600~1800ml | |
玉ねぎ | 1/4コ(60g) | |
ベーコン | 2枚(40g) | |
オリーブ油 | 大さじ2 | |
バター | 15g | |
無洗米 | 1・1/2カップ(240g) | |
ポルチーニ茸の戻し汁 | 200ml | |
パルメザンチーズ(あれば塊をおろす) | 大さじ4(15g) | |
塩 | 小さじ1/3 | |
白こしょう | 少々 | |
飾り用パルメザンチーズ | 適宜 | |
空豆(又はグリーンアスパラガス) | 12粒(適量) |
作り方
- ポルチーニ茸は、ひたひたにかぶる位のぬるま湯に約10分間程浸して戻します。戻ったら2~3cm長さに切ります(戻し汁は米を煮る際に使用します)。
- 鍋に(A)を入れて20~30分間煮て、多めのチキンスープを作ります。
- 玉ねぎはみじん切り、ベーコンは細切りにします。
- 鍋に油とバターを入れ、3.を炒めます。そこにサッと洗った米と1.を入れて炒めます。
- 4.にポルチーニ茸の戻し汁を加え、中強火で炊きます。米の表面に水分がなくなったら2.を適宜(約800ml)徐々に足し、焦げ付かないよう鍋の底を時々かき混ぜ約20分間煮ます(チキンスープが残ったら他の料理などに使うと良い)。
- 火を止めてパルメザンチーズを加え、塩とこしょうで味を調えます。
- 6.を器に盛ってパルメザンチーズをちらし、茹でた空豆を添えます。
キノコの栄養素
- キノコは低カロリーでありながら、食物繊維、ビタミンD、ビタミンB群、ミネラルなど、様々な栄養素を豊富に含む体に良い食材です
- 特に 不溶性食物繊維を多く含むので、腸内環境を整えて便秘の予防・改善に役立ちます
- キノコに含まれるβグルカンは、消化吸収されずに腸に存在する免疫担当細胞に働きかけて免疫応答を活性化し、体の防御機能を強化すると考えられています
- βグルカンは、血糖値の急上昇を抑えたり、コレステロールを体外へ排出する働きもあります
- キノコに含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯を丈夫にする働きがあります
- カリウムは体内の水分バランスを調整し、高血圧予防に役立ちます
次号は、「サンマ」を予定しております