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インターネット公開文化講座

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料理研究歴50年・「伊藤華づ枝の しみじみ おいしいレシピ集」

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第11回:「梅」について学びます。

前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介しております。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介しております。

第11回目のテーマは、「梅」

毎年この時期になると、どこの野菜売り場にも青梅が所せましと並べられ、「梅仕事の季節が到来したわ」とワクワクする料理研究家でございます。
保存食としての梅干しには保存料や着色料が入っている物が多く見かけられますが、手作りは安心感がひときわですから、このページを参考にして今年こそは、梅仕事に精を出して頂きたいと思います。
梅干しだけでなく、梅ジュース・梅ジャム・梅酒の他にも梅しょうゆなども手作りしておくと、このところ毎年のような猛暑を元気に乗り越えられるはずです。そしてその爽やかさもダントツの魅力です。梅(梅干し)を食べると、その日1日を無事に過ごせるという意味から、「梅はその日の難逃れ」とも言われています。今回はその健康効果も含めて、お伝えしましょう。

代表的な梅料理のご紹介

*このページ内の料理写真は、すべて伊藤華づ枝が作成・撮影したものです


しいたけと梅風味の鰺の天ぷら2種


梅ジソのポークピカタ


梅肉サラダうどん


梅おろししゃぶしゃぶ


スナップエンドウの梅おかか和え


ちくわの梅ジソクルクル


ゆり根の梅和え


長芋と梨の梅ミルク風味


れんこんの梅おかか和え


長芋の梅煮


梅のシロップ煮


青梅のカリカリ甘露漬けと青梅ジュース


梅ジュース


甘露漬けの種で作る梅じょうゆ


梅酒

代表的なレシピをご紹介します

梅干し<5月下旬~7月上旬※最盛期は6月>

梅干し<5月下旬~7月上旬※最盛期は6月>
梅を漬ける際には、黄色くなるまで熟してから使います

材料 作りやすい分量
2kg
粗塩 360g(梅の18%)
ホワイトリカー(35度) 140ml
赤ジソ(ちりめんしそ) 500g(梅の25%)
粗塩 50g(シソの10%)
白梅酢(梅から出る) 約800ml

作り方

  1. 梅は半日程度水につけ、アク抜きしてヘタを取り、ザルに上げてしっかりと水気を拭き、分量の塩を振り入れてよくもみ込みます。
     
     

  2. 1.の梅と塩を容器に交互に入れ、梅が全部入ったところでホワイトリカーを振りかけます。
  3. 落とし蓋をし、梅の2倍の重石をして2~3日置きます。1日1回重石を取り、揺すって塩を全体に回します。
     
     

  4. 白梅酢が落とし蓋の上にあがってきたら、重石を半分にします。(3~4日かかります)
     
     

  5. 赤ジソは葉を摘み取って水洗いし、水気をしっかり切ります。
  6. ボウルに入れて半分の量の粗塩を振り、もみ込んでから固く絞ります。アク汁は捨てて、もう1~2回繰り返します。

  7. もんだ赤ジソは4.の白梅酢をかけ、さらにもみ込みます。赤く発色したらシソの出来上がりです。
  8. 赤梅酢とシソを絞って分け、梅容器に赤梅酢を注ぎ入れてシソを散らします。
     
     

  9. 落とし蓋と重石1㎏を置き、密閉して冷暗所に1週間置きます。(土用の頃までおきます)
     

  10. 時々裏返しながら3日間天日干しをしてその都度梅酢に戻し入れ、最後に一晩夜干しをします。赤梅酢も容器ごとラップをかけて天日干しをします。
     
     

蒸し鶏と梅ジソの春巻き

蒸し鶏と梅ジソの春巻き
※写真にはベビーリーフを添えました

材料 4人分(20本分)
鶏むね肉 400g
ねぎ 少々
しょうが 少々
A 梅干し(種を出して細かく切る) 4個
ごく少々
白こしょう 適宜
マヨネーズ 大さじ1
春巻きの皮 20枚
青ジソの葉 8~10枚
  小麦粉 大さじ1~2
大さじ1~2
揚げ油 適量

作り方

  1. むね肉は火が通りやすいように、両側に開いて厚みを均等にさせます。
  2. たっぷりの水にねぎとしょうがを入れて沸騰させ、1.をそっと入れて再沸騰後15分程茹でます。※グラグラと茹でないで、中弱火でそっと茹でる
  3. たっぷりの水を張ったボウルに2.をそっと入れて、流し水で中心まで冷やします。
    ※氷水で冷やすと固くなるので注意する。そのまま水に浮かべた状態で冷蔵庫に入れておけば数日は日持ちする。
  4. 3.の水気をペーパータオルでふき取り、手で細かく裂きます。
  5. 4.と(A)をボウルに入れて混ぜ合わせ、20等分にしておきます。
  6. 春巻きの皮に青ジソと5.を載せ、巻き止めを小麦粉のりをつけて巻きます。
  7. 6.を中温の油で揚げます。

手作り梅ジャム

*健康保持のために、毎日スプーン1杯程度をなめる
*ヨーグルトに混ぜる
*パンに塗るなどして召し上がってください

手作り梅ジャム

材料 中瓶で5~6本分
完熟梅 2kg
砂糖 種を取った後の梅に対して50~60%

作り方

  1. 梅は黄色く熟したものを買い求めるか、部屋で追熟させます。
  2. 1.を水を溜めたボウルの中でヘタを取りながら洗います。
  3. 2.をステンレスかホーロー鍋に入れ、多めの水を加えて沸騰するまでは強火、煮立ったら中弱火で15分程ゆでます。(泡のようなアクが出るので、こまめにすくいます)
  4. 3.の火を止めて、そのまま冷やします。
  5. 4.をザルに上げて水気を切り、ビニール手袋をはめて、ギュッと握ります。種だけ残るので、果肉の重さをはかって砂糖と共に鍋に入れます。
  6. 5.を中火でとろとろと煮ます。鍋底を折々かき混ぜながら、焦がさないように注意します。※冷めるととろみがくるので、固く煮詰めないようにします。
  7. 6.が冷めたらきれいな瓶に入れ、しっかりとフタをして冷蔵庫で保管します。

※冷蔵庫で3ヵ月くらいは保存できます
※5.の時点でミキサーやフードチョッパーにかけても良い(かけなくても粒々感があって良い)

梅の健康効果

  • 疲労回復効果
    梅には有機酸が豊富に含まれます。特にクエン酸の量はレモンに匹敵するほどで、このクエン酸は疲労物質である乳酸の消失速度を高めることで疲労回復を早めます
  • ビタミンCの吸収を高める働き
    クエン酸には、ビタミンCの体内吸収を促進する働きもあります
  • 貧血予防効果
    鉄分吸収を高めるので貧血予防効果もあります
  • 血行促進
    血行を促進するので、肩こりや神経痛を予防改善します
  • 整腸作用
    植物性の乳酸菌を含むだけでなく、悪玉菌を抑制する作用もあるので腸内環境を整えます
  • 糖質燃焼効果
    糖質の燃焼効率を高めるので、血糖値を下げます
  • 骨の強化
    ウバオールやコロソリン酸などの成分が含まれているので、骨の強度を維持します
  • 新陳代謝を活発にするリンゴ酸も含みます
  • 肝機能を高めて悪酔い・乗り物酔いを防ぎます
  • 便秘解消に役立つ食物繊維も含みます
  • 梅干しを見ただけで湧き出る唾液にはガン細胞を消滅させたという報告があります
    同志社大学の西岡一教授によると、様々な発がん物質に梅干しを見ただけで湧き出る唾液を混ぜる実験を行った結果、その毒性はたった30秒間でほとんど消失してしまうと言います

酸っぱい梅干しが苦手と言われる方には、1年寝かせたものを食べることをおすすめしています。塩味が馴染んで食べやすくなるからです。
こんな酸っぱいものはクエン(食えん)と言わず、「うめぇーうめぇー」と食べてください。

梅干しの副産物

  1. 赤ジソでゆかり粉
    赤ジソの葉を入れて漬けたいわゆる赤梅干しの副産物であるもみジソは、土用の丑の頃に梅干しを天日で共に干してから、チョッパーなどで細かくして冷蔵保存すればほぼ1年中、ふりかけなどにして使えます
  2. 梅酢で紅ショウガ
    新ショウガをサッと熱湯に通してから軽く塩をふり、日陰干しにして梅酢に漬ければ色よい紅ショウガが出来上がります

梅に関することわざ

  • 「梅に鶯」...仲が良い様子や、美しく調和しているものを表します
  • 「梅木学問」...梅の木は生長が早いけれども大木にならないところから、にわか仕込みの不確かな学問を意味します
  • 「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」...物事にはそれぞれ適切な対処法があり、一律の考え方ではいけないことを教えることわざです。桜は切り口から菌が入りやすく、無闇に剪定すると衰弱してしまうため、切らない方が良い。一方、梅は剪定しないと木の形が崩れてしまい、花や実がつきにくくなるため、剪定する必要があるということを意味します
  • 「梅はその日の難のがれ」...梅干しが昔から病気の予防に用いられたことなどから、その日の難を逃れることができることを表します
  • 「雪に耐えて梅花麗し」...厳しい環境を乗り越えることで、より美しく咲くことを意味します

この季節ならではの「梅仕事」を楽しんでくださいね。

次号は、「トウモロコシ」を予定しております

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