文化講座
第3回:「サツマ芋」について学びます。
前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介いたします。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介してまいります。
第3回目のテーマは、「サツマ芋」
秋から冬に旬を迎えるサツマ芋は、別名を甘藷(かんしょ)、琉球芋・唐芋(から芋)とも呼ばれています。
今回は、スイートポテトや芋けんぴなどのお菓子としてだけでなく、さまざまな料理にも使えるサツマ芋についてお話します。サツマ芋の餅・煮物・サラダ・デザートなど、特に女性やお子さんに人気の芋レシピをご紹介します。
代表的なサツマ芋料理のご紹介
このページ内の料理写真はすべて伊藤華づ枝が作成・撮影したものです
サツマ芋とリンゴのカラメルスープ
サツマ芋と豚肉のうま煮
揚げサツマ芋と焼きホタテのサラダ
サツマ芋のミルク煮
サツマ芋と白花豆の甘煮
サツマ芋の餅
鬼まんじゅう
紫サツマ芋のオンデオンデ
(シンガポールの伝統的な生菓子)
サツマ芋のアイスクリーム
代表的なレシピを3点ご紹介します
サツマ芋とクリームチーズのナッツサラダ
材料 | 4人分 | |
---|---|---|
サツマ芋 | 500~600g(大1本) | |
塩 | 小さじ1/2強 | |
クリームチーズ | 60g | |
マヨネーズ | 大さじ2~3 | |
粒マスタード(あれば) | 大さじ1 | |
イタリアンパセリ(あれば) | 2~3本 | |
ミックスナッツ(アーモンドやクルミだけでも可) | 50g |
作り方
- サツマ芋は2cm角くらいの大きさに切り、水にさらしてから鍋に入れてひたひたよりもやや多めの水を入れ、柔らかめに茹でます(沸騰後8~10分を目安にする)。
- 1.が茹で上がったらザルに上げて水気を切り、大き目のボウルに入れて分量の塩をふってゴムベラでつぶすようにかき混ぜて冷まします。
- 2.のボウルに手でちぎったクリームチーズを入れ、マヨネーズと粒マスタードも加えます。
- 味を見て適量の塩を足し、刻んだイタリアンパセリも加えてから粗く刻んだナッツも加えます。(飾り用を少し残しておく)
- ざっくりと混ぜ合わせて器に盛り、残しておいたナッツを散らします。
スイートポテト
材料 | 4人分・8コ分 | |
---|---|---|
サツマ芋(皮つき) | 500g(中2本) | |
A | バター(室温) | 50g |
グラニュー糖 | 60g | |
生クリーム | 60~70ml | |
コアントロー(又は洋酒) | 小さじ1/2 | |
卵黄 | 1コ分 | |
B | 卵黄 | 1コ分 |
水 | 少々 |
作り方
- サツマ芋は1~1.5cm厚さの輪切りにし、皮を厚めにむいて10分間程水にさらしてアクを抜きます。
- 1.を電子レンジにかけるか、蒸し器で10分間程蒸します。
- 2.をマッシャ―などで、つぶします(ザルでこしても良いでしょう)。
- 鍋に(A)を煮立てて3.を加え、少し練ります。火を止めた後に卵黄を加えて混ぜます。
- 手を水でぬらして形をつくり、アルミカップに詰めます。表面に(B)の卵液を塗ります。
- 190度のオーブンで15~18分間焼きます。表面に軽く焦げ色が付くのを目安にします。
- 6.を器に盛ります。
いきなり団子
材料 | 12コ分 | |
---|---|---|
サツマ芋(中サイズ) | 1本(350g) | |
水 | 400ml | |
塩 | 大さじ1/2 | |
A | もち粉 | 170g |
薄力粉 | 170g | |
水 | 230~260ml | |
砂糖 | 20g | |
塩 | 小さじ1/4 | |
小豆あん(粒あん) | 360g | |
薄力粉(手粉) | 適宜 |
<粒あん>材料 | 約30コ分 | |
---|---|---|
小豆 | 300g | |
砂糖 | 300g | |
塩 | 小さじ1/3 |
作り方
- サツマ芋は皮を厚めにむき、1.5cm厚さの輪切りにして水に晒します。その後、分量の塩水に20~30分間ほど浸けます(塩水に浸けたサツマ芋は洗いません)。
- ボウルに(A)を入れて混ぜ合わせます。ボウルにラップをして1時間寝かせます。
- 2.の生地を12等分にします(1コ40g位)。
- サツマ芋の上に粒あんを30gずつのせて、くっつけます。
- 手粉をつけてから、3.の生地で4.を包みます。
- 蒸し器のサナにぬらした蒸し布を敷き、5.をのせて強火で20~23分間蒸します。
<粒あん>作り方
- 小豆は水で洗い、たっぷりの水で沸騰させた後、ザルに上げて水で洗います。この工程をもう一回繰り返し、アクを抜きます。
- 1.に小豆の3倍ほどの水を加え中強火でやわらかくなるまで茹でて、水分がなくなったら砂糖と塩を加えて練り上げます。
※粒あんが約900g出来上がるので、小分けにして冷凍しておくと、ぜんざいなどにも使えます。
サツマ芋の種類
鳴門金時、安納芋、紅はるか、シルクスイートなど、たくさんの種類があり、色や大きさも様々です
- 安納芋
安納芋は粘り気のある食感で、焼き芋にすると蜜が出るほどの強い甘みが喜ばれます。 - 鳴門金時
歴史の古い品種です。ほくほく感もねっとり感もあり、絶妙なバランスが喜ばれます。 - シルクスイート
近年人気の品種で、絹のような滑らかな舌触りが特徴です。
サツマ芋にまつわるおもしろ雑学
- サツマ芋は、日本のサツマ(薩摩)の国に自生していた?
もともと日本にはサツマ芋という植物は存在しておりませんでした。
1597年に別名を唐芋(からいも・唐は中国の別名)と呼ばれる芋が、沖縄の宮古島に上陸しました。中国から琉球の役人が持ち帰り、そのおよそ100年後に薩摩の地に伝わったのだとされています。
その後、江戸時代には享保の大飢饉の際に、薩摩藩から「唐芋=サツマ芋」が届けられ、薩摩から届いた芋なので「サツマ芋」と名付けられたのです。
大飢饉の際に持ち込まれた理由は、サツマ芋は荒れた地で放っておいても採れるという手軽さが受けたからです。 - サツマ芋の記念日はダジャレ?
1987年に、「川越いも友の会」がサツマ芋の日を10月13日と制定しました。10月は芋がおいしい季節だから...とは理解できますが、なぜ13日なのでしょう?
その理由は、サツマ芋は栗よりもうまい、つまり九里四里(くりより)うまいので、9と4を足して13としたわけです。完全なダジャレですね~~(笑)
※川越とは現在の埼玉県川越市でサツマ芋の産地です。江戸の日本橋から、この川越までの距離が13里(約51km)だったからという説もあります。
サツマ芋の栄養素
- ビタミンCの含有量が芋類の中で最も多いこと・加熱しても壊れにくいという特徴があります。
※ビタミンCは発がん物質であるニトロソアミンの生成を抑える働きがあります。 - ビタミンD・Kを除く、ほぼ全てのビタミンを含んでいること、鉄・カルシウム・リンなどのミネラルを多く含んでいます。
- βカロテンは、芋質の色が黄色いほど豊富です。
- たんぱく質は100g中に1.2gしかありませんが、プロテインスコアは83と高いです。
- サツマ芋には100g中に不溶性食物繊維が1.8g、水溶性食物繊維が0.9g含まれています。食物繊維は便を柔らかくし、体内のコレステロールや老廃物を排出します。
- 推定機能として、細胞膜機能調整をするガングリオシドという成分を含みます。成長促進に不可欠のものです。脳機能維持改善に役立つコリンという成分は、神経伝達物質のもとになるもので、記憶力を高めます。
※サツマ芋の買い方と保存方法
- サツマ芋は収穫したばかりのものより、貯蔵して寝かせたものの方が甘いです。
- 新聞紙で包んで冷暗所で保存してください。冷蔵庫に入れない方が良いです。
次回は、「リンゴ」を予定しております。