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インターネット公開文化講座

文化講座

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料理研究歴50年・「伊藤華づ枝の しみじみ おいしいレシピ集」

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第4回:「リンゴ」について学びます。

前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介いたします。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介してまいります。

第4回目のテーマは、「リンゴ」

世界各地の人々は、リンゴが焼ける時のふくいくとした甘い香りを「幸せの香り」と呼んでいます。それゆえにアップルパイを焼いたり煮リンゴやジャムなどを作り、様々な場でリンゴを愛し続けてきました。あの有名な「アダムとイブ」のお話で聖書にも登場するように、リンゴは古くから食べられていた歴史のある果物です。原産地は中近東、コーカサス地方といわれており、4000年以上前にはすでに栽培されていました。世界には2000種以上の品種が存在するといわれ、日本に導入された品種は1000以上です。本格的に栽培が始まったのは明治からですが、度重なる品種改良により、甘味、酸味、食感の異なる多くの品種が次々と誕生してきています。リンゴは比較的冷涼な地域に適しており、冷害で米が実らない年でも立派に実をつけることができるので、寒冷地では重要な作物となっています。

代表的なリンゴを使った料理とデザートのご紹介

このページ内の料理写真はすべて伊藤華づ枝が作成・撮影したものです


ポークグリル
~リンゴのシナモン風味添え~


塩焼きチキン
~すりおろしリンゴとブルーチーズのせ~


ポークグリル
~リンゴのソースがけ~


ブロッコリーとリンゴのサラダ
クリスマススタイル


リンゴとセロリのサラダ


大根とリンゴのナムル


アップルパイ


リンゴとナッツのケーキ


リンゴのケーキ~タタン風~


リンゴとチーズのおやき


リンゴのスムージー

代表的なレシピを3点ご紹介します

ビーツとリンゴを爽やかなサラダにしました

ビーツとリンゴのサラダ

ビーツとリンゴのサラダ※ビーツは食べる輸血剤といわれる程のスーパーフード(素晴らしい野菜)です
発熱や便秘の治療にもよいとされています

材料 4人分
ビーツ(小1コ) 250g
リンゴ(中~小1コ) 250g
A 白ワインビネガー(又は酢) 大さじ1・1/2
オリーブ油 大さじ4
小さじ1/2程度
白こしょう 少々
はちみつ 大さじ2~3
ディル(粗く刻む)(又はイタリアンパセリ) 2~3軸
むいたかぼちゃの種(又はピスタチオ、クルミなどのナッツ) 大さじ1
ディル(飾り用) 少々

作り方

  1. ビーツは皮をむき、1cm角位の大きさに切って水から茹でて冷まします(10~20分を目安にし、食べてみて程よいかたさとなることを目安とする)。
  2. リンゴは皮をむき、1cm角に切ります。
  3. 大きめのボウルに(A)を混ぜ合わせ、1.と2.を入れます。
  4. 3.はできれば1晩おくと味も色もなじみやすいです。
  5. 4.を器に盛り、かぼちゃの種を散らします。ディルを添えます。

ロールケーキ用に焼いたスポンジ生地に、生クリームと煮リンゴをのせてクルクルと巻いたケーキです

リンゴのロールケーキ・クリスマススタイル

リンゴのロールケーキ・クリスマススタイル※写真にはサンタ菓子やヒイラギなどを飾りました

材料 1個(6切れ分)
中身用リンゴ
リンゴ(紅玉) 1コ
A 砂糖 50g
70ml
飾り用バラリンゴ
リンゴ(紅玉) 1コ
B 砂糖 40g
30ml
生地
  3コ
グラニュー糖 60g
薄力粉 60g
サラダ油 大さじ3
C 生クリーム 130ml
グラニュー糖 大さじ1
洋酒(コアントローなど) 少々
  粉ゼラチン 小さじ1
大さじ1
飾り用
D 生クリーム 100ml
グラニュー糖 大さじ1
洋酒(コアントローなど) 少々
ミントの葉 適宜

作り方

※サイズ28cm×24cmの天板1枚分

  1. 中身用のリンゴは皮をむいて(皮も使います)1~1.5cm角に切ります。
  2. 鍋に1.とむいた皮、(A)を入れて火にかけ、リンゴが透き通る位まで煮ます。
  3. バラ用のリンゴは皮ごとくし形のやや厚めの薄切りにし、(B)で煮て、透き通る位になったら火を止めます。
  4. 卵とグラニュー糖を大きめのボウルに入れ、湯せんで6~7分間を目安にハンドミキサーを使ってしっかりと泡立てます。
  5. 4.に薄力粉をふるって加え、白い粉が見えなくなるまで手早く混ぜます。
  6. 5.の生地の一部を別のボウルに取り分け、ぬるま湯に浮かべて温めておいたサラダ油を加え、さっくりとていねいに混ぜます。
  7. 6.を5.に戻し入れ、さっくりと混ぜ合わせます。
  8. オーブンペーパーを敷いた天板に7.を流し入れ、180℃のオーブンで12分間程焼きます。
  9. 焼き上がったら、オーブンペーパーをはずして冷まし、横3等分に切ります。
  10. ボウルに(C)を入れて氷水にうかべながら、しっかり泡立てます。
  11. 分量の水でふやかしておいたゼラチンを湯せんで溶かし、水にうかべて粗熱を取ります。
  12. 10.に11.を少しずつ加え、よく混ぜます。
  13. 9.の生地を焼き目のある方を上にして、12.のクリームと2.の中身用のリンゴをのせて、3枚をつなげてロール状に巻きます。
  14. 13.の上と側面に泡立てた(D)のクリームを塗り、3.のリンゴをバラの花のように巻いて飾ります。ミントの葉で飾ります。
  15. 14.を冷蔵庫で2~3時間休ませ、適当な厚さに切り分けます。

煮リンゴにチーズクリームとナッツを散らしたものです。煮ておけば保存性も高まります

リンゴのコンポート~マスカルポーネチーズクリームとナッツ添え~

リンゴのコンポート~マスカルポーネチーズクリームとナッツ添え~※写真にはドライフルーツの柿とミントを添えました

材料 4人分
リンゴ 2コ(700g)
A 600ml
白ワイン 100ml
グラニュー糖 180g
レモン汁 大さじ1
バニラビーンズ 1/2本(縦に割る)
B マスカルポーネチーズ 120g
グラニュー糖 大さじ1・1/2
レモン汁 大さじ1/2
ドライマンゴー(粗く刻む) 20g
ミックスナッツ(粗く刻む) 20g

作り方

  1. リンゴは縦半分に切って皮をむき、スプーンで芯を丸く取り除き、塩水にくぐらせます。
  2. 鍋に水で洗った1.と(A)を入れ、ワックスペーパー又はアルミホイルで落とし蓋をして20~25分間煮ます。途中10分間煮たところで一度リンゴを裏返します。
  3. 2.を煮汁と共に氷水にあてて素早く冷やします。
  4. ボウルに(B)を混ぜ合わせます。
  5. 器に3.を盛り、芯を取り除いた部分へ4等分した4.を添えます。

リンゴの種類

  1. 「サン津軽」は日本で2番目に多く生産されている品種です。甘みが多く、酸味が少ないのが特徴で、歯触りが良く、シャキシャキとした歯ごたえが好まれます。
  2. 「紅玉」は調理用・加工用として適性が強く、根強い需要があります。鮮やかな濃赤色で光沢があり、酸味の効いた甘味、爽やかな香りと多汁な口当たりが特徴です。
  3. 「姫リンゴ」は別名を「アルプスの乙女」とも呼ばれています。甘味・酸味がしっかりとあり、濃厚な味わいです。リンゴ飴に使われているものです。一般的なリンゴの大きさは1個250gですが、姫リンゴは1個60gで、一般的なリンゴの約1/4の重さです。


姫リンゴと一般的なリンゴの大きさを比較するために並べました

おいしいリンゴの見分け方

今がまさに、「リンゴ」の旬。10月初旬から12月中旬まで、あらゆる種類のリンゴが店頭に並びます。果皮にハリとツヤがあり、形の整ったものを選びましょう。
実が締まっていて重いもの、柄が太くてピンとしているものが良いです。
リンゴの種類によって異なりますが、お尻の部分まで赤く色付いている実を選ぶと、ジューシーな味わいが楽しめます。
筆者は毎年、11月中旬~下旬に長野県の松川町にリンゴ狩りに行きます。
昨年のリンゴ狩りは11月18日でしたが大雪でした。
雪の中のリンゴ狩りは、思い出ひとしおです(笑)

リンゴにまつわる雑学・私の好きな言葉

  1. 歌人の俵万智さんは「何層もあなたの愛に包まれてアップルパイのリンゴになろう」と歌っています。
    リンゴの焼ける甘酸っぱい香りと甘く切ない恋心が重なった、とても魅力的な歌です。この秋、幸せと恋にしっかり包まれるようにあなたもリンゴをソッとかじってみてください。
  2. たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える。
    16世紀に宗教改革で主役となったマルチン・ルターの言葉です。
    明日への希望や夢を、まだまだ持ち続けたいと願う熟年過ぎる料理研究家でございます(笑)

リンゴの栄養素

欧米では「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」と言われています。それもそのはず、リンゴには健康を維持する栄養素が実にバランス良く、しかも多種類にわたって含まれています。

  1. 特に多く含まれるカリウムは体内の塩分排泄を促し、高血圧症に効果を発揮します。
    カリウムは調理によって流失しやすいものですが、生でそのまま食べるリンゴはカリウムの摂取に実に効果的です。
  2. 糖質・脂質の吸収を遅らせたり、発ガン物質を体外に排泄するなどの効力がある食物繊維がたくさん含まれており、腸の調子を整えて便秘を予防してくれるだけでなく、コレステロール値の上昇も防ぎます。
  3. リンゴ特有の芳香やさわやかな酸味は、新陳代謝を活発にして、肩こり・腰痛などを回復させます。
  4. リンゴに含まれるリンゴ酸は、貧血の予防に効果が期待できるだけでなく、疲労物質の代謝を促し、筋肉への蓄積を防止します。
  5. リンゴに含まれるビタミンCは、女性にうれしい美肌効果を発揮します。

次号は、クリスマスシーズンにおすすめの「鶏肉」を使った料理を予定しております。

料理研究歴50年・「伊藤華づ枝の しみじみ おいしいレシピ集」
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