愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

料理研究歴50年・「伊藤華づ枝の しみじみ おいしいレシピ集」

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第13回:「桃」について学びます。

前シリーズでは、「世界の長寿食」というテーマで、世界各地の人々は健康を維持するために何を食べてきたのかという背景を探りつつ、それらの料理を日本でも手に入る食材を使ったレシピで紹介したり、含まれる栄養素の効能についてもお伝えしてまいりました。
今シリーズでは、料理研究歴50年が経過した筆者が旬の食材を中心に取り上げ、家庭で作れる基礎レシピだけでなく、日本で食べられている世界各地のおいしい料理やデザートなどもご紹介しております。それぞれの食材が持つ栄養素や美しい盛り付けのコツ・食材にまつわる「おもしろ話」・食事マナーなどについてもご紹介しております。

第13回目のテーマは、「桃」

店頭に桃がたくさん並ぶ季節となりました。甘い香りと溢れる果汁、かわいらしい見た目で、心を癒してくれる桃。アンケートによると、イチゴ、ミカン、桃が、日本人の好きな果物の上位3つという結果も出ています。中でも桃は、老若男女問わず、年々人気が高まっています。桃の旬は6月から8月で、暑くなるにつれて一層おいしくなります。果肉が白く上品な甘みの「白凰」や「白桃」が代表的な品種で、白凰と白桃を交配させた品種で、糖度が高くジューシーな「あかつき」、果皮と果肉とも黄色い「黄金桃」などが多く出回っています。出荷量は山梨県が第1位、次いで福島県、長野県となっており、この3県で全国の7~8割を占めています。今月は、旬真っ盛りの桃について取り上げます。

代表的な桃料理のご紹介

*このページ内の料理写真は、すべて伊藤華づ枝が作成・撮影したものです


生ハムフルーツ・桃


丸ごとピーチのケーキ


桃パフェ・白玉添え


桃のタルト


桃の丸ごとコンポートゼリー


桃のムース・バラ仕立て


桃のロールケーキ


桃のレアチーズケーキ・カップ仕立て


桃のシャーベット


桃のスムージー


ナタデココの入った桃のゼリー

 

代表的なレシピをご紹介します

桃のポタージュ

桃のポタージュ
※写真にはミントを添えました

材料 4人分
A グラニュー糖 大さじ2~5
ヨーグルト(プレーンタイプ) 大さじ2
生クリーム 大さじ2
レモン汁 小さじ2
ピーチリキュール(又は白ワインなどの香りの良い洋酒) 小さじ2
白桃 2コ
B 400ml
鶏手羽元 2本
くず野菜(玉ねぎ、にんじん、レモンの皮、パセリの軸) 少々

作り方

  1. ボウルに(A)を合わせます。
  2. 白桃はくぼみに沿って包丁を入れ、ひねるようにして半分に切ってスプーンなどで種をくり抜きます。桃が器になるように3~5mm程残し、果肉をくり抜きます。
    ※果肉はくり抜いたものから順に1.に入れると桃の色が変わりません。
  3. 鍋に(B)を入れて沸騰してから10分間程度煮出してチキンスープを作り、4人分で100mlを取って冷やし、2.に加えます。
  4. 3.をミキサーにかけ、なめらかにします。
  5. 器に2.の桃の器を置き、冷やした4.を注ぎます。

桃のミルクゼリー

桃のミルクゼリー
※桃は1/3をゼリーに入れ、1/3はピーチソースにし、残り1/3を飾り用としました

材料 130mlカップ5コ分
  粉ゼラチン 2袋(10g)
50ml
A 牛乳 300ml
生クリーム 100ml
グラニュー糖 50g
桃(中~大) 1コ
B ミネラルウォーター 大さじ2
レモン汁 大さじ1/2
グラニュー糖 大さじ1
ミント 5枝

作り方

  1. ゼラチンは分量の水でふやかします。
  2. 鍋に(A)を入れ、中火で煮立てます。
  3. 2.に1.を入れ、ゼラチンが溶けてから火を止めます。
  4. 桃の2/3量は皮をむいて5mm角の粗切りにし、その半量を3.に加えて鍋の粗熱を取ります。
  5. 氷水の上に4.を浮かべ、とろみがついてから器に入れ、冷やし固めます。
  6. 残り半量の粗切りにした桃を、(B)と混ぜ合わせて冷やし、ピーチソースを作ります。
  7. 5.が固まったら6.をかけ、飾り用の1/3量の桃を皮ごとくし切りにして添え、ミントを飾ります。

神聖なパワーを持つ桃

原産地は中国黄河上流域とされています。日本では縄文時代の遺跡から桃の種が出土していることから、この時代にはすでに食べられていたと考えられます。古事記にも桃に関する記述があり、魔除け・厄除けの神聖な力を持つ果物とされています。桃の節句(ひな祭り)の由来も、桃には邪気を払う力があるとされることから、女の子の無病息災を願って桃の花が飾られるようになったとか。こんな話を聞くと、いつもの桃がとてもありがたく思えますね。

桃の栄養素・もっと美しくなりたい

  • 水溶性と不溶性の両方の食物繊維を豊富に含むので、腸内環境が良好に保たれます
  • 食物繊維には、美肌効果や免疫力アップ、便秘解消の効果があります
  • 白肉種はフラボノイド、黄肉種はβカロテンを豊富に含み、どちらも抗酸化作用があることから、ビタミンEと協力しあって活性酸素を除去し細胞を若々しく保ちます
  • カリウムが多く利尿作用があることから、高血圧予防やむくみ予防にも有効です
  • 皮膚の健康を保つナイアシンも含まれているため、紫外線の強い季節にうってつけの果物といえます
  • 酸味は控えめでもクエン酸・リンゴ酸を含み、疲労回復効果もあります
  • 甘い香りにはリラックス効果も期待できます

桃のおもしろ話

  • 中国では昔、桃を食べた仙人が不老不死になったことから、仙人が食べる「仙果」とも呼ばれています。中国では、とても縁起の良い食べ物です
  • 変色を防ぐためには、レモン汁に浸ける・砂糖水に浸ける・塩水に浸ける・ラップでしっかりと巻きつけるなどの方法があります
  • 桃はフランス語ではpêche(ペッシュ)と言います。かつてパリのホテルで甘いデザート作りを学びましたが、桃を意味するpêche(ペッシュ)は「釣り」や「罪」ともスペルが非常によく似ていて間違えそうになりました。これは苦い思い出です

桃の花言葉

桃の花言葉は、「チャーミング」「気立ての良さ」「私はあなたのとりこ」「天下無敵」です。「チャーミング」「気立ての良さ」の由来は、桃が女性への敬いの象徴のためとされていたからです

次号は、「キノコ」を予定しております

料理研究歴50年・「伊藤華づ枝の しみじみ おいしいレシピ集」
このページの一番上へ